女教師と怪しい店(栗橋)

栗橋『次の信号を左折だね』
萱島『はい』

まだ真新しい地図帳を見ながら、月明かりに照らされた路地を歩く。
こちらに引っ越して来た時に買った物だ。
携帯電話の画面で照らしながら、地図を確認する。

萱島『あの・・・すみませんでした、ワガママ言ってしまって』
栗橋『大丈夫だって。オレも初ホームランを打った日には、先輩に奢ってもらったし』

もう四年も前の話だ。
そして今は、チームも違う。

萱島『楽しみです。先輩のお友達オススメの店』

オレの隣を歩いているのは、同じキャットハンズに所属する萱島楠葉(かやしまくすは)。
NPBでは5人目の女子選手で、去年女子リーグから指名された。
彼女は今日、記念すべきプロ初勝利を挙げた。
そのお祝いという訳だ。

栗橋『ここの通りを・・・』
萱島『そろそろじゃないですか?』

萱島さんが地図を覗き込んでくる。
蛍光ペンでマル印を付けた場所までもう少しだ。
さらに歩いた、その時だった。

栗橋『ここを真っ直ぐ・・・なっ!?』
萱島『え・・・!?何・・・これ・・・』

オレ達は言葉を失った。
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