監督初日(なつき)

澄み渡った青空とは反対に、私の心は薄暗く曇っていた。

『会えば分かる』
これは言葉通りに受け取って問題無いだろう。
『家庭の事』
こちらも言葉通りに、家庭環境に何らかの問題があるという事だろう。
デリケートな事なので気を付けらければいけない。

なつき『三つの国・・・三国・・・』

校長に聞いたその名を呟く。
まずは、その三国という生徒と接触しなくてはならない。
一通り自己紹介をしてもらい、いなければ部員の誰かに聞けば良いだろう。

なつき『・・・』

上手くいくだろうか。不安が募る。
その時だった。

??『や、やめて下さいっ!』

少し離れた所から、女の子の助けを求める声が聞こえた。
数人の男が無理矢理、恋恋高校のセーラー服を着た女の子を車の中に連れ込もうとしている。
早い時間という事もあり、辺りに人影は無い。

車に近付きながら、鞄に手を入れ携帯電話を探す。
しばらく探していると、固い物に手が触れた。
取り出してみると、それは野球のボールだった。
こんな物がいつ紛れ込んだのか、分からない。

私は女の子にだけは当てないようにそのボールを投げた。
ボールを握れば、後は肩や肘、かつてケガをした足までもが勝手に動いてくれた。

そうして放たれたボールは、車のガラスを直撃した。
割れはしないものの、ひびが入り、男達が驚く。

その間に女の子が逃げ出す。
私の姿を見つけると走り寄ってきた。

なつき『走れる?』
??『は、はい・・・』

彼女の手を引き、走り出す。
走り始めてしばらくすると、後ろの方から何かがぶつかったような凄まじい音が響いた。
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