監督初日(なつき)

なつき『うーん・・・』
リナ『な、何?』

リナを観察してみる。
代表チームで初めて会った時はショートカットだったが、今は少し伸ばしている。
試合での野太い歓声に、苦笑いを浮かべながら応えていた頃が懐かしい。
やっぱりユリに紹介するのは止めておこう。

なつき『いや、今何やっているのかなって』
リナ『色々よ、色々』
なつき『何かのインストラクター、だっけ?』
リナ『そう、それ』

私や遥も、リナが何をやっているのかあまり知らない。
少なくとも、専業主婦では無いような気がする。
直接会った事はないが、あの人なら知っているだろう。

なつき『生2つと卵焼き、後は・・・』
リナ『軟骨とバターコーン』

女子リーグにも誘われたが、断ったらしい。
何処かのクラブチームに所属しているという話も聞かない。

リナ『今年入った女の子のピッチャーいるでしょ?』
なつき『ああ、女子リーグの』
リナ『開幕一軍だって』
なつき『ふーん・・・』

生ビールが来た。
空いた皿とジョッキを店員に渡す。

なつき『見に行くならチケットあげようか?』
リナ『え・・・ああ、大丈夫』

退団してからも毎年チケットが送られてくるが、全て部員や教職員達にあげている。
プロ野球の試合は、あれから一度も生で観ていない。

なつき『観に行ってあげないの?彼の試合』
リナ『いや・・・出るか分かんないし』

考えてみると、リナもチケットは貰っているはずだ。
チームは違うが。
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