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第一章:独りきりの二人の旅立ち - 七節綴文編

今回は最初から最後まで自己確認回です。

実際に必要な時にスキル確認をしても良かったんですが、話の間に確認と説明が入るのはリズムを崩すと思ったので、それなら最初に一気にやっちゃおうと思った結果です。

本筋は進まないので、ストーリーだけ楽しみたい方は飛ばしても大丈夫です。


第7話:私にしかできない事

 フランツの啜り泣く声と、カチャカチャと皿が擦れる音が響く中眠る……なんて事はなく、昨晩は枕に頭を乗せて三秒で意識を手放した。
 あの後フランツは皿を洗った後、啜り泣きながら家路についた。見送った背中が悲しみに満ちていたのは、忘れてあげよう。

「さて、時間は【前三ノ頁後】か……相変わらず法則は分からないけど、太陽の位置的に昼にはまだ時間がありそうだね」

 今日は今まで通り【食事腹入れ】を用意するみたいだけど、明日からは【血抜き】と【臭み取り】をした肉を出す事になっている。
 各時間帯に、肉を切って酒と水の溶液に漬ける下拵えをするだけだ。今は一家総出で朝の作業を行っているところ。

 自身の事をまだよく分かっていないのと、知らずに問題になる前に、白々亭の裏にある空き地を使って能力の確認作業を始める事にする。


――白々亭 裏の空き地――

「<タブレット>。まずは、どんなアプリがあるか知っておかないとね。自分に何ができるか分からないのは、なんか怖いし」

 ホーム画面を表示し、アプリの確認作業を始める。

 ○プリインストール
 ・アプリ市場
 ・音楽市場
 ・本棚
 ・時計
 ・カレンダー
 ・地図
 ・方位
 ・天気
 ・カメラ
 ・写真
 ・動画
 ・ファイル
 ・音楽
 ・ブラウザ
 ・メール
 ・電話
 ・電話帳
 ・メモ帳
 ・電卓
 ・設定

 ○インストールアプリ
 ・murmurerマーマラー
 ・painter
 ・calc
 ・峰工作 Mobile Edition
 ・猛獣を狩りし者 覇王 タブレット版
 ・終わりゆく幻想オンライン
 ・Yubisaki Music

 ○神さまが入れたであろうアプリ
 ・状態ステータス
 ・持物インベントリ
 ・工作クラフト
 ・解体ディサセンブル
 ・釜戸ファーネス
 ・醸造ブルーアリー
 ・錬金アルケミー
 ・付与エンチャント
 ・概念書換アヴァロン・コード
 ・亜空間

 プリインストールは、確認した限りでは全てアノニーム仕様に変わっているようだ。
 ネットサーフィンは可能だが、書き込み機能は軒並みグレーアウトしていて出来なかった。
 一番驚いたのは、アプリ市場と音楽市場と本棚は使用可能で、【持物インベントリ】と同じ要領でアノニームのお金を入れれば、アプリ・音楽・電子書籍の購入が可能だった。

 元々インストールしていたアプリも問題なく起動できたし、ゲームも何時も通りプレイ可能だった。
 『Yubisaki Music』は正常にランキング機能が稼働。
 『終わりゆく幻想』と『猛獣を狩りし者』は強制オフライン設定で、完全ぼっち仕様。
 呟きアプリの『murmurer』はタイムラインが空っぽで、何故か私からの送信は可能だった。繋がっている人数はゼロ人になっているが……。

 最後は、神さまが入れたであろうアプリなんだけど、スキルをアプリ化したっていうのがコレなんだろう。
 【工作クラフト】【釜戸ファーネス】【醸造ブルーアリー】【錬金アルケミー】は、アプリの見た目も機能も『峰工作』その物で、【持物インベントリ】とマルチタスクにして使う事ができるみたい。
 【解体ディサセンブル】と【付与エンチャント】も峰工作仕様の見た目だけど、実際のゲームにそういう機能は無かったはず。
 【解体ディサセンブル】は『猛獣を狩りし者』にある機能だし、【付与エンチャント】は『終わりゆく幻想』にある機能だ。
 もしかして、好きなゲームの仕様を引っ張ってきてくれたのかな? でも、持ってるスキルの何がアプリ化されてこうなったのかは、スキル一覧を見ても全く分からなかった。

