寂雷さんと呼ぶ(恋人になった後)
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注意書き
・神宮寺寂雷夢
・既に恋人 名前は出さないようにしてます
・エロを匂わせてます
・ヒプマイ自体の設定はまだ知らない所が多いです
はまりたて。ドラマパートは麻天狼のみのやつだけ聞きました
・先生の一人称が「僕」で、タメ口です
・殺し屋だった前提
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「寂雷さんが殺し屋?」
「もしそうだったら、君はどう思うかな」
遠くに花火が上がっている。顔を上げるでもなく小さな花火が見え、夜風の中に紛れて音が届いていた。
二人は水入りのボトルを傾けている。風呂上りで、火照っている体にするりと水も言葉も降りていった。
「それは……とても優秀な殺し屋なんでしょうね。知識があれば手段も多いし、何かとフットワーク軽いし。血も見慣れてるだろうから大丈夫だろうし、死生観も相まってターゲットは幸せな死に方をするんですかね?」
「医者である僕が殺し屋だった場合の評価をしているんだね」
「寂雷さんが殺し屋だったら好きだったか、って聞きたいんですか?」
「ふふ」
こくり、と寂雷は頷く。
何かの答えが欲しかったわけではなく、ただ何気なく露呈してしまいたかった。
そして叶うなら、それをなんでもないことにしてほしかった。
「どうでしょうね。今の寂雷さんは好きですが、もし殺し屋だったら別の性格になっていたかもしれませんし」
サラリと答えた横顔は「好きじゃなかったかもしれない」という事をなんとも思っていない。チリ、と胸の奥を焦がした情熱に自分の口角が少し上がりそうになるのを、寂雷は抑えた。
寂雷には、花火を見つめている筈の視線の先が興味深い。彼女が想像している『自分』がどんな人物なのか、それが少し怖くもあった。
「勿論先生を好きになった理由は性格だけじゃなく顔やら仕草やら、髪も長いわりに清潔なのとか、他にもあります。だからと言って性格が変わっても好きかどうかは……私を好きになってくれたかどうかも分かりませんからね」
「それなら、……今の性格のまま、もし殺し屋が好きになっていたとしたら?」
「殺し屋の先生が、私を好き、ですか……。そうですね……」
わざとらしく顎に手を当てて考えているのを見て、わざとらしく寂雷もそれを真似した。
すぐ隣で自分の仕草を真似した長い腕に気付き、場を茶化すために"神宮寺寂雷"を視線で脅した。
「殺しで昂った寂雷さんにおかえりを言って、抱きしめて、よしよしして、チューして、ご飯食べて、お風呂入りつつエッチして、一緒に寝ますかね」
「今と同じだね」
少しもたじろぐことなく微笑む綺麗な顔から目を逸らせば、遠くで紫色の花火が上がっていた。
殺し屋の寂雷を想像すると共に、紛争地帯で軍医をしていたことは思い出せていた。遠くでドンパチしている、触れれば灼ける花火。
「……でも、殺し屋か……」
でも、と付け加えたことで何度も揮った手が微かに痺れたのを寂雷は覚えた。
昔を思い出したからといって彼女にこんな話を切り出すのではなかったと後悔しても遅い。
その言葉に続くのは、『怖いですね』。あるいは『そんな人いませんよ』。
「…………」
言葉を待つ時間が長い。寂雷が無意識に髪に触れようとした時、盗み見ていた唇から答えがまっすぐに伝えられた。
「メンタルが心配ですね……」
「え、そこなのかい?」
「うーん、ちょっと例えがファンタジーで想像が及ばないですね。殺し屋か……」
『ファンタジー』。想像した言葉とニアミスしているが、寂雷は存外すんなりとそれを胸に納めた。
彼女は少し夢見がちな所がある。それを現実に落とし込めようとする思考力と集中力も。だからこそ、かのill-DOCの傍に居られる。
