フォーム改造(ヒスイ)

リナ『ごめんなさいね。困らせるつもりはなかったんだけど・・・』
翡翠『い、いえ・・・』

観念した私は、神代さんに(例によってマズい部分は省いて)打ち明けた。
リーグについて二人から一通りの事は聞いているが、今後さらに情報収集しておくと同時に万一の時の言い訳も考えておいたほうが良いだろう。

リナ『でも山科さんって、何か特殊な訓練とか受けてない?』

相変わらず穏やかな表情のまま、今度はそう聞いてきた。
洗ったばかりの手に汗が滲んでくる。

翡翠『・・・どうしてそんな事を聞くんですか?』
リナ『何となく、普通の人とは違う気がして。・・・あ、気に障ったらゴメンね』
翡翠『いえ、構わないです。前にちょっとだけ、警備会社で働いていて・・・』

咄嗟に思い付いた嘘を言った。

リナ『あ、それで何かやってるんだ』
翡翠『は、はい・・・』

目を合わせる事ができない。
後でもう一度、手を洗おうと思った。

リナ『実は私もね、色々やってて・・・』
翡翠『はぁ・・・』
リナ『まあ、役に立つのは夫婦喧嘩の時くらいだけど』
翡翠『夫婦喧嘩、ですか?』

どんな専門知識を聞かれるのかと身構えていると、急に所帯じみた話になった。
おかげで、さっきまでの異質なオーラが柔らいでいくように感じる。

リナ『うん。逆らったりしたら腕とか首をギューっと。あと投げ飛ばしたり』
翡翠『うわぁ・・・』

寮での会話を思い出す。
イルと結婚する人も、将来こんな目に遭うのだろうか。
あまり危険な技は教えないようにしようと思った。

リナ『でも、投げるのって相手が受け身取れないと危険だからね』
翡翠『あ・・・』

覚えがある。
それも、つい数時間前に。

リナ『まさか相手も女に投げられるなんて思ってないからね』
翡翠『そ、そうですよね・・・』
リナ『あの時はホント焦ったなー・・・』

慈しむような表情を浮かべている。
もう、さっきまでの異質な雰囲気は感じられない。

翡翠『あの・・・お子様って、いらっしゃるんですか?』
リナ『子供?』

今度は少し困惑したような表情になった。

翡翠『はい』
リナ『あ、えっとね・・・なかなか恵まれないっていうか・・・』
翡翠『あ、あの・・・』
リナ『決して、仲が悪い訳じゃないんだけど・・・あ、遥には内緒ね』
8 / 11
26/58ページ