フォーム改造(ヒスイ)

??『そや。ちょっとグランドに邪魔してもエエか?』
翡翠『えっと・・・』

返答に詰まる。
自分以外誰もいないとはいえ、部外者を入れるのは好ましくないだろう。

??『変な事はせえへんよ。もう一度、お嬢ちゃんのフォームを見たいだけや』
翡翠『・・・一応言っておきますけど私、柔道空手剣道合気道それから・・・段、幾つも持ってますから』

段を持っているというのはウソだが、体術には自信がある。
一対一なら、まず負けないだろう。

??『・・・お嬢ちゃん、格闘家とか女子レスラーの方が向いてるんとちゃう?』

・・・確かにそうかもしれない。
でも、野球は手掛かりのような物。
仲間・・・特に、あの娘を探す為の。

??『知り合いにレスラーおるねん。紹介しよか?』
翡翠『結構です』
??『ソイツ覆面なんやけど、お嬢ちゃんは覆面せん方が人気出そうやな。あ、もちろん衣裳は際どいので頼むわ。ワハハ』
翡翠『・・・覆面が手放せないような顔にしてあげましょうか?』
??『じょ、冗談や。おお、怖い怖い・・・せっかく乾いてきたのに、またチビってもうた』
翡翠『・・・』

どうもさっきから、このタコ焼きオヤジのペースに乗せられてる気がする。
ここらで、一度ビシッと言っておいた方が良いだろう。

翡翠『あの・・・申し訳ありませんが』
??『おっと・・・用事を思い出したさかい、今日は帰るわ』
翡翠『あ・・・ちょっと・・・』
??『サインおおきに。ほな、さいならー』

タコ焼きオヤジはそそくさと退散してしまった。
私は、完全に気勢を削がれてしまった。
日も傾きかけている。

翡翠『ハァ・・・』

その時、女の人が寮に向かって歩いていくのが見えた。
こちらに気付いたらしく、近くに来る。
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