「そうだなあ……僕なりには、罪の無い人が殺されたり、沢山の尊い命が失われたり……そんなことが考えられるんだけど」
「でも、誰かが誰かを殺したくなければ殺し屋に仕事は来ませんから」
「それもそうだね」
「手術とかする時、患者とかその関係者に『あわよくば殺してくれ』なんて言われることも……それはドラマの見過ぎですかね?」
「そうだとしても断るよ」
「まあ殺し屋は一種の代行サービスですから……そんなサービスがあるのがいけないんですが。もしも自ら殺し屋をやっていたなら……」
「…………」
「……殺し屋寂雷さんか……」
「悩むかな?」
「その寂雷さんにはもしかしたら残虐な趣味があるかもしれないなあ……」
「それはないなあ」
「性格変わっちゃいますからね。……そうだなあ、殺し屋を選ぶ理由をなくしてあげなきゃいけません。お金、名誉、誰かのいいなり?」
「じゃあ、お金だったら?」
「この体……は安いか。臓器?」
「それは売ってはいけないよ……じゃあ、名誉なら?」
「困りましたね……」
「そうだね。困っちゃうね……もしも誰かに強いられていたなら?」
「うーん……私は一般人だから多分その人には会えないでしょうから……うん? その前にどうやって寂雷さんと知り合うんでしょうね?」
「ふふ、君はとても面白いね」
果ての無い想像の旅。可能性を示唆されるたび、今そうであるならばけして出会うことのない二人。
命を貴ぶ神宮寺寂雷には殺し屋は似合わない。一際大きな花火が遠くで上がると、夜空には静寂が戻ってきていた。
あと一口の水を飲み干し、手すりを背に寄り掛かるようにする。ふと隣の男も水を飲み干すためにぐっと空を仰いでいるのに見惚れそうになる。
白い喉仏が動くのが、生きていることを伝えていた。
それなのにその瞳は少し寂しそうに見える。もう何もない空を眺めている。あるいは生と死。あるいは出会いと別れ。
興味深いが口癖の彼にはつまらない答えだったかと改めて思考を開始すれば、当たり前の答えはすぐそばにあった。
「まあもし今から寂雷さんが殺し屋を始めても、しばらくは支えます。今みたいに」
風が吹くと長い髪でその表情は読み取れない。しかしその情報は必要が無い。
寂雷の心は静かな夜の闇のようだった。そのあっけらかんと付け加えられた言葉に、別れの香りと、尽きることのない生命の輝きを見出す。
絶えることのない光のような恋人は、いつか自分を離れてしまうのか。
「しばらく、なんだ」
自分がまたあの日に戻ることは無いだろうと思っていても、何が起きるか分からない世の中だ。
戦争がまた起こるかもしれない。そうでなくてもこのマイクがある限り、自分のまだ見ぬ世界がどこかに生まれるだろう。
世界の変化に順応する時、恋人がしばらくの間だけそばにいてくれる。その言葉に絶望すると同時に救われる気持ちになった。
不意にぐしゃり、とペットボトルを潰す音が聞こえ、夜に微睡みかけていた頭を持ち上げた。
その下唇を噛んでいる横顔が可愛らしく、低い音が喉の奥から出て頬を持ち上げた。
「きっとしばらくしたら私よりいい女見つけちゃいますからね。同業者とかに女スパイがいて……って」
「きっと君の想像はとてもドラマティックなんだろうね」
「体のラインのメリハリがすごくあって、黒いタイツを身にまとってて、あああ」
寂雷さんがいなくなるの嫌だなあ。ため息交じりに紡がれた言葉に、たまらなく愛おしさがこみ上げていた。
この胸の熱を、光を、この人を放してなるものかと向き合えば、まっすぐに視線が絡み合う。
「僕はどこにも行かないよ。君の居る場所が僕の帰る場所だから」
「本当ですか?」
「君が、もし僕が殺しをしたとしても傍にいると誓うなら……僕も誓おうかな」
「あっ、誓いのキスですね」
「君は本当に面白い」
二人は何一つ疑いを持たないままに溶け合う。
