女教師と怪しい店(栗橋)

栗橋『・・・』
萱島『先輩・・・ハンカチ』

いつの間にか涙を流していたらしい。
萱島さんのハンカチで涙を拭く。

栗橋『・・・で、萱島さん』
萱島『はい』

あれからどうやって帰ってきたか覚えていない。
気が付いたら、キャットハンズのクラブハウスだった。
前に一週間ほど景西コーチが塞ぎ込んでいて皆不思議がっていたが、理由がはっきりした。

栗橋『その時にも・・・いたの?』
萱島『いえ、あの人達(オカマ)はいませんでした』
栗橋『じゃあ、店長?』
萱島『というより・・・この前とは、別の《知り合い》の方達がいて・・・』
栗橋『・・・どんなの?』
萱島『一見普通の男の人達なんですけど・・・』
栗橋『・・・』

一回廊下ですれ違ったのだが、別人のようにやつれていて言葉もかけられなかった。
オレ以上のトラウマを残した事は、想像に難くない。
逆に考えれば、よく一週間で復帰できたものだ。

萱島『でも、景西コーチってビックリする位軽いですね』
栗橋『軽いって?』
萱島『大通りまで担いでいったんです。その後タクシーで・・・』
栗橋『まさかオレの時も?』
萱島『はい』
栗橋『・・・大丈夫だった?』

オレは大丈夫じゃなかったが。

萱島『まあ、鍛えてますので。・・・さすがに少し堪えましたけど』
栗橋『・・・』
萱島『だから先輩、また一緒に行きましょうよ』
栗橋『《だから》って・・・』

一連の話の何処に、オレが再び行きたくなる要素があるのだろうか。

萱島『大丈夫ですよ。万一の時は、また私が助けてあげます』
栗橋『万一どころか、今の所百発百中じゃん・・・』
萱島『前回行った時は何も無かったですよ?』

それでも確率的には3打数2安打(?)だ。
危険である事には変わりない。

栗橋『一人で行けば良いじゃん』
萱島『あー!何て事言うんですか!?私が危険な目にあったら、どう責任取ってくれるんですか?』
栗橋『いや・・・萱島さんなら逆に撃退できそうだし』
萱島『酷いです、先輩。か弱い後輩の女の子に対して・・・』
栗橋『景西コーチを軽々と担げるのに?』

確かにオレ達選手に比べると背は低いが、それでも萱島さんよりは高かったと思う。
とてもか弱いようには見えない。

萱島『先輩でも大丈夫ですよ。試しに乗ってみます?』
栗橋『乗るって?』
萱島『少しだけでしたら、構わないですよ』

椅子から立ち上がり、腰を少し低くした状態でこっちを見てくる。
突き出されたお尻に目が行ってしまったのは内緒だ。

栗橋『・・・遠慮しておきます』

このまま誘いに乗ったら、また変な気を起こしそうだ。
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