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第一章:独りきりの二人の旅立ち - 七節綴文編

ちょいちょい手直しすると思います。つたない文章で申し訳ない。


第4話:プルミ村

 背丈の半分程まである草が生い茂る丘を歩いてくだり、近くを通る道へと向かっていく。
 歩きながら辺りを見渡してみたが、町も家も何も見当たらなかった。

「そういえば、タブレットを人工遺物アーティファクト化してるって言ってたっけ。地図とかこの世界に合わせてあったりしないかな?」

 爺さんの言葉を思い出すのと同時に、自分の見た目が髪以外も変わっている事を思い出す。

「爺神さまめ……次会う機会があったら鳩尾にキツイの一発入れてやらねば」

 苦々しく思いながら握った手に視線を落とすと、最初から何も持っていない事に気が付いた。
 こういう場合は【アイテムボックス】とか、そういう類のスキルに収まってるパターンだ。あるあるだよね。

「流石に歩きながら確認するのは危ないか……。生まれ直していきなり大怪我とかシャレにならないし」

 数歩通り過ぎてしまったが、目的の道に出る事ができた。
 直ぐ近くに座るのに丁度良さげな石があったので、よいしょっと飛び乗る。足がブラブラするけど気にしない。

 この世界で初めて能力を使うんだと思うと、なんだか緊張してくる……。
 深呼吸で呼吸を整え、心頭滅却よろしく目を閉じて……【集中】……カッと目を見開き、手を突き出しながら叫んだ。

「アイテムボックス!!」

 …………何も起こらない。
 風がソヨソヨと全身を撫で、周囲が大自然であるとは思えない程の静寂が包む。
 誰にも見られてないと分かっていても、これは赤面せざるおえない。

「うっわ……恥ずかし……」

 一気に顔が熱くるのが分かり、何故か変なニヤケが出てくる。
 【地球】では、こういうタイプの恥ずかしい感じは殆ど経験無かった。こういう時にどういう顔をすれば良いか分からない。

「ふぅ……せめて、タブレットの出し方だけでも分からないと困るな……。スキルをアプリ化したって言ってたし、使えないと意味ないもんね」

 また恥ずかしい思いはしたくないから、次は大袈裟な動きはしないようにしよう。
 普段見慣れたタブレットをイメージして……。

「……<タブレット>」

 ポツリと呟くように言うと、目の前に見慣れたタブレットが現れた。違いがあるとすれば、少し透けてるところと、宙に浮いてるところだろうか。
 なにこれ、とってもファンタジー。アプリのアイコンが目立っていて、アイコンが浮いてるようにも見える。

「最初から非現実的だったけど、こんなん見たら実感せざるおえないね。本当に【地球】とは違う世界に来たんだなぁ……」

 足をパタつかせながら画面に向かって手を伸ばすと、普段使っている時と同じように冷たい感触があり、確かにそこにあるのが分かる。
 何時も通りの操作で問題ないことを確認し、早速カメラアプリを起動。内カメラに切り替えて自分を映す。

「本当に目の色が紅くなってる。ははは、髪も想像以上に真っ白だわ……。それ以外は元のままなんだね……あんま似合ってると思えないでしょ、コレ」

 深い深い溜息が出てくるが、(変わってしまったものは仕方ない)と気持ちを切り替えて地図アプリを起動する。
 画面には現在位置が表示されているのか、真ん中に赤い三角だけが表示されている。辺りは道以外何も無いみたいだ。
 もう少し遠くに何かないかとピンチインで倍率を変え、より遠くが表示されるようにする。

「お、離れた所に小さい村があるんだね。名前は……【プルミ村】か。まずはこの村に行って寝床を確保しよう。何するにも拠点がないと始まらないし」

 目的の村は、現在位置から見て北西の方角にあり、道中はあまり起伏のない道が続いてるようだ。
 この世界の地図まで3D対応してるとは思わなかったから、事前に細かく知れるのは嬉しかった。土地勘どころか世界勘が無いから、地図様様だ。
 今立っている道が村に繋がってるみたいだし、まだ見ぬ第一村を目指して出発しますかね。

 何気に座り心地が良い石からピョンっと飛び降り、お尻をパンパン払ってから歩き始る。
 触った感じ下着を穿いてない気がしたけど……まさか……ね? 