呼吸もままならないほど長く。
注意書き
・神宮寺寂雷夢
・既に恋人 名前は出さないようにしてます
・エロを匂わせてます
・ヒプマイ自体の設定はまだ知らない所が多いです
はまりたて。ドラマパートは麻天狼のみのやつだけ聞きました
・先生の一人称が「僕」で、タメ口です
・殺し屋だった前提
************************************/
「寂雷さんが殺し屋?」
「もしそうだったら、君はどう思うかな」
遠くに花火が上がっている。顔を上げるでもなく小さな花火が見え、夜風の中に紛れて音が届いていた。
二人は水入りのボトルを傾けている。風呂上りで、火照っている体にするりと水も言葉も降りていった。
「それは……とても優秀な殺し屋なんでしょうね。知識があれば手段も多いし、何かとフットワーク軽いし。血も見慣れてるだろうから大丈夫だろうし、死生観も相まってターゲットは幸せな死に方をするんですかね?」
「医者である僕が殺し屋だった場合の評価をしているんだね」
「寂雷さんが殺し屋だったら好きだったか、って聞きたいんですか?」
「ふふ」
こくり、と寂雷は頷く。
何かの答えが欲しかったわけではなく、ただ何気なく露呈してしまいたかった。
そして叶うなら、それをなんでもないことにしてほしかった。
「どうでしょうね。今の寂雷さんは好きですが、もし殺し屋だったら別の性格になっていたかもしれませんし」
サラリと答えた横顔は「好きじゃなかったかもしれない」という事をなんとも思っていない。チリ、と胸の奥を焦がした情熱に自分の口角が少し上がりそうになるのを、寂雷は抑えた。
寂雷には、花火を見つめている筈の視線の先が興味深い。彼女が想像している『自分』がどんな人物なのか、それが少し怖くもあった。
「勿論先生を好きになった理由は性格だけじゃなく顔やら仕草やら、髪も長いわりに清潔なのとか、他にもあります。だからと言って性格が変わっても好きかどうかは……私を好きになってくれたかどうかも分かりませんからね」
「それなら、……今の性格のまま、もし殺し屋が好きになっていたとしたら?」
「殺し屋の先生が、私を好き、ですか……。そうですね……」
わざとらしく顎に手を当てて考えているのを見て、わざとらしく寂雷もそれを真似した。
すぐ隣で自分の仕草を真似した長い腕に気付き、場を茶化すために"神宮寺寂雷"を視線で脅した。
「殺しで昂った寂雷さんにおかえりを言って、抱きしめて、よしよしして、チューして、ご飯食べて、お風呂入りつつエッチして、一緒に寝ますかね」
「今と同じだね」
少しもたじろぐことなく微笑む綺麗な顔から目を逸らせば、遠くで紫色の花火が上がっていた。
殺し屋の寂雷を想像すると共に、紛争地帯で軍医をしていたことは思い出せていた。遠くでドンパチしている、触れれば灼ける花火。
「……でも、殺し屋か……」
でも、と付け加えたことで何度も揮った手が微かに痺れたのを寂雷は覚えた。
昔を思い出したからといって彼女にこんな話を切り出すのではなかったと後悔しても遅い。
その言葉に続くのは、『怖いですね』。あるいは『そんな人いませんよ』。
「…………」
言葉を待つ時間が長い。寂雷が無意識に髪に触れようとした時、盗み見ていた唇から答えがまっすぐに伝えられた。
「メンタルが心配ですね……」
「え、そこなのかい?」
「うーん、ちょっと例えがファンタジーで想像が及ばないですね。殺し屋か……」
『ファンタジー』。想像した言葉とニアミスしているが、寂雷は存外すんなりとそれを胸に納めた。
彼女は少し夢見がちな所がある。それを現実に落とし込めようとする思考力と集中力も。だからこそ、かのill-DOCの傍に居られる。
「そうだなあ……僕なりには、罪の無い人が殺されたり、沢山の尊い命が失われたり……そんなことが考えられるんだけど」
