フォーム改造(ヒスイ)

??『翡翠じゃない。練習?』
翡翠『はい。でも、今日はそろそろ上がろうかと・・・』
??『そうね・・・無理し過ぎは良くないわ』
翡翠『円さんは?』

二つに分かれたポニーテールの髪が風に揺れている。
この人は、同じチームの城咲円(しろさきまどか)さん。
細身の身体からは想像できないような力強いバッティングが魅力で、チームでは中軸を打っている。
私が女子リーグに入団してから、公私共にお世話になっている先輩だ。

城咲『高校の時の同期で集まりがあってね』
翡翠『同窓会ですか?』
城咲『まあ、そんなとこ。・・・来れなかった仲間もいたけど』

何となく、円さんの表情が暗い。
あまり聞かないでほしい、そう訴えてるように見えた。

城咲『ところで翡翠。さっき、何かあったの?』
翡翠『え・・・?』
城咲『・・・そこにタコ焼きの箱があるわよ』
翡翠『あ・・・!』

あのタコ焼きオヤジ、ゴミだけ残していくなんて。
円さんは僅かに表情を和らげ、続けた。

城咲『美味しいのよね、あれ』
翡翠『・・・そうですね』
城咲『でも、あまり食べ過ぎないようにしないとね』

その心配は無い。
なぜなら、一つも食べてないから。

城咲『何か言ってたの、あの人?』
翡翠『えっと・・・』

言っていいものか、迷う。

城咲『アドバイスみたいな事、言われたんじゃない?それも、わりと的確に』
翡翠『・・・そんな所です。よくいらっしゃる方なんですか?』
城咲『たまにだけどね。大体、あの人・・・』
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