――神界――

「無事、目的地を定められたようじゃの」
「そ、そうですね……よかった……」

 輪廻の神と嫉妬の神が、良かった良かった、と一息つく。

「良かったじゃねぇですよ……ツヅミちゃんには本当に悪いことしちまったんですから、しっかり見守らないと!」
「わ、分かっておるとも……。直接助けたりは出来ぬが、あの子には幸せになってほしいからのぅ」

 つい先程まで綴文が寛いでいたちゃぶ台の上には、真っ直ぐ前を向いて歩く綴文の姿が映し出されている。

「四六時中見てられるわけじゃないッスけど、あたしも様子見に来るんでよろしくッス」
「わ、私も……すごく気になる……ので……」
「そうしてもらえると助かるわぃ。皆に見守られてると安心じゃろうしな」
「いや……見守られてるのは気付けないんじゃないッスかね……」

 和やかな雰囲気が漂っているが、実はこの三神はすっかり忘れている事があるのだ。
 アノニームの【創造神】から、教会に来るよう言伝があったのだが、今この瞬間も思い出す事は無かった。


――アノニームのとある道の上――

 太陽が少しずつ傾き、空を赤く染めはじめようとした頃、ようやく目的のプルミ村の入口付近まで来る事ができた。
 村の周りは、二十センチ程のアイスの棒を刺して囲ったような外観をしており、見た感じはあまり頑丈そうには思えない。
 三人並んでも通れそうな入口の前には、槍を持った人が暇そうにボーッと立っている。
 此処に来てようやく、言葉が通じるのか分からない事に気が付いた。

「流石に言葉が通じなかったら怪しまれるよね……どうしよ……」

 不安になって挙動不審になっていたのだろう、一人の男性が近付いて来た。

「おい、どうしたんだ? 迷子か?」
「あ、何言ってるか分かる。良かった……」

 男性は何を言ってるんだ? と訝しげな顔をしているが、綴文は心底ホッとしている。

「此処ら辺の子じゃないみたいだが、お父さんかお母さんは一緒じゃないのか?」
「いえ、私一人です。旅をしていて、今夜泊まる場所を確保しようと思ってい……」
「なんだって!! こんな子供が一人旅だなんて、危ないじゃないか!!」

 言い終わる前に、驚愕を含んだ大声を被せてきた。
 あー、今後お決まりになりそうな【パターン】ってやつですかねぇ……。

「あー……あの、こう見えても私十八なんです……。十の頃から成長が止まってしまって……」
「えっ! …………その、なんだ……すまなかった……」

 とても気不味い空気が流れる。あ、この人よく見たら村の入口に立ってた人だ。
 鉄製の胸・肘・膝当てをし、腰にはナイフ、手には長槍を持っている。
 この世界の標準的な装備が分からないけど、おそらく素早さ重視の軽装備なんだろう。

「あの、暗くなる前に宿を確保したいんです。宿屋ってありますか?」
「……あ、あぁ宿屋ね。村に入って少し歩くと、右側に白い看板が出た大きい建物があるんだ。俺の友人の店だから、『門番のフランツから聞いた』って伝えれば少しは安くしてくれるはずだ。行ってみると良い」
「ありがとうございます、助かります」

 頭を下げると、照れくさそうに門の前まで先導してくれた。改めてお礼を言い、村の中へと歩みを進める。
 プルミ村の門番【フランツ】は直ぐに気付かなかったが、フワリと揺れる純白の髪を見て、目が飛び出さんばかりに再度驚愕した。
 意気揚々と歩き出した綴文がそれに気付く事はなかった。


――プルミ村――

 周りを見ると、建物は木造のみのようだ。ちょっとボロいところが目に付くが、『村』って感じがしてとても良い。
 あまり活気ある村ではないようで、どこか寂しい雰囲気が漂っている。お年寄りや子供が多いようだ。
 擦れ違う人達が、キョロキョロと周りを見ながら歩く綴文を驚愕の顔で見ていたが、初めての町でテンションが上がっていたのか、気付く事はなかった。

「おっ、あの看板がそうなのかな? 見た感じ他に無さそうだし、入ってみますか」

 二段だけある階段を登り、入り口のドアに手をかけて開けると、元気な女性の声が飛び出してくる。

「ようこそ【白々亭はくはくてい】へー♪お泊りですかー?」
「はい。門番のフランツさんの紹介で来ました。一部屋お願いします」
「おぉフランツくんのー……あれー? 子供一人だけですかー?」

