キャンプイン(栗橋)

矢部『二人は運命的な出逢い、いや再会をしたでやんす』
栗橋『うーん・・・』

矢部君の持ってきたお菓子を一つつまむ。
なんていうか・・・いるはずのない人と会ってしまった、そんな感じの表情だった。

矢部『結婚式にはもちろん来てもらうでやんす!御祝儀期待してるでやんすよ』
栗橋『・・・』

矢部君の脳内では、萱島さんは教会で白いドレスを着ているらしい。
・・・矢部君に会ったとき、彼女は小声で何か言ったような気がする。
『カネダ』『カメダ』そんな風に聞こえた。

矢部『子供は2人・・・いや3人は欲しいでやんす。オ、オイラ興奮してきたでやんすー!』
栗橋『戻ってこーい・・・』

お菓子をポロポロこぼしながら、のぼせ上がった事を言う。
矢部君の脳内での萱島さんは、一糸纏わぬ姿にされてしまったようだ。

矢部『ムキョーでやんす!ムホーでやんす!!』
栗橋『あ、最後の一つ・・・』

興奮のあまり、お菓子を食べながら意味不明な事を話している。
オレの部屋に、食い散らかしたお菓子の粉が散らばっている。

矢部『オイラ燃えてきたでやんす!今年はやるでやんすよ!!』
栗橋『うん・・・』

やる気になったようだ。
おそらく、知っている誰かに似ていたのだろう。
矢部君には姉が一人いるが、男の兄弟はいないはずだ。

矢部『会見のセリフ、考えておくでやんす!』
栗橋『おーい・・・』

似たような眼鏡をした人が知り合いにいたのかもしれない。
ちなみにオレも、眼鏡の下の顔は見た事が無い。

矢部『もう我慢できないでやんす!これから部屋に迎えに行くでやんす!!』
栗橋『・・・あ、もしもし?お巡りさん?』
矢部『酷いでやんす~』

携帯電話を持ち、電話するフリをする。
今日、練習(?)を終えて戻ったらホテルのロビーに届けられていた。

矢部『見つかって良かったでやんすね』
栗橋『うん』
矢部『メールしたでやんすか?』
栗橋『いや、これから』
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