 【概念書換アヴァロン・コード】はスキル名そのままだから分かるけど、【亜空間】ってのが分からない。
 タップすると一瞬暗転してすぐホームに戻っちゃうし、現状は何ができるか不明なアプリだ。名前の通りなら想像はつくんだけどね。
 ある程度アプリを見たし、【概念書換アヴァロン・コード】の詳細を知ろうと弄っていたが、かなり凄まじいものだと分かった。

「いきなり影響力が大きそうな物を対象にするのは危ないから……あの石ころでいいか」

 地面に落ちている石を目視し、頭の中で(<概念書換アヴァロン・コード>)と唱えると、タブレットの画面が切り替わって【概念板コンセイル】が表示される。
 画面左側三分の二に、上下左右にかなりの余白がある状態で三×三のマス目が表示され、マス目の真ん中に、漢字で【石】と書かれた一×一の宝石のような物が配置されている。
 画面右側三分の一は、マス目が出ているが何もアイコンが表示されていない。配置されてる宝石みたいなのを置いておけるスペースだろうと予想する。

「なるほど、これが石ころを構成する概念ってことか……移動はできるけど取り除くことは出来ないのか。この宝石みたいな奴に鍵マークが付いてるし、これは取り除けないマークなんだろうな」

 鍵マークについては概ね間違いないだろうと思ったが、よくよく考えたら【石】から【石】を取り除いたら何も残らないんじゃないかと気が付き、取れなくて当たり前か、とちょっと恥ずかしくなった。
 実際に弄りながら考察してみるが、現状【概念】の構成が見れるだけなのが気になり、【状態ステータス】からスキル一覧を確認する。そこに【概念創造コンクレエLv10☆】があり、ちゃんと確認したはずなのになーと後頭部を掻く。

「他に【概念連結コンキャット】【概念融合コンクジョン】【概念施錠コンクロック】と、ぞれぞれに対応した【概念切断コンクープ】【概念解体コントゥリー】【概念解錠コンヴリー】、それと【概念複製コンエピ】か……これ全部Lv10ってことは、どんな【概念】もお手の物ってことよね……習得してる時点で人間じゃなくない?」

 深い溜息をつくが、もうどうにでもなれと諦めて【概念創造コンクレエ】を試みることに。
 最初は無難に【火】の概念でも作ってみよう。

「火……火……手に魔力を集中して……<概念創造コンクレエフー>」

 頭の中に火の揺らめきを想像しながら手の平に魔力を集中させると、徐々に魔力が一点に集中していき、ポンッと宝石のような物【概念欠片コンピエス】へと変化した。
 現れた【欠片コンピエス】を見ると、表面に漢字で【火】と書かれており、色はとても綺麗な赤色で、やはり宝石のようにしか見えない。

「これをマス目に乗せればいいのかな? ものは試しだし、【石】の隣に置いて……と」

 画面に欠片を乗せると、何の抵抗も無く中に入っていき、カチリと音を立ててマス目に嵌まる。
 すると、目の前の石が突然発火し始めた。火力はそこまで高くないようだが、焼け石ではなく【発火石】が完成した。

「【石】が【火】の概念を得て、【発火石】に変化したのね。剣とかに付けたら火炎剣の出来上がり~ってわけか。何この神をも恐れないぶっ壊れスキル」

 その後も検証を兼ねていくつかの欠片を作り、【湧水石】や【火炎草】を作り出した。
 どうやら、書換対象は生き物も含まれるようで、たまたま近くに居た【ネズミ】を書き換えてみることに。

「【猛獣化】されても困るから、害が出ない物にしておこう。例えば……発光するネズミとか? いや、無難に【硬化】にするか。もし逃げ出しても、硬いネズミってだけなら村の人達にも実害は出ないだろうし」

