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寂雷さんと呼ぶ(恋人になった後)

夢小説設定

本棚全体の夢小説設定
寂雷先生に呼ばれたい名前欄です。

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注意書き


・神宮寺寂雷夢

・既に恋人 名前は出さないようにしてます

・ヒプマイ自体の設定はまだ知らない所が多いです
 はまりたて。ドラマパートは麻天狼のみのやつだけ聞きました

日常感溢れる感じにしました。文章多めです。
夢主は気まぐれな感じです。


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午前中で既に掃除や洗濯を終えている。二人でテキパキとこなせば、一瞬だった。
ゆったりとしたソファに座り新薬の詳細に目を通している寂雷。そして寂雷が読み終えたそれを隣で受け取っては目を通しても分からないその恋人。
かつて耳の聞こえない者が貴族の傍に仕えた歴史があるが、現代ではいくら感覚があっても知識が無ければ何も読み取れない。それを痛感すればその時間は一人一人の独立したものになってしまった。
せっかくの休日を共有したいと、かつてはそう思っていたが。しっかりと眠る時間を作るためならば休日をほんの少しだけ削るのもやぶさかではないと腹に納めた。
手の中の紙の束がもう数センチに及ぼうとしている。それなりに画像が使われているとはいえ、素人が見た限りでは「よく集中が持つなあ」と感心するほどである。その中には外国語で書かれた手紙なども何種類かあり、返信するものに関しては別に持たされた。
「まるで十本の指のついたペーパースタンドだ」と笑われてしまえば、その後もそうするように従っていた。

時計の短針が二つ次の数字に進む頃には、寂雷は全ての書類に目を通し終えていた。そしてほんの少しの時間、瞑想の時間を取る。その間に恋人は書類をフォルダに納める仕事を請け負っている。
寝息かと疑うゆっくりとした呼吸をしている長い髪を眺めてから、書斎へと向かった。









無事に書類を運び終え、ファイルに閉じ終え、不要なものはビニール紐で結んだ。よし、と指差し確認。寂雷が瞑想をしているだろうリビングへと戻ると、変わらない後ろ姿があった。
隣に座ったことをきっかけにしたのか、深呼吸を一度して、目を合わせた。

「ありがとう。お疲れ様」

「そちらこそ、お疲れ様です」

それから、何をするでもなしに隣に座ってぼうっとする。守秘義務の多い仕事の話を聞くわけにもいかず、かといってラップバトルやチーム麻天狼の話も、新しい情報があればすぐに聞くことになる。
二人で何もないを堪能するのはいつものこと。それは少し退屈で、幸福な時間。
ふと空腹を感じ、もうすぐでお昼だなと時計を見上げるとそれほどの時間でもないことに気が付く。一度気にしてしまうとそわそわとしてしまうもので、いつの間にか重ねていた手を持ち上げて見つめることになった。

大きくて白い手だ。爪も定期的に切られていて綺麗で、言うことが無いを通り越して賞賛したいほどだ。骨の浮いた手の甲に胸がきゅんとしてしまう看護師も多いだろう。
なんだこの手は、と憂さ晴らしに皮膚をつまむ。

「えい」

「……何かな?」

「寂雷さんに痛みを与えています」

「ふふ、そこは丁度痛くない所だ」

「すごく皮が伸びます。寂雷さんは骨と皮で出来ています」

びよんびよんとさらさらとした肌を伸ばす。表裏一体になっている二つの手を交互につまめば、どれだけ伸びるかが一目瞭然だった。

「キョウミブカイ……」

「こら。好奇心で痛めつけるようなことをしてはいけない」

何度も場所を変えると痛覚のある場所に当たったのか、寂雷は苦言を呈す。
低い声で口癖を真似していた恋人は、その言葉にある「こら」に過剰に反応する。
私たちは対等であるはずだと。子供のように口を尖らせた。

「でも私に痛めつけられるのは寂雷さんにとって快感なので」

「どうしてそうなるのかな」

「心地いいでしょう。この関係性が」

「……なるほどね」

寂雷は自らの手の甲をつまんでいる手を取って、相手の膝へと乗せた。


「心地いいのは君の方だ。私を支配した気分になっているんだよ」


自覚の無い行動。
確かにそうだと思うと自分でも驚くほどはっとした。……というような表情を、寂雷は微笑んで観察する。
『対等な立場なら、同じ場所まで来なさい』。言葉にはしなかったが、伝わっているだろうと相手を評価している。
寂雷の手を離し、首を垂れる。頭の上から降る優しく笑う声に安心させられるのは、年下ゆえではなかった。

「御見逸れしました」

「かまってほしいならそう言いなさい」

「私はお腹が空きました」

「おや、もうこんな時間か……それなら、今から出かけようか」

寂雷が差し出した手。それは大きく優しく万能である。
「私は自立できます」などと一言付け加えなければ、手に取れない。

「いい子だね」

などと煽るのは、信頼の裏返しなのだ。
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