女教師と怪しい店(栗橋)

ユリ『本当にどうもありがとうございました。失礼します』
なつき『くー・・・』

藤乃さんが住んでるマンションの前に到着した。
預かった鞄を三国さんの肩に掛ける。
一礼して、エレベーターに乗っていった。
このまま泊まっていくらしい。

矢部『やんすぅ・・・』
栗橋『大丈夫なのかな?』
萱島『時間を気にしてる様子は見られませんでしたけど・・・代わりますよ』

フラフラ状態になっている矢部君の肩を担ぎ、自分の鞄を渡してくる。

矢部『やん・・・す・・・』
萱島『うーん、ちょっと歩きにくいなー・・・せーの、よっと』

矢部君の両手を自分の肩に乗せ、そのまま背中に乗せた。

栗橋『大丈夫?』
萱島『こっちの方が歩き易いですし、むしろ楽ですね・・・ところで先輩』
栗橋『何?』
萱島『ユリちゃんでしたっけ、あの女の子の店員』
栗橋『うん。野球部なんだよね?』

矢部君によれば、去年の夏に1試合3ホーマーを放ち話題になったらしい。
できれば卒業してからも、野球を続けてほしいと思う。

萱島『はい。何となくなんですけど、ずっと栗橋先輩の事ばかり見ていたような気がするんです』
栗橋『そう?』
萱島『最初に私達が来た時も、先輩の顔を見て驚いてましたよ?・・・まあ、気のせいかもしれませんけど』
矢部『や・・・ん・・・』

後輩の背中で気持ち良さそうに寝息を立ていてる矢部君。
驚いたような表情になったのは、プロ野球選手が3人も来店したからではないだろうか?

栗橋『もしかして・・・オレに野球を教えて欲しかったとか?』
萱島『えー・・・先輩にですかぁ?』
栗橋『言ったなー・・・この!』
萱島『いったぁ・・・今、両手使えないのに!後で覚えておいて下さいよ?』

軽くデコピンをしてやる。
反撃の蹴りをかわした、その時だった。

栗橋『ハハ・・・ん?』
萱島『え・・・何、今の?』

叫び声のような音が聞こえた。
そして再び静寂が訪れる。

栗橋『・・・犬とか猫じゃない?』
萱島『かもしれませんね・・・帰りましょう』
栗橋『うん』
矢部『・・・ん・・・す』
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