フォーム改造(ヒスイ)

翡翠『・・・あれ?』

目が覚めた。

翡翠『ハァ・・・』

移動中のバスの中らしい。
状況を把握し終えると同時に、溜め息が出てしまった。

??『おお・・・凄い・・・』
翡翠『・・・』

・・・まさか、あんな夢を見るなんて。
これではただの欲求不満だ。

翡翠『・・・って、さっきから何やってるんですか?』
??『いや~、羨ましいなって』

隣に座っている女の人が、私の胸を指でツンツンしていた。

翡翠『・・・差し上げましょうか?彼氏さん喜びますよ』
??『う・・・バレてた?』
翡翠『あれだけ二人だけの世界に浸っていれば』
??『ヤバッ・・・気を付けなきゃ』

彼女は森川瞳(もしかわひとみ)さん。
細身の体からは想像できない程の力強いバッティングで《青》のクリンナップを担う、女子野球界きってのスラッガーだ。

??『着いたわよ。二人とも、早く降りないと』
翡翠『あ、すみません・・・』
森川『そういえば、出水の彼氏も今日来てたよね』
都城『ま、まあね・・・』

都城出水(みやこのじょういずみ)さん。
瞳さんと同い年の、走攻守三拍子揃った外野手だ。
得点圏打率はリーグトップで、彼女の前にランナーを貯められるかで勝負が決まると言っても過言ではない。

森川『この後会うの?』
都城『戻ったら全体練習でしょ?』
森川『残念ながらねー』
翡翠『・・・だからって、抱き付くのはどうかと思いますけど?』

相手の方が明らかに戸惑っていた。
あと、周りのスタッフも。

森川『だってぇ・・・久しぶりだったから~』
都城『気持ちは分かるけど、ファンの前では自重するべきね』
翡翠『そうですよ。・・・出水さんみたく、握手の時に手の絡ませ方を変える位にしておいた方が』
都城『!』

出水さんの身体がビクッと跳ねる。
まさか見られているとは思っていなかったらしい。

森川『え、嘘!・・・どんな?』
翡翠『ええと・・・ちょっと良いですか?』
森川『うん』
都城『・・・』
翡翠『と、こんな感じで』
森川『うっわ、いやらしー・・・今度試してみよ』
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