フォーム改造(ヒスイ)

練習グラウンドから寮までの道(と言ってもすぐ近くだが)を歩いていた、その時だった。

??『ま~どかっ★』
城咲『・・・はわっ!?』

青い髪の女の人が、円さんに抱き付く。
そのまま頬擦りを始めた。

??『久しぶりだね~。会いたかったよ~、円~』
城咲『わ、分かったから離れて!』
翡翠『・・・お疲れ様です』
??『お疲れ~。翡翠は練習?』

抱き付いたまま聞いてきた。
円さんも、助けを求めるような表情でこちらを見ている。

翡翠『丁度上がる所です・・・よいしょっ』
??『そうなんだ?じゃあ、今日は止めとこ・・・って、ちょっと~!』

片付けを手伝ってくれた恩もあるので、円さんを救出する。
そのまま少し持ち上げた。

城咲『ふぅ・・・。悪かったわね、美月。お店、一人で行かせちゃって』
??『うん、そんなに混まなかったから大丈夫。・・・ねえ翡翠、そろそろ降ろして~』

ジタバタし始めたので、地面に降ろす。
この人は、同じチームの西条美月(さいじょうみつき)さん。
身長は175cm以上あり、私よりも高い。
彼女の右腕から放たれる速球は140kmを記録した事もあり、リーグトップの球速を誇る。

城咲『・・・よく持ち上げられるわね』
西条『うん。うらやましいな~、そのパワー。絶対、レスラー向きだよ。衣裳も似合いそうだし』
翡翠『・・・』

少し前にも、そんな事を言われたような気がする。
自分でも良く分からないが、ちょっとした力の使い方が重要らしい。

西条『タッグ組んでデビューしない?』
翡翠『プロレスですか?』
西条『うん。オフシーズンの間だけ特別参戦で。あ、円はセコンドね』

タッグ・・・。
その言葉に昔(という程に前でもないが)を思い出す。
あの娘は今、どうしているのだろうか。

城咲『・・・遠慮しとく』
西条『なんでよー。宣伝になるよー』

美月さんの趣味はプロレス観戦。
団体を問わず、色々と観に行くらしい。
もちろん、円さんも連れていかれる。
毎回文句を言いながらも付き合う所を見ると、円さん自身も意外に楽しんでいるのかもしれない。
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