フォーム改造(ヒスイ)

それから数日後。
私は、グラウンドにいた。
ただし、女子リーグの練習場ではなく何処かの高校のグラウンド。

??『よっしゃ、肩慣らしはこれくらいでエエやろ』

私とキャッチボールをしているのは、先日タコ焼きを持ってきた(ただし、全部自分で食べた)男の人。

翡翠『・・・でも、本当に大丈夫なんですか?』
??『何が?』
翡翠『勝手に練習器具とか出して・・・』
??『大丈夫やって。毎年寄付してるねんから』

考えてみればそうか。
それに、今日は学校の部活は休みの様だ。

??『お嬢ちゃん。ワシはな・・・』
翡翠『元、やんきーずの阿畑やすしさんですよね?』

阿畑やすし。
引退した元プロ野球選手で、現役時代は中継ぎ投手として(それなりに)活躍した。

阿畑『知っとったんかい!』
翡翠『チームの人に聞きました』

最終所属球団は極亜久やんきーず、その前は・・・ちょっと思い出せない。
関西の球団だったような気がするし、名古屋の球団だったような気もする。
・・・まあ、いいか。
別に大した事じゃないし。

阿畑『まあエエわ。ここはな、ワイの通ってた高校なんや』
翡翠『変な練習で、年老いた監督を困らせていたらしいですね』
阿畑『何でそんな事知ってんねん!つーか、変な練習ちゃうわ!!』

元プロという事もあり、なまじ影響力だけはあるからタチが悪い。
練習そっちのけでテレビゲームに没頭したり、茶道を始めたりするのはまだ良い方。
練習場でサッカーやエアロビ等を始めると、周りの娘達も真似をする。

翡翠『円さん怒ってましたよ?リーグの娘達に変な事教えないで下さいって』
阿畑『あのキッツイ娘か~。ワイ、苦手やわ・・・そや!良い事思い付いたで』

以前、模造刀とはいえ日本刀が出てきた時には練習場が静まり返った。
もちろん、後でこっぴどく叱られていたのは言うまでもない。

翡翠『・・・私も良い事思い付きました』
阿畑『ほう、どんな?』
翡翠『新しい技です。いかに人体の急所を・・・』
阿畑『・・・』

阿畑さんが一歩下がる。
私は一歩、距離を詰める。

翡翠『阿畑さんで試してみたいなぁ・・・』
阿畑『・・・お嬢ちゃん、目がマジやで』
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