 そう決めて、二種類の【欠片コンピエス】を作る。今回作ったのは【硬】と【変】で、【連結コンキャット】と【融合コンクジョン】も試すことにした。
 早速【ネズミ】の概念を確認する。

「お、マス目が四×四だ……大きさにも何か基準があるのかね。デフォの概念は【生命】だけか……石みたいに【鼠】があるかと思ってたけど、生き物が対象だと違うのか」

 何気なく視線を画面の右側に向けると、【欠片コンピエス】を置けるであろうスペースが半分の大きさになっており、空いたスペースにネズミのステータスが表示されている。

 名無し 女 一歳 Lv1
 種族:ネズミ
 体力:8
 魔力:2
 攻撃:3
 防御:2
 素早:6
 運:1
 スキル:なし

 名無しのネズミちゃんには悪いけど、実験台になってもらう。

 1.【硬】のみ設置:ネズミが硬くなったようで、体毛や髭がトゲトゲしている。
 種族名も【ハードラット】に変わっている。

 2.【変】のみ設置:暫く待っても何も起こらず。

 3.【硬】と【変】を設置:1と同様。

 4.【硬】と【変】を連結:【硬】から【変】に向かって矢印が表示され、ステータスのスキル欄に【硬化】が追加される。

 5.【硬】と【変】を融合:概念板から欠片が消え、スキル欄に【硬化】が追加される。

 4#.【硬】と【石】を【変】に連結:【硬】→【変】←【石】のようになり、スキル欄に【硬化】と【石化】が追加される。

 この結果から【連結】と【融合】の違いが分かった。

 【連結】:
  ・隣り合った概念を繋ぎ、効果やスキルを得られる
  ・同一概念の場合は効果やスキルのレベルが上がる
  ・効果やスキルのレベルは連結する欠片のレベルに依存する
  ・スキルを概念として取り出すことはできない
  ・【連結】と【切断】は概念板上でのみ行える

 【融合】:
  ・二つ以上の概念を融合し、効果やスキルを得られる
  ・同一概念の場合は欠片のレベルが上がる
  ・効果の場合は概念版に残り、スキルの場合は残らずにスキル欄に表示される
  ・スキルを概念として取り出すことができる
  ・【融合】と【解体】は概念板上以外でも行える

「なかなか奥が深い……どっちもメリットとデメリットがあるし、対象によって使い分けたりするのが正しそうだ」

 そんなこんなしている内に太陽が天辺に昇っていたようで、わざわざエルティが呼びに来てくれた。

「シラカミサマー、【腹入れ】……じゃなくて【食事】の頁だよー」
「呼びに来てくれたんですね、ありがとうございます」
「んー昨節さくせつから思ってたんだけどー、丁寧な言葉じゃなくて良いんだよー?」
「あー……そう? じゃあ砕けた感じにさせてもらうね。んじゃ行こっか」
「はーい♪」

 実験に(強制的に)付き合ってもらったネズミの概念を綺麗サッパリ元に戻し、二人で白々亭の裏口に向かう。
 既にお客さんが来ているようで、店内が賑わっている。


――白々亭 腹入れスペース――

 まだ料理の準備が出来ていないから、昨日と同じように臭いが気になる肉を頬張る。やはり慣れる事は難しそうだ……。
 気が付くとフランツがやってきており、皿の上を見て死んだ魚のような目になる。

「はぁ……まだ食べられないのか……」
「フランツさん我慢です。翌節よくせつには食べられますから」
「そうだよー? フランツはわがままさんだねー?」

 分かってはいても、深い溜息を止める事が出来なかったようだ。しかし、食べないと空腹で困る事になると分かっているので、渋々口に運んでいく。
 よく噛んで食べる事や、調理した肉の味を知ってしまった事もあり、なんだか顔色が悪いような気がする。
 ガムを噛んでいるかのように、口の中でクチャクチャと噛み続け、なかなか飲み込めないようだ。

