雪が積もった日(なつき)

ユリが戻ってきた。やはり表情が硬い。

『キャプテンどうしたの?ウ●コ?』
ユリ『・・・宿題、今度からは自分の力でやる?』
『すみませんでした・・・』
なつき『・・・』

この場にふさわしくないやりとりに呆れていると、ユリが話しかけてきた。

部員と話していた時とは違い、少し不安そうな顔をしている。

ユリ『あの、先生・・・』
なつき『どうした?』

ユリに付いていく。
店の奥へ向かっていった。

なつき『変な事するんじゃないだろうな?』
ユリ『今日はしませんよ』
なつき『・・・これからもしないでくれ』
ユリ『・・・』

一旦、沈黙してしまう。
洗面所の前で、ようやく口を開いた。

ユリ『先生・・・明日、学校休みます』
なつき『理由は?』
ユリ『その・・・えっと・・・』

言いよどむ。こうなると理由は一つしか無い。

なつき『・・・分かった。何とか上手く言っておくから』
ユリ『すみません・・・』

家庭の事だ。
詳しく聞いた事は無いが、複雑な事情があるらしい。
少なくとも、経済的に困窮してる事は無いだろう。

いかがわしい店でバイトをしているが、それほど頻繁に入っている訳ではない。
いかがわしいと言っても、問題があるのは店の内外装と店長だけで、ユリは注文を聞いたりオカマ店長の料理を運んだりするだけである。

何回か連絡せずに店を訪れてみたが、いずれの日もセーラー服にエプロン、もしくは私服にエプロンといった服装だった。

それとなく時給も聞いてみたが、特段驚くような額ではなかった。
あくまで、社会勉強の為らしい。
・・・あの店で、まともな社会勉強ができるかどうかは別にして。
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