初勝利(栗橋)

『ヤバイのが出てきたなー』
『どうする?敬遠もアリだけど・・・』
萱島『えっと・・・』

一旦、バッターの方を見てみた。
パワフルズに所属していた去年も、6月頃に昇格して.320の成績を残している。
球団社長と揉めたか何かで放出されたらしいが、打つ方に関しては相当な力があるだろう。

『この後は上位だからなー・・・』
栗橋『・・・』

もう一度、バッターを見てみる。
左バッターボックスでバットを振っているのは、去年までパワフルズにいた菊川尚志(きくかわたかし)。
確かに、こういう場面では一番危険なバッターだ。

萱島『・・・』

ホームランこそ毎年10本行くかどうかだが、調子の良くないシーズンでも打率が.280を切った事は無いはずだ。
去年は打率.320、一昨年は10本のホームランを打っている。
去年の打率もそうだが、一昨年のホームランも打席数を考えると相当な数字だ。

『できるだけ低め、ゲッツー狙いで・・・』
萱島『はい・・・』

数年前に事故でシーズン前半を棒に振り、それ以降は代打中心の起用となっている。
去年の9月には退団が決定的となっていたが、プレーオフにも出場した。
オレと違ってトライアウトには参加しなかったが、自分とほぼ同時期にバルカンズへのトレード移籍が発表された。
複数の球団から声がかかり、中にはメジャーの球団もあったらしい。
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