フォーム改造(ヒスイ)

翡翠『・・・』

トイレの個室を出る。
こんな所まで、別世界のような豪華さだった。
球場(特に遠征先)とは、えらい違いだ。

翡翠『・・・!』

高級そうな洗面台で手を洗い終わったと同時に、誰かがドアを開けて入ってきた。
ただならぬ雰囲気を感じ、思わず振り向いた。

翡翠『あ・・・』
リナ『山科さん・・・だったかしら』

遥さんの友人、神代莉奈さんだった。
前に、初の女子プロ野球選手の早川あおいさんがリーグの試合の始球式に来た事がある。
私も少しだけ話したのだが、有名人特有のオーラが漂っていた。
先程までの彼女にはその時のあおいさんと似たようなオーラがあったが、今の神代さんにはもっと別の・・・何か異質な雰囲気が漂っていた。

翡翠『は、はい・・・』
リナ『ねえ、ジゴロってまだリーグにいるの?』

神代さんは穏やかな表情のまま、私に聞いてきた。
・・・ジゴロ?
いきなり何を言いだすのだろうか。

翡翠『ジゴロって確か、女の人に養ってもらう・・・』
リナ『・・・それはヒモ。じゃなくて、パラダイスリーグのジゴロ何とかって選手。確か、西条さんと同じチームだったと思うけど』
翡翠『・・・!』

思わずハッとした。

リナ『前に観に行った事あるんだけど、試合が終わってホテルに戻ろうとしたらいきなり話しかけてきて・・・』
翡翠『・・・その後はどうなったんですか?』
リナ『その後?今度は女の人がいきなり何人か現れたと思ったら、次々とビンタしたり引っ掻いたり・・・』
翡翠『・・・』

察するに、そのジゴロという選手は名前に違わぬ毎日を過ごしているらしい。
今度、美月さんか円さんに聞いてみよう。

リナ『で、どうなの?そろそろ刺されてもおかしくない頃だと思うんだけど・・・』
翡翠『・・・』

確かに私もそう思う。
というより、問題はそこでは無い。
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