初勝利(栗橋)

萱島『・・・あいつらのせいで正直者がバカを見る世の中になったんです・・・間違ってます、こんな世界』
栗橋『・・・萱島さん?』

目付きまで何となくおかしい。
単に悪口を言っているのではなく、心の底から憎んでいるような感じだった。
普段の萱島さんからは想像もつかない。

萱島『話しているだけで吐いちゃいそう・・・ああヤダヤダ』
栗橋『話した事あるの?』
萱島『え・・・?あ!ご、ごめんなさい。以前女子リーグの試合に来たんですよ、名前は忘れちゃったんですけど』

元の口調に戻った。
それでも、いつもよりちょっと早口な感じだ。

萱島『その時にちょっと・・・何人か、お尻触られて』
栗橋『萱島さんも?』
萱島『・・・はい。思わずビンタしそうになったのを、必死に堪えました。ああムカつく』
栗橋『た、大変だったね・・・』

もしかして酒に酔っているのだろうか。
注文すれば外国のビールとかも出てきそうだが、オレ自身は炭酸の入ったジュースと水しか飲んだ記憶は無い。

萱島『・・・あーあ、思い出しちゃったじゃないですか。どうしてくれるんですか?この気持ち悪さ』
栗橋『ご、ごめん・・・』

相当嫌だったのだろう。
満足に抗議もできず、理不尽な思いをしたに違いない。
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