フォーム改造(ヒスイ)

阿畑『確かにエエ球やけど、仮にリスト入っとるとしても・・・おそらく下の方やな』

NPBの各球団は、毎年50人以上の指名リストを作製すると聞いた事がある。
だが、その中で指名されるのは育成ドラフトを含めても毎年10人いくかどうかだろう。
そして私は、そのリストに入っているかも微妙だ。

翡翠『ンッ・・・!』
阿畑『・・・おし!うーん、左でそこそこ出るのはプラスなんやけどなぁ・・・』

今年、間違いなくリストに入っていただろう2人の事を考えてみる。
どちらも、ピッチャーだ。

阿畑『おし、次は・・・』
翡翠『・・・』

一人目は、萱島樟葉(かやしまくすは)さん。
私や円さん達とは違う(といっても二つしか無いが)チームだ。
これといった決め球こそ無いものの、多彩な変化球を操り的を絞らせない。
球速も、私と同じ程は出ていたと思う。
彼女は今年、キャットハンズに指名された。

阿畑『変化球は・・・まあ、こんなモンか』
翡翠『・・・』

もう一人は、私が普段お世話になっている西条美月(さいじょうみつき)さん。
140kmを記録した事もある速球と、落差のあるフォークで三振を取れるピッチャーだ。
残念ながら、美月さんは指名されなかった。

翡翠『・・・ンッ!』
阿畑『おっと』

確かに彼女達の実力は抜きん出ている。
しかし逆に言えば、その位のレベルでないと候補に入るのも難しいという事だ。

阿畑『おし、ラスト一球や』
翡翠『はい』

阿畑さんのミットに向かって投球する。
この2人に比べ、私が優位なのは『左』という一点だけだろう。
コントロールもそうだが、変化球はとても敵わない。
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