5人目の女子選手(なつき)

ページを冒頭に戻してみる。
今年、女子リーグからキャットハンズに入団した選手のインタビューが載っていた。

ずいぶん気合の入ったインタビュー記事だった。
ユニフォームではなく、おそらくこの日の為に用意したであろう衣装。
球場ではなく、オシャレな店を貸し切ってインタビューをしていた。

顔を上げ、店内を見回す。
いかがわしい絵画と、お見せできないような品々が視界に入る。
絶対にこの店ではできないと、心の底から思った。

なつき『・・・』

気を取り直し、記事を見る。
去年のドラフトでは女子リーグから1人、私の古巣でもあるキャットハンズに指名された。
NPBの女子選手としては5人目となる。
3人目が私で、4人目は数年前にバルカンズに入団した、六道聖(ろくどうひじり)という捕手だ。
着物姿で入団会見をしていたのが記憶に新しい。

みわ『お待たせー』
ユリ『はーい』

当初、あまり評価は高くなかったが今では正捕手として一軍に定着している。
みずきさんの高校時代の後輩でもあるらしい。

ユリ『お待たせしました、焼きうどんとシーザーサラダです。他にご注文はよろしかったでしょうか?』

インタビューに答えている彼女の名前は、萱島樟葉(かやしまくすは)。
多彩な変化球で打たせて取るピッチングを得意とする、技巧派のピッチャーだ。
去年、女子リーグで最多勝と最優秀防御率を獲得し、最優秀選手にも選ばれた。

ユリ『それでは、ごゆっくりどうぞ』

希望に満ちた表情でインタビューに答えており、それが数ページに渡って続いている。
女子リーグとしては初の快挙であり、関係者の期待の大きさが垣間見えた。
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