監督初日(なつき)

ユリ『今日は本当にありがとうございました』
なつき『ああ、いいって。無事で何よりだ』
ユリ『明日からよろしくお願いします、藤乃監督』

しばらくは交代で送り迎えをする事になった。
PTAでもパトロールをする事にしたらしい。
・・・それにしても。

なつき『その・・・監督っていうの、やめないか?』
ユリ『ええっ・・・どうしてですか?』
なつき『いや、何つーか・・・自分が年取った気がして』
ユリ『そうですか?まだ若くて綺麗じゃないですか』

お世辞だとは思うが悪い気はしない。

ユリ『でも・・・仕方ありませんね。何か新しい呼び方を考えましょう』

しばらく考え込む。

ユリ『うーん、とりあえず《先生》でいきましょうか』
なつき『そうだな』

無難な所だろう。
藤乃先生・・・か。

ユリ『マネージャーの雨宮さんにも伝えておきますね。あ、でも・・・』
なつき『?』

こっちを見る。
何か嫌な予感がする。

ユリ『二人だけの時は《ダーリン》って呼んでも良いですか?』
なつき『よ、良くないっ。・・・つーか、どうして?』

思わず後ずさる。
嫌な予感は的中した。

ユリ『だってぇ、先生じゃなくてダーリン、私を助けてくれたじゃないですか』
なつき『ひいぃぃ・・・』

今度は私が助けてもらいたい。
だが、部室には私とコイツしかいない。

ユリ『ね?ダーリン』
なつき『ダ、ダメだ!却下却下!!』
ユリ『どうしてですか、ダーリン?』
なつき『どうしてもだ・・・っていうか、少しずつ近付くな』

距離を開けては詰めての繰り返し。
そして、壁際に追い込まれてしまった。

ユリ『捕まえましたよ、ダーリン』
なつき『い、嫌だぁ・・・!』

肩に手が置かれる。
さあどうする、藤乃なつき。

ユリ『さあ、ダーリン・・・』
なつき『ほ、ほら、ウチのマネージャー。あれなんか良いんじゃないか?』

教師としてあるまじきセリフだが、そんな事を気にしている余裕も無かった。
しかし、ユリは笑みを浮かべ

ユリ『雨宮さんですか?あの人はダメですよ』
なつき『ど、どうして?』
ユリ『だってあの人・・・』
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