初勝利(栗橋)

自分の迂闊さを悔やむしかなかった。
あかつき大附属高校。
甲子園に何度も出場している名門校で、一時は毎年のようにプロ入りする選手を出していた。

萱島『はぁ・・・これからどうしよう・・・』

まだ真新しいあかつきの制服に身を包んだ私、萱島楠葉はひたすら途方に暮れていた。
始まったばかりの学生生活が、色を失ったかのような錯覚さえ感じる。
絶望にくれていた、その時だった。

萱島『・・・キャッ!』
??『おっと』

前方に全く注意が行っていなかった私は、何か巨大な肉の塊のような物にぶつかってしまった。
よく見ると、それは人間・・・しかも私と同じ女性だった。

萱島『す、すみません・・・』

謝りつつ、見上げてみる。
縦にも大きいが、横にも大きい。
蛍光ペンのような派手な色の服には、さらに過剰な装飾が施されていた。

??『何、気にする事ありませんわ』
萱島『は、はい・・・』
??『それにしても、貴女・・・何かお悩みをお持ちのようですね』
萱島『・・・』
??『ここでぶつかったのも何かの縁・・・話してごらんなさい』

見た目はともかく、悪い人ではなさそうだった。
私は、この大きな女性に話してみる事にした。

萱島『えっと・・・実は・・・』

レベルの高い所で野球をしてみたい。
それで思い浮かんだのが、この学校だった。
入部する為の試験があるとは聞いていたが、受かるだけの実力は身に付けてきたつもりだった。

??『なるほど・・・』

結果、試験を受ける事もできなかった。
女子はマネージャーのみ・・・あらかじめ告知もしており、全ては私の調査不足がもたらした結果だった。
ソフトボール部への入団を勧められたが、どうしても野球を諦めきれなかった。
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