魔宮へ(なつき)

鬼や蛇が出た方が、まだマシだったかもしれない。

魔宮へと足を踏み入れた私は、そんな事を考えていた。
カウンターの中に、この店の責任者らしき人物がいた。

??『あらぁ~、いらっしゃ~い♪』

過剰なまでに濃い化粧、ご丁寧に7色に染め分けられた頭頂部のモヒカン。
顎には青々とした髭の剃り跡が広がっている。
そして何より、クネクネした動きと薄気味悪い言葉遣いが、私にとある一つの単語を連想させた。

オカマ。

目の前の人物を形容するに、これ以上の言葉は無いだろう。

ユリ『先生、遠慮しないで座って下さい』

ユリに勧められるまま、カウンターの席に着く。

??『んまぁ~、先生って事は、この方がユリちゃんの?あらあら大変大変!』

オカマが大袈裟に驚く。
大変なのは、この店の外見とアナタ自身です。

??『んも~、素敵ねぇ~。ユリちゃんが言ってた通りの方だわ~。初めまして~この店の店長してます、みわで~す♪』

オカマ店長が自己紹介してきた。ユリよ、私の事をどういう風に言ったのだ?
今度吐かせよう。

なつき『藤乃・・・なつきです』
みわ『なっちゃんね。ヨ・ロ・チ・ク・ビ★』

・・・おい。

みわ『あ、ユリちゃん。できれば、すぐ入って欲しいの。良い?』
ユリ『分かりました。あと、そろそろネオン点けた方が良いんじゃないですか?』

ユリが街の景観を悪くするような事を言う。

みわ『あらあら、もうこんな時間なのね。んもぅ~みわったら、ドジっ娘さん★』

みわと名乗ったオカマ店長は、相変わらずクネクネしながら気持ち悪い台詞を吐く。

みわ『アナタのハートも、点火★』

ウィンクしながらスイッチを入れる。街の景観がますます悪くなってしまった。

みわ『さぁ、皆さん!夜はこれからよぉ!フィーバーしてねーーー!!』
『オオォォーッ!!』

気持ち悪い掛け声に野太い歓声が応える。
店内を見渡してみると、信じられない事に数名の客がいた。
そしてユリは、いつの間にか姿を消している。
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