 やっぱりパターン化決定なんですね、えぇ知ってましたとも。
 虚しさを感じながら訂正すると、案外あっさりと受け入れられた。
 どうやらこの店員さんは、あまり偏見を持たないタイプのようだ。年齢を知ると、コロコロと笑ってすぐに謝ってくれる。

「えへへー♪こんなにちっちゃ可愛いのに、お姉さんだとは思わなかったよー」
「大丈夫です、初対面はだいたいこうなんで……って、年下なんですね」
「一つ下なんだー。エルはエルティっていうんだよー? よろしくねー♪」
「はい、よろしくお願いします。あー、お部屋借りても大丈夫ですか?」
「あ、そだったねー。忘れるところだったよー♪」

 ポワポワしながら受付を済ませ、フランツの紹介という事で、少し安い値段で部屋を貸してくれた。
 ふと窓の外を見ると、太陽が地平線の向こう消え、反対側から月が昇り始めている。暗くなる前に村に着けて本当に良かった。

「お部屋は二階のー、左奥から二番目ですよー」

 鍵を受け取ってお礼を言い、早速階段へ向かう。

「あ、シラカミサマー! もうすぐで【腹入れ】ができるのでー、少ししたら下りてきてねー」

 謎の単語が並んでいるが、後で聞けばいいかと思い、「わかりました」と答えて部屋へと向かう。
 扉に木の板が下げられており、そこに小さな白い花が描かれている。他の扉には色違いの花が描かれているのが確認できる。
 扉を開けて中に入ると、そこは三畳ほどの広さで、ベッドと小さな机が置かれている。とてもシンプルで、すごく好みだ。

「此処が、この世界に来て最初の寝床か……」

 窓を開けて顔を出してみると、そこには満天の星空が広がっていた。
 料理コンテストの為に海外に行くこともあったが、これ程の星空を見たことが無い。

「太陽が高い時にも思ったけど、本当に違う世界に来ちゃったんだなぁ……。月が二つもあるよ……」

 【地球】のように高い建物が無いから、昇り始めたばかりの月がよく見える。
 片方が少し小さめで、もう片方と比べると倍くらいの速さで移動しているようだ。

 【地球】への未練を感じながら、此処で生きていかねばならないんだと、不安な気持ちが溢れてくるのだった。


――Side フランツ――

 綴文が村に入っていくのを見送った後、フランツはダラダラと冷や汗を流していた。

「ホントに居るんだな、昔話の中の存在だと思ってたよ……。エルティのヤツ、ちゃんと対応してくれるか不安になってきたわ……」

 フランツとエルティは、同年代の若者が村の外に出ていく中、村に残った数少ない若者だ。
 村の中での稼ぎはたかが知れていて、大金を稼ぐなら町に出た方が良いのだが、この村が廃れるのは嫌だと残っている。

「もしかしたら、この村も変わっていくのかもしれない……なんたって、【シラカミサマ】が来てくれたんだからな」

 老人と子供ばかりで何をすればいいか分からず、只なんとなく日々を過ごしていた。
 もしあの子がキッカケで村が変わってくれるなら、自分に出来ることは何でもしようと心から思えたのだ。
 それにはまず門番を真面目にやろうと、両足を広げ、長槍を地面に突き立てて草原の方をギロリと睨む。

「おーい、もう交代の時間だぞー」

 そう言いながら少し年老いた男性が近付いてきて、長槍を取られてしまった。

「……腹入れでもして、これからの事を考えるか……」

 せっかくヤル気に満ちていたのに、肩透かしをくらった気分だ。
 大きく伸びをしながら歩きだし、【白々亭】へと向かうのだった。


タブレット
作者が持っている、iPad Pro 12.9inchがモデル。

フランツ:17歳 男
ヤル気が空回りするタイプで、同世代からはドジな奴認定されている。
正義感が強い方だが、考え無しに突っ込むのでよく怪我をして帰ってくる。
エルティとは幼馴染だが、特に恋愛感情は持っていない。

エルティ:17歳 女
宿屋【白々亭】の一人娘。看板娘としてカウンターを担当している。
ポヤポヤした性格で極度の方向音痴。その為、未だに一人で買い物にも行かせてもらえない。
フランツとは幼馴染だが、特に恋愛感情は持っていない。
昔からフランツとよく一緒に居るものだから、両親は恋仲だと思いこんでいる。
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