刀剣乱舞
寒空閑話
風が段々と冷たくなり、木の葉も薄く濁っていく。落ちてきたそれを集めて寝転んでみれば、ぽこりぽこりと浮かぶ雲が群れてまるで羊のようだった。
「ふふ、かわいい」
そうつぶやき、ゆるりと目蓋を閉じてすーっと息を吸い込む。肺のなかまで洗われるような澄んだ空気が私の中を通り抜けていった。
びゅう、と風が吹き、肌の熱が掠め取られていく。思わず身体が震えた。
「そろそろ冬かあ...」
「きみ、こんなところで寝ていたら身体に障るぜ?何せ君は女人だからなあ」
「うわっ、鶴丸」
急に生まれた影の方を見上げてみれば、少し呆れたような鶴丸の顔が映る。
「うわっ、とは失礼な。ほら帰るぞ。君のその日課もそろそろ仕舞いだ」
そうなのだ。最近私は落ち葉の上に寝転がって空を見上げるのを日課にしている。
審神者としての仕事を終えればすぐ、私は私は庭へと駆け出しそうしているのだ。
短刀たちも集まってきて、一緒に空を見上げあの雲はうさぎみたい、あの雲はくじら、なんて例えては夕食までの時間をぼーっと過ごす。
私という人間はとりわけ空が好き立ったのだ。お陰でこの本丸は天窓が多く、自然光を沢山取り込んでいる。
私の刀剣達も私に似たのか、日向ぼっこや空を見るのが好きで、この本丸では月に一度自然コンクールを開催して歌や写真、絵や料理、みんなが自然にまつわるあれそれを持ち寄り、その月の素晴らしさを表現できた作品が廊下に展示されるのだ。
ちなみに先月、神無月の金賞は銀杏の殻で作った足つぼマッサージ器だった。今剣主体で短刀たちが作ったそうだが、1号機は岩融の重さで壊れてしまったらしく、
「にごうきは、いわとおしのきょたいにもまけないじしんさくです!」
と今剣が自信満々に言っていたのを思い出す。
家事全般を手伝っている、歌仙に使わせるととても喜んで、今では立ち仕事の合間にふみふみしている。お陰で表彰台のてっぺんはがらんどうだ。
「ねぇ鶴丸」
「ん、なんだ?」
「この本丸のこと、好き?」
鶴丸は困ったように眉尻を下げて言う。
「ああ、きみの穏やかで澄んだ霊力、空、風、草花、虫の声、川のせせらぎだっていっとう美しい。刀だってのにこんなに気を抜いているのは家の本丸くらいのものさ」
「そっかあ」
自分の、少し気の抜けた本丸はこのままでいいのだと言われたような気がした。
「...だから、きみが風邪でも引いて霊力が乱れたら困るってわけだ!」
「えっ、うわ!」
いきなり悪い顔になった鶴丸がしゃがみこみ、私を抱きかかえて立ち上がる。
状況が飲み込めない私に、
「そろそろ夕餉も近い、戻るぞ主」
にやりと笑ったその顔を見て私もやっと合点がいった。
「や、やられた!もうちょっといるつもりだったのに!」
空がじわりと滲むようにグラデーションを描き、その上を雁が群れをなして飛んでいく。
ふわりと食欲を誘う香りが鼻腔をかすめ、思わず腹の虫が鳴った。
「今日の晩ご飯、お魚がいいなあ」
「そうか?俺は肉じゃがが食べたい」
「それもいいなー」
こうして1日が過ぎていく。
ああ、どうかこの穏やかな日々が少しでも長く続きますように。
風が段々と冷たくなり、木の葉も薄く濁っていく。落ちてきたそれを集めて寝転んでみれば、ぽこりぽこりと浮かぶ雲が群れてまるで羊のようだった。
「ふふ、かわいい」
そうつぶやき、ゆるりと目蓋を閉じてすーっと息を吸い込む。肺のなかまで洗われるような澄んだ空気が私の中を通り抜けていった。
びゅう、と風が吹き、肌の熱が掠め取られていく。思わず身体が震えた。
「そろそろ冬かあ...」
「きみ、こんなところで寝ていたら身体に障るぜ?何せ君は女人だからなあ」
「うわっ、鶴丸」
急に生まれた影の方を見上げてみれば、少し呆れたような鶴丸の顔が映る。
「うわっ、とは失礼な。ほら帰るぞ。君のその日課もそろそろ仕舞いだ」
そうなのだ。最近私は落ち葉の上に寝転がって空を見上げるのを日課にしている。
審神者としての仕事を終えればすぐ、私は私は庭へと駆け出しそうしているのだ。
短刀たちも集まってきて、一緒に空を見上げあの雲はうさぎみたい、あの雲はくじら、なんて例えては夕食までの時間をぼーっと過ごす。
私という人間はとりわけ空が好き立ったのだ。お陰でこの本丸は天窓が多く、自然光を沢山取り込んでいる。
私の刀剣達も私に似たのか、日向ぼっこや空を見るのが好きで、この本丸では月に一度自然コンクールを開催して歌や写真、絵や料理、みんなが自然にまつわるあれそれを持ち寄り、その月の素晴らしさを表現できた作品が廊下に展示されるのだ。
ちなみに先月、神無月の金賞は銀杏の殻で作った足つぼマッサージ器だった。今剣主体で短刀たちが作ったそうだが、1号機は岩融の重さで壊れてしまったらしく、
「にごうきは、いわとおしのきょたいにもまけないじしんさくです!」
と今剣が自信満々に言っていたのを思い出す。
家事全般を手伝っている、歌仙に使わせるととても喜んで、今では立ち仕事の合間にふみふみしている。お陰で表彰台のてっぺんはがらんどうだ。
「ねぇ鶴丸」
「ん、なんだ?」
「この本丸のこと、好き?」
鶴丸は困ったように眉尻を下げて言う。
「ああ、きみの穏やかで澄んだ霊力、空、風、草花、虫の声、川のせせらぎだっていっとう美しい。刀だってのにこんなに気を抜いているのは家の本丸くらいのものさ」
「そっかあ」
自分の、少し気の抜けた本丸はこのままでいいのだと言われたような気がした。
「...だから、きみが風邪でも引いて霊力が乱れたら困るってわけだ!」
「えっ、うわ!」
いきなり悪い顔になった鶴丸がしゃがみこみ、私を抱きかかえて立ち上がる。
状況が飲み込めない私に、
「そろそろ夕餉も近い、戻るぞ主」
にやりと笑ったその顔を見て私もやっと合点がいった。
「や、やられた!もうちょっといるつもりだったのに!」
空がじわりと滲むようにグラデーションを描き、その上を雁が群れをなして飛んでいく。
ふわりと食欲を誘う香りが鼻腔をかすめ、思わず腹の虫が鳴った。
「今日の晩ご飯、お魚がいいなあ」
「そうか?俺は肉じゃがが食べたい」
「それもいいなー」
こうして1日が過ぎていく。
ああ、どうかこの穏やかな日々が少しでも長く続きますように。
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