キャンプイン(栗橋)

栗橋『あのー・・・ちょっといいかな?』
??『は、はい・・・』
栗橋『今年入団した萱島さんだよね?』

オレ達を見た。
そしてハッとした顔をして立ち上がり、居住まいを正す。

萱島『あ、すみません!ご挨拶もできなくて・・・。女子リーグから来ました萱島樟葉(かやしまくすは)です。色々迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします!』

新人らしく挨拶も初々しい。
同じ女子選手のみずき先輩とは、やや違った雰囲気だ。
去年のあの会見は緊張のし過ぎだったのだろう。

栗橋『こちらこそよろしくね。オレは、バスターズから移籍してきた栗橋渡。お互いこのチームは初めてだけど、頑張ろうね』
萱島『あ・・・はい!』

彼女が嬉しそうな顔になる。
邪念が全く無さそうな、希望に満ち溢れた表情だ。
隣にいた矢部君へと視線が移る。

栗橋『ああ、それでこっちが・・・』
矢部『眼鏡の奥に輝く知性!俊足巧打の外野手、矢部昭雄でやんす!!分からないことは何でも聞くでやんす。じっくりねっとり教えてあげるでやんすよ~』
栗橋『・・・』

明らかな脚色がされた不気味な自己紹介を流暢に話す。
あらかじめ考えて、練習までしていたに違いない。

萱島さんはというと、予想通り呆気に取られていた。
思った通りのリアクションだ。
・・・と、思いきや。

萱島『え・・・ウソ。なん・・・で?』
矢部『やんす?』
萱島『・・・メダ・・・さん?』

驚愕の表情を浮かべている。
矢部君を見たまま固まっていた。

栗橋『ど、どうしたの?』
萱島『え?えっと・・・す、すみません!栗橋先輩と矢部先輩ですね。よろしくお願いします』
栗橋『う、うん・・・』
萱島『すみません。監督に呼ばれてますので、これで失礼します』

頭を下げ、行ってしまった。

矢部『今度遊びに行くでやんす!オイラのオススメスポット・・・っていないでやんすー!?』
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