5人目の女子選手(なつき)

ユリ『・・・以上ですね』
なつき『・・・』

手元の資料を見ながら聞いていたが、完璧だった。
おそらく、自分から一人一人にコミュニケーションを取っていたのだろう。
そして私はというと、今日も二日酔いで熱さ●シートを貼って寝ていた。

ユリ『女子の部員、やっぱり来ませんでしたね・・・』
なつき『まあ、そう簡単にはな・・・』

ユリは心底残念そうにしている。
高校野球に女子選手の出場が可能になったとはいえ、全国から部員が集まるような強豪校の場合は女子選手の入部自体を受け付けてない事が多い。

ユリ『こうなったら、適当に・・・』
なつき『よしなさい』

私のように女子野球の名門校に進学するか、野球自体を諦めてしまう人も少なくないと聞く。
実は私も少しだけ期待していた。
もちろん、ユリとは違う意味で。

みわ『ねえ、ユリちゃん。アタシ好みのコとかいる?』
ユリ『店長好みですか?そうですねぇ、今年入った一年だと・・・』

・・・オイコラ。

ユリ『そういえば、今日は良い物持ってきたんですよ。ちょっと待ってて下さいね』

一旦、奥に下がってしまう。
戻ってきたユリは、一冊の本を持ってきた。

なつき『女子リーグ、オフィシャルイヤーブック?』
ユリ『今年のですよ~』

一瞬、忘れていた思い出が蘇ったが直ぐに振り払う。
ユリから本を受け取る。
表紙には何人かの選手が載っており、遥の姿もあった。

ユリ『春休みに妹と開幕戦観に行って、会場で買ったんです』
なつき『妹?・・・ああ』

相変わらず、ユリは実家を離れて暮らしている。
実家が女子リーグの本拠地の方なので、帰省ついでに観に行ったのだろう。

ユリ『妹から、先生によろしく伝えて下さいと言われました』
なつき『うん』

ユリには、3歳年の離れた妹がいる。
少し前に、学校を見学しに来ていた時に紹介された。

・・・一目見て、とても中学生とは思えなかった。
背もユリより高く、何よりも雰囲気が違う。
仮に大学生と言われても信じるだろう。

ユリ『とっても喜んでましたよ~』
なつき『そ、そうか・・・』

ユリと二人並んでいると、どっちが姉か分からない位だった。
ユリも決してスタイルが悪い方では無いが、あの妹と比べるのはちょっと可哀相だろう。
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