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残酷な運命

「結衣様って――実はモテます!?」
「は!? いきなりなんの話!?!?」
魔法の扱い方について学んだ翌日。気持ち良く目覚めたら突如降って湧いたモテ疑惑。それについていけずに混乱していると――
「だって! ピンクのグラデーションがかかった雪のように白い髪! 全てを包み込む包容力ある翠の瞳! 短いスカートの中から覗く艶やかな太腿! そして、幼い少女とはとても思えぬわがままボデー!! ……モテずして何をすると!?」
ガーネットは演説をするように力いっぱい声を上げる。
「あー……えっと、褒めてくれる? のは嬉しいんだけど…………突然なに??」
まだ寝起きで頭が回ってないせいか、いつも以上にガーネットがうざく感じる。
「いえ、魔法少女ってモテ要素も必要だと思いましてぇ」
「……どんどん魔法少女のイメージがおかしくなってくよ…………」
大声でツッコむ気力もなく、独り言のように零す。
というか別段それは大した問題ではなかった。もっと大きな問題が私にはあり――
「ていうか! 何この格好!?」
そう、目覚めたら本来パジャマ姿であるはずの私の格好は――変身させられていた。
「展開についていけないんだけど!?」
ようやく本調子を取り戻し、いつもの様なツッコミが出来たが、別に嬉しくない。
とりあえずこの状況を説明して欲しい。そう“願う”私にガーネットは――

「特に理由はありませぇん!」
と、ドヤ顔で語ったような気がするのでグーで殴ってあげた。

☆ ☆ ☆

場所は変わり、通学路。信号待ちをしていた友に後ろから声をかける。
「真菜ちゃーん! 一緒に学校行こー!」
「結衣! もちろん!」
真菜ちゃんは一瞬驚いた様子だったが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「あれ? ガーネットはいないの?」
不思議そうに問う友の姿に若干罪悪感が過ぎりつつ――
「あー……あの子置いて来たよ……気失ってたから」
と、目を逸らしながら答えた。真菜ちゃんは一層不思議そうに首を傾げていたが、何かを察したのか、それ以上追求することはなかった。
その事にホッと安堵し、
「あ、そういえば真菜ちゃんの願いってなんだったの?」
前から疑問に思っていた言葉を口にする。
問われた友は目を泳がせ、それは親に叱られた時に必死に言い訳を考える子供のようで――
「えっと……その…………」
と言ったきり黙ってしまった。私は少し気まづさを感じながら後悔した。やばい……聞いちゃいけなかったかな……と。
しかし、謝ろうと口を開く前に真菜ちゃんが言葉を紡いだ。
「えっと、笑わない?」
確認するように、懇願するように聞いた。
「もちろん!」
私がそう言うとパァーっと目を輝かせ、こう言った。
「私の、願いは――」
「えっ!? 私も同じだよ! すごいね!」
「ほ、ほんと?」
私たちは道端で手を握りながら同じように笑顔で飛び跳ねていた。
まさか同じ願いを持っているなんて――と、感嘆した。そこではっと気付いた。
「てことは私の願いをあの子に叶えさせたら――必然的に真菜ちゃんの願いも叶えられる?」
世紀の大発見をしたような顔を浮かべながら呟く。もしそれが本当だったらどんなにいいか――
「でも……私、負けたんだよ? いいのかなぁ……」
「いいんじゃないかな? ガーネットも許してくれるよ」
「そうですねぇ。結衣様が謝ってくれれば考えますよぉ」
「うわあ!! びっくりしたぁ!」
突然背後からかけられた声に飛び上がり、思わず真菜ちゃんに抱きつく形になってしまった。
「ああぁ! ごめん、真菜ちゃん……」
ぱっと飛び退き、元凶に向かって睨みながら口を開く。
「ガーネット!! びっくりさせないでよ!」
「結衣様が悪いんですよぉ! 私を置いてくなんて酷いじゃないですかぁ!」
「子供か!!」
「あっははぁ。それは結衣様の方でしょお。リアル小学生なんですしぃ」
近所迷惑も考えずギャーギャー騒ぎ出した私たちの周りに騒ぎを聞き付けた人達が集まってきてしまった。
あっ、やっべ。三人でそう思った私たちは記憶消去の魔法をかけ、咄嗟に変身し、真菜ちゃんを抱き上げながら飛んだ。

「なんか……前もやった気がする……この展開……」
陽の光に目を細めながら呆れ気味に呟いた。
「あははぁ……それが運命ってやつかもしれませんねぇ」
「嬉しくない運命だな…………」
ため息を吐きながら半ば諦めかけていた。ガーネットと過ごすうちは嫌でもこんな展開に突き合わされるのだと。
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