フォーム改造(ヒスイ)

阿畑『で、どうするんや?一通り例を挙げてみたさかい、何か変えてみるか?』
翡翠『・・・じゃあ、全部で』
阿畑『全部っちゅーと、その性格もか?ワハハ』

頭をポンポンと叩いてくる。
口よりも先に、手が動いてしまった。

翡翠『・・・ハァッ!』
阿畑『な・・・?・・・ホゲッ!』
翡翠『あ・・・』
阿畑『アイタタタ・・・冗談やのに・・・』

気が付いた時には、阿畑さんを地面に投げ倒してしまっていた。
固い地面でなくて良かった。

翡翠『・・・すみません』
阿畑『・・・やっぱりお嬢ちゃん、そっちの道の方がエエんちゃう?』
翡翠『・・・ダメだったら、考えます』

阿畑さんに手を貸し、立ち上がらせながら軽く自己嫌悪に陥る。
身体に身に付いた習慣は取れそうにない。
あの娘は今、どうしているのだろうか。

阿畑『で、お嬢ちゃん』
翡翠『・・・翡翠でいいです』
阿畑『お、呼び捨てでエエんかい。ワイも罪作りやなぁ・・・茜がおるのに、こんな若い娘と』
翡翠『・・・もう一度、空を眺めたいですか?』

私の脅しに、阿畑さんは数歩下がる。
この人相手なら、別に構わないだろう。

阿畑『じょ、冗談や・・・で、翡翠』
翡翠『・・・はい』
阿畑『全部っちゅーけど、さすがにポジションまでは変える気無いやろ?』
翡翠『そうですね。野手で出る事もありますが、基本的にはピッチャーでやっていきたいです』

私や美月さん、本西遥(もとにしはるか)さんといった主に先発で投げるピッチャーは登板しない日でも野手として出場する場合が多い。
一時は、肩と足を生かして本格的に野手転向を考えたりもした。
ただ、リーグでの打率がそこそことはいえNPBのピッチャー相手に私のバッティングが通用するか疑問だ。

阿畑『まあ、それが一番やな』
翡翠『はい』

守備に関しても、そこまで自信がある訳ではない。
やはり、プロ(NPB)にはピッチャーでチャレンジしよう。
そう決意した、その時だった。

??『アンタ!こんな所で一体何しとるん!!』
阿畑『あ・・・』

女の人の声がした。
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