初勝利(栗橋)

結局、私はどこの部活にも所属しなかった。
とりあえず、高校卒業という名の実績を得る為だけに毎日を過ごしていた。

??『この方・・・おそらく来年は違うチームにいますわね』
萱島『え・・・そ、そうなんですかっ!?』
??『シッ、声が大きい!』
萱島『す、すみません・・・』

あの時、悩みを打ち明けた女の人とは時々会うようになった。
彼女は私より二回り近く年上で、姫野さんと名乗った。
姫野さんは野球についてとても詳しく、新聞にも載っていないような情報まで知っていた。

姫野『今日は萱島様に一つの情報をお持ち致しました・・・』

ある日の事だった。
姫野さんは、印刷された何枚かの資料を持ってきた。

萱島『女子・・・リーグ?』
姫野『いかにも。来年から設立されるみたいです』

資料を見てみる。
女子選手のみで構成される、野球の独立リーグが来年から始動するらしい。
親会社はテレビのCMでもたまに見る会社だった。
できて数年で消滅、というような事にはならないだろう。

姫野『今度こちらの方でもトライアウトが開催されるようですわ。よろしければ挑戦してごらんなさい』
萱島『・・・分かりました。頑張ります!』

私は貰った資料を片手に走り出した。
まずはエントリーを済ませる必要がある。

姫野『ん?そういえば確か・・・』
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