女教師と怪しい店(栗橋)

まず、目の前に飛び込んできたのは下品な電飾看板だった。
一昔前のパチンコ屋のように、文字が順番に点滅している。

萱島『先輩・・・まさか・・・』
栗橋『その・・・まさかです』

念の為、以前マサキに貰った名刺を見てみる。
ケバケバしい色使いで『MIWA』の文字。
目の前の電飾看板の文字と見事に一致していた。

萱島『・・・』

萱島さんが、いかがわしい店に連れて来られた新人OLのような顔をしている。
よく見ると、看板だけでなく建物そのものも派手な色だ。

萱島『・・・どうするんですか?』
栗橋『えっと・・・』

《何て事をしでかしてくれたんですか》とでも言いたげな表情をした萱島さんが聞いてきた。
そんなやり取りをしている最中にも、下品な電飾はピカピカと光ったり消えたりを繰り返している。

萱島『・・・先輩のお友達オススメの店なんですよね?』
栗橋『ファンの人から名刺を貰っただけで、行った事は無いみたい・・・』

周辺を見渡してみたが、他に飲食店は見当たらない。
そもそもこの店(?)も飲食店であるかどうか、疑問だ。

萱島『どんな店かも聞かなかったんですか?』
栗橋『飲食店としか・・・』

名刺といい、そしてこの店構えといいロクな店ではないのは確かだろう。
入口に《OPEN》と出ているので、営業してはいるようだ。

萱島『・・・入りましょうか?』
栗橋『・・・うん』

あまり人通りの多くない道ではあるが、何人かの通行人がこちらを見ながら通り過ぎて行った。
これ以上ここに留まる訳にも行かなかったので、オレ達は店に入る事にした。
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