姉妹(???)

??『おう、姐(あね)さん』
サオリ『その呼び方は止めて下さい、鬼頭(きとう)さん』

着替えてグラウンドに出る。
キャッチャーの防具を着けた、目付きのあまり良くない人といつものやり取りを交わす。
以前は何処かの建設会社のチームに所属しており、高校時代は甲子園にも出た事があるらしい。

サオリ『荒井さんも、お疲れ様です』
荒井『よろしくだじょー』

こちらの荒井忠太(あらいちゅうた)さんは中学高校と鬼頭さんと同じ学校で、かつてはプロ野球の球団にも所属していた。

雫『・・・よろしくお願いします』
鬼頭『おう、嬢ちゃん』

中学の野球部に見学に行った私と雫だったが、そこには男子部員しかいなかった。
私はともかく、雫が明らかに尻込みしていたので入部を見送る事にした。
雫の希望通り、バスケか陸上かな・・・と考えた所で、会社の野球部に何人か女子部員がいたのを思い出す。

??『沙織さん、雫さんもお疲れ様です』
サオリ『お疲れ様です、雅さん』
雫『お疲れ様です』

こちらの女性、小山雅(おやまみやび)さんともう一人が所属していたが、何となくやりづらそうな感じなのを私だけでなく一緒に練習を見学した雫も感じ取っていた。
そこで私は、社内から野球経験のある女子社員を探してみた。

??『お疲れ様です。用具、こちらに出しておきました』
サオリ『ありがとうございます』

何人かに当たってみた結果、系列店で店長候補として働いている夏野向日葵(なつのひまわり)さんという方が入部してくれる事になった。
その際に、アルバイトの女性を一緒に入部させて欲しいと頼まれた。

??『しずっちー、会いたかったよー!』
雫『わわっ!?マ、マミさん・・・』
サオリ『お疲れ様です、麻霧さん』

栗色の髪の女性、麻霧真実(あさぎりまみ)さん。
彼女達の店に会いに行った数日後、夏野さんから個人的に話したい事があると連絡を受けた。

マミ『あ、沙織さんお疲れ様です・・・それにしても』
サオリ『どうかしました?』

私の胸をじっと見ている。
夏野さんによれば、彼女は自分の本当の名前も思い出せない程の記憶喪失らしい。

マミ『ナッチが羨ましがって・・・アタッ!』
夏野『マミ!あ、本当にスミマセン・・・』
サオリ『い、いえ・・・』

夏野さんからその話を聞かされた時は、さすがに少し躊躇してしまった。
しかし・・・私自身も記憶が曖昧な所がありとても他人事とは思えなかったので、身体検査をするという条件で父に入社を認めてもらえるようお願いした。
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