「ちゃんと食べないと、この後の門番の仕事もちゃんとできなくなっちゃいますよ?」
「分かってるって……んああああああ! 翌節よくせつのために! 今は!! 我慢!!!」

 気合を入れて一気に頬張り、ゴキュゴキュと無理やり飲み込んでいく。エルティも周りの客もドン引きしたようで、可哀想な人を見る視線がフランツを串刺しにしていった。
 全て飲み込んだ直後、ひっそり後ろに立っていたルーティに、思い切り頭を叩かれたのは言うまでもない。

「そうだ、フランツでこっそり試してみようかな……」

 フランツに視線を向けて<概念書換アヴァロン・コード>を発動する。

 フランツ 男 十七歳 Lv12
 種族:人族
 職業:槍使い
 称号:プルミ村を守りし者、自称守護神、ドジっ子
 体力:95
 魔力:6
 攻撃:33
 防御:51
 素早:29
 運:10
 スキル:格闘術Lv2、槍術Lv3、捕縛術Lv2、疾足Lv3

 概念書換アヴァロン・コードで付けたスキルの着脱は確認したが、元々持っているスキルが対象か不明だったので、可能かどうか試したかったのだ。
 試しに【捕縛術Lv2】を長押ししてみると、スキル欄から消え、手の中に【捕縛術Lv2】の欠片コンピエスが現れた。
 どうやら、元から覚えているスキルでも取り出す事ができるようだ。

 スキルが消えてもフランツには分からないようで、特に何の反応も無い。
 実際に捕縛を行う時になったら違和感を感じるんだろうな。そう思いつつ、実験が成功したので【捕縛術Lv2】をフランツの概念板コンセイルに乗せて元に戻す。

「シラカミサマ何してるんですかー?」

 傍から見たら、空中を指でなぞったりしてる変な人だったんだろう。エルティがそれに気付いて質問してきた。

「私にしかできない事をしてただけだから、気にしちゃダーメ」
「シラカミサマにしかできないことかー♪よくわからないけど、よくわかったー♪」

 ド天然な子で良かった。いずれ話すつもりだけど、今はその時じゃないからね。
 そんなこんなで食事を終え、再び裏の空き地へと戻っていく。次の検証は【ギフト】だ。


――白々亭 裏の空き地――

「私が貰ったギフトは【変身メタモル】か。読んで字の如くなら、何かで得た別の姿になれるってことだよね。どう使ったらいいんだろ……まずは念じてみるのが無難かしらね」

 さっそく頭の中で(<変身メタモル>)と念じてみると、タブレットが現れ【状態ステータス】が表示される。

「へ?」

 おそらく【変身メタモル】が発動したんだろうけど、専用の画面が出てくるのかと思っていたので素頓狂な声が出てしまった。
 意味がある事なんだろうと画面を見ると、【種族】と【性別】の部分がいつもと違った。

「【種族:人族▼】に【性別:女▼】か……こっから変更できるってことなのね。今選べる種族は【人族】と……【イノシシ】? 【ロケットボア】?! もしかして、肉食べたからかな……それ以外考えられないよね……」

 調べる術が無いので条件は不明だが、ひとまずロケットボア以外の肉を食べる機会があった時に改めて確認する事にしておく。
 正直ロケットボアになれる利点が浮かばないせいで、外れギフトのような気がしている。

「今はこれだけ知れれば十分か。変身して誰かに見られたら討伐されかねん……他にも試したい事もあるけど、ルーティさんと今後の話をしないとだしね」

 裏の空き地に戻って来てからも、なんだかんだずっと側にいたネズミに手を振って別れる。
 ひとまず自分の部屋に戻り、ルーティの時間が空くのは夜の腹入れの後だから、それまで少し寝る事にする。
 慣れない事をしたのもあり、身体的にも精神的にも疲れが出ていたようで、思いの外早く意識が遠のいた。


次回、ルーティとの話し合いです。
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