雨に打たれて(マミ)

??『マミ、お待たせ』

もうすぐ日付が変わるかという時刻になって、ようやく帰り支度を終えて出てきた。

??『忘れ物は無い?クリーニングに出す制服、名札ちゃんと外した?』
マミ『うん、大丈夫』
??『よーし、帰って風呂入って酒飲んで寝るかー!お先に失礼します、お疲れ様でしたー』
マミ『ナッチ、オヤジ臭い・・・。お疲れ様でした』
『お疲れ』

眼鏡をかけた店長が、キーボードを叩きながら答えた。
初めて面接で会った時は少し神経質そうに見えたが、こちらが仕事について尋ねると分かり易く教えてくれる。
・・・声が小さいので、ちょっと聞き取りづらいけど。

夏野『それじゃ店長、また今日』
『うん、また今日』
マミ『ま、また今日・・・』

三人で妙な挨拶を交わす。
時計を見ると、ちょうど日付が変わった所だった。
普段は口数が少なく、休憩室で二人して黙ったままという事も多い。
もっとも、根掘り葉掘り聞かれるよりは余程良い。
高校生のバイト君と休憩が重なると、働いているよりも疲れてしまう。

『二人は来月一杯だっけ?』
夏野『準備とかあるみたいだから、来月は少なくなっちゃうかも』

一旦キーボードから手を離し、コーヒーを飲み始めた。
紙コップではなく、店長専用のマグカップから湯気が立ち込めている。

『また予定変わりそうだったら教えてよ。お疲れ』
夏野『うん。お疲れ』
マミ『お疲れ様でした』

再びキーボードを叩き始める。
その音を聞きながら、私達は店を後にした。
3 / 15
3/15ページ