初勝利(栗橋)

萱島『ここです』

店の前に着いた。
西部劇の舞台からそのまま運んできた様な店構えだ。

萱島『さ、入りましょう・・・あ、すみません』

萱島さんの携帯電話から、電子音が鳴り出す。
映画か何かの曲で、一時期CMで良く耳にした。

萱島『お疲れ様です・・・あの、今ちょっと取り込んでいて・・・はい、また後でかけ直します』

少し離れた所で電話をしている。

萱島『・・・体調ですか?特に問題は無いです。いえ、こちらこそ・・・すみません、失礼します』

マネージャーか誰かだろうか?
電話を終えた萱島さんが戻ってくる。

萱島『すみません、お待たせしました』
栗橋『うん・・・あれ、今度はオレだ』

携帯電話のバイブレーターが作動している。
画面を見てみると、着信を表示していた。
知らない番号だった。

萱島『先、入って注文してますよ。同じので良いですか?』
栗橋『うん、お願い』

店の中に入っていく。
出ようかどうか少し迷ったが、受話器のマークのボタンを押し電話に出た。
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