初勝利(栗橋)

萱島『姫野さーーーん!』
姫野『おお、いらっしゃい・・・』

それからしばらく後。
私は姫野さんに、話したい事があると近くの喫茶店に呼び出していた。

萱島『受かりましたよ!』
姫野『受かったって・・・トライアウト?』
萱島『はい!』
姫野『んな・・・馬鹿な!?』

姫野さんの巨大な顔が、驚愕で歪んでいる。
てっきり一緒に喜んでくれると思ったのに、予想もしなかったリアクションだった。

萱島『ど、どうしてそんな事言うんですか?確かにまだ、未熟かもしれませんけど・・・』
姫野『大丈夫ですわ。萱島様の年齢だったらまだまだ大きくなります・・・じゃ、なくて!』
萱島『は、はい!?』

一度咳ばらいをし、改めてこちらに向き直った。

姫野『・・・萱島様、一つ教えて欲しい事があります。エントリーシートの年齢、正しく記入しましたか?』
萱島『ああ、あれですか?とりあえず20歳って書いておきましたけど・・・』
姫野『・・・』
萱島『来年高校卒業見込以上に限るって書いてありましたけど、正直一年も待てませんし』
姫野『・・・』
萱島『《ごまかしとけば良いのよ》って、私がお世話になっている人も言ってましたから』
6 / 13
22/29ページ