フォーム改造(ヒスイ)

精神を集中し、静かに振りかぶる。

??『ンッ・・・!』

気合いと共に左腕から放たれたボールは、18メートル先のネットに突き刺さりポトンと落ちた。
球威はともかく、コントロールがまだ甘い。
同じ女子相手ならともかく、男子選手には痛打されてしまうだろう。

??『・・・』

籠に入ったボールを一つ取る。
次は何を投げようか。
キャッチャーからのサインを想像しようとした、その時だった。

??『おぅ、ネエちゃん!ええタマ投げるやないか~』

関西弁訛りの素っ頓狂な声がした。
集中を乱され、少しムッとしてしまう。

??『ええと・・・山科翡翠(やましなひすい)ちゃんやな・・・』

頭にタオルを巻いた男性がいた。
年は30前半位だろうか。
女子リーグのオフィシャルイヤーブックを手に持っている。

翡翠『あ・・・サインですか?今、行きます』

自分の鞄からマジックを一本取り出し、インクが切れてないことを確認する。
1 / 10
1/58ページ