監督初日(なつき)

・・・と、ここまでは一昨日までの話。
就任前日の昨日、私は改めて一人で挨拶に向かった。
学校に着いてすぐ、校長に呼び出された。何でも、話しておかなくてはいけない事があったらしい。

校長『悪いね、藤乃君。何回も来てもらって』
なつき『いえ、明日からは毎日来ますので』
校長『そうだったね。よろしく頼むよ』
なつき『はぁ・・・。それで話とは?』
校長『とある生徒の事なんだがね・・・』

その一言でピンときた。
校長がわざわざ私を呼び出してまで伝えなければいけない事。
考えられる事は一つしかない。

校長『ミクニ君という生徒の事なんだ。三つの国と書いて三国』
なつき『・・・どういった生徒なんですか?』

考えてみれば当たり前の話だった。
10人高校生がいれば、10通りの個性がある。

校長『会えば分かる』
なつき『・・・』

ここでやっていくと決めた以上、覚悟をしよう。
そう思いたいのだが、どうしても怖じけづいてしまう。
現実はドラマの様にはいかない。
問題が必ず解決するのは、それがドラマの中だからだ。

校長『家庭の事・・・それだけは絶対に聞かないようにしてくれ。そうすれば大丈夫だ』
なつき『・・・』
校長『お茶のお代わりがいるかね?』
なつき『い、いえ大丈夫です。ご馳走様でした』

頭を下げ、校長室を後にした。
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