初勝利(栗橋)

去年、パワフルズと二軍の交流戦で対戦した事がある。
4番には外国人選手、そして5番DHに菊川さんがいた。
結果、3打数3安打1四球1ホームランと明らかに格が違っていた。

しばらくして、菊川さんは一軍昇格し交流戦での指名打者や左の代打として活躍し、チームをAクラスへと導く。
対してオレは、何度か昇格するも結果を残す事ができずにシーズンを終えた。
チームは2位と大躍進だったが、オレはプレーオフに出る事も叶わなかった。
そして二人共、去年と違うユニフォームを着ている。

オレが来年契約しない旨を伝えられたのは、他の選手より少し早かった位の時期だが、菊川さんの場合は少しばかし事情が違っていた。
まだ8月だっただろうか。
スポーツ誌の一面に、今期限りでの退団が決定的であると伝える記事が載った。
球団の親会社である新聞ではさすがに一面こそ飾らなかったものの、野球面で大きく取り上げられた。

9月になって、パワフルズの社長が会見し退団はほぼ決定的となった。
チームが遠征中に会見を開いた為、ファンの間にも不信感が広がってしまったらしい。
パワフルズ本拠地での最終試合、菊川さんの挨拶と監督の挨拶が行われた後に社長の挨拶があった。
しかし、あまりに開き直った感じだったので一部のファンが激怒して座り込みをしたらしい。

その後も選手やファンを巻き込んだゴタゴタは続き、さらには日本シリーズ直前にもう一つの球団でもトラブルが発生した。
二つの球団で発生したトラブルは日本シリーズそっちのけで続き、片方が人気球団だったのも手伝ってスポーツ誌の一面を飾り続けた。
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