「でも、誰かが誰かを殺したくなければ殺し屋に仕事は来ませんから」
「それもそうだね」
「手術とかする時、患者とかその関係者に『あわよくば殺してくれ』なんて言われることも……それはドラマの見過ぎですかね?」
「そうだとしても断るよ」
「まあ殺し屋は一種の代行サービスですから……そんなサービスがあるのがいけないんですが。もしも自ら殺し屋をやっていたなら……」
「…………」
「……殺し屋寂雷さんか……」
「悩むかな?」
「その寂雷さんにはもしかしたら残虐な趣味があるかもしれないなあ……」
「それはないなあ」
「性格変わっちゃいますからね。……そうだなあ、殺し屋を選ぶ理由をなくしてあげなきゃいけません。お金、名誉、誰かのいいなり?」
「じゃあ、お金だったら?」
「この体……は安いか。臓器?」
「それは売ってはいけないよ……じゃあ、名誉なら?」
「困りましたね……」
「そうだね。困っちゃうね……もしも誰かに強いられていたなら?」
「うーん……私は一般人だから多分その人には会えないでしょうから……うん? その前にどうやって寂雷さんと知り合うんでしょうね?」
「ふふ、君はとても面白いね」
果ての無い想像の旅。可能性を示唆されるたび、今そうであるならばけして出会うことのない二人。
命を貴ぶ神宮寺寂雷には殺し屋は似合わない。一際大きな花火が遠くで上がると、夜空には静寂が戻ってきていた。
あと一口の水を飲み干し、手すりを背に寄り掛かるようにする。ふと隣の男も水を飲み干すためにぐっと空を仰いでいるのに見惚れそうになる。
白い喉仏が動くのが、生きていることを伝えていた。
それなのにその瞳は少し寂しそうに見える。もう何もない空を眺めている。あるいは生と死。あるいは出会いと別れ。
興味深いが口癖の彼にはつまらない答えだったかと改めて思考を開始すれば、当たり前の答えはすぐそばにあった。
「まあもし今から寂雷さんが殺し屋を始めても、しばらくは支えます。今みたいに」
風が吹くと長い髪でその表情は読み取れない。しかしその情報は必要が無い。
寂雷の心は静かな夜の闇のようだった。そのあっけらかんと付け加えられた言葉に、別れの香りと、尽きることのない生命の輝きを見出す。
絶えることのない光のような恋人は、いつか自分を離れてしまうのか。
「しばらく、なんだ」
自分がまたあの日に戻ることは無いだろうと思っていても、何が起きるか分からない世の中だ。
戦争がまた起こるかもしれない。そうでなくてもこのマイクがある限り、自分のまだ見ぬ世界がどこかに生まれるだろう。
世界の変化に順応する時、恋人がしばらくの間だけそばにいてくれる。その言葉に絶望すると同時に救われる気持ちになった。
不意にぐしゃり、とペットボトルを潰す音が聞こえ、夜に微睡みかけていた頭を持ち上げた。
その下唇を噛んでいる横顔が可愛らしく、低い音が喉の奥から出て頬を持ち上げた。
「きっとしばらくしたら私よりいい女見つけちゃいますからね。同業者とかに女スパイがいて……って」
「きっと君の想像はとてもドラマティックなんだろうね」
「体のラインのメリハリがすごくあって、黒いタイツを身にまとってて、あああ」
寂雷さんがいなくなるの嫌だなあ。ため息交じりに紡がれた言葉に、たまらなく愛おしさがこみ上げていた。
この胸の熱を、光を、この人を放してなるものかと向き合えば、まっすぐに視線が絡み合う。
「僕はどこにも行かないよ。君の居る場所が僕の帰る場所だから」
「本当ですか?」
「君が、もし僕が殺しをしたとしても傍にいると誓うなら……僕も誓おうかな」
「あっ、誓いのキスですね」
「君は本当に面白い」
二人は何一つ疑いを持たないままに溶け合う。
呼吸もままならないほど長く。
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