素直じゃない
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晩冬の期間も終え、すっかり春うららな時期。
桜もそれは見事に咲き誇って、あちこちで花見が行われているであろう。
「…ま、秀吉様がやろうって言えばするだろうけど。どうかな」
一目で裕福だと分かる立派な屋敷で、一人の少女が一人ごちけた。
「慶次くんが宴…ってか祭りが好きだしね、やるかな秀吉様」
屋敷の主である豊臣秀吉の事を考えながら、少女―名は月夜野晴雅―は縁側の庭を箒で掃いた。
箒を振るう度に、散った桜も舞う。
「あれ、三成おかえり」
その時、屋敷の門外から同居人兼ね…彼氏の石田三成が入って来た。
「刑部さんの所に行ってたんだっけ?」
「…ああ」
「でも早くない?しかも、やけにふらついてるけど?」
「実は…」
三成は午後の始まり頃から、幼なじみ兼ね親友の大谷吉継宅に訪問したらしい。
そこで軽食(詳しく言えばお菓子で、三色団子)を、ごちそうになったそうだが、三成は喉を詰まらせたそうな。
「何で詰まらせたの?」
「……刑部の女に晴雅の事を聞かれた」
「ああー神子さんに?」
大谷の妻である神子は、三成と晴雅の仲を良く知っている。
さらに晴雅は神子と仲が良いので、お互いに夫と彼氏の話をしたりする。
「けど、それがふらつく原因にでもなる?」
「刑部に会いに往くのを、止められそうになった…」
(そりゃあショックだ)
三成にとって、大谷は心から大事な親友である。
それでしばらく会いに来るなと言われれば、ショックも受けてフラフラになる筈だ。
「刑部さんに何かしたの?三成にしては、有り得なさそうだけど」
「先も言っただろう。貴様の事を聞かれたからだ」
首を傾げながら晴雅が聞くと、三成は唸る様に答えた。
「私?どうして三成。私の事を聞かれて団子を詰まらせた訳?」
「……そうだと言ったら?」
「彼女の私がいる事が、そんなに恥ずかしい?」
「………っ!」
不意討ちで三成の顔に近づけば、真っ赤な頬が見えた。
「ふふっ…三成、顔真っ赤っか」
「う、うるさい!黙れ晴雅!!」
まじまじと真っ赤な三成を見て、晴雅は満足そうに笑って庭掃きを再開した。
「晴雅!貴様はそもそも私を、」
「はいはい、文句は後で聞くから。外から帰って来たら手洗いうがいね。刑部さんも良く言ってたでしょう?」
憤怒した表情の三成が晴雅に詰め寄って来るが、赤に染まった頬のせいで怖さは皆無だった
「おや、三成くん。帰って来たのかい」
三成が晴雅の肩を引っ付かんでいる所で、二人が世話になっているもう一人の屋敷の主、竹中半兵衛が縁側の廊下を歩いて現れた。
「半兵衛様!」
「そうですよ半兵衛様、まだ手洗いもうがいも済んでないですけど」
「晴雅!!」
「うわーっ(棒読み)」
半兵衛の言葉に反応した三成だが、晴雅の余計な発言でまた怒鳴った。
「やれやれ。相変わらず仲の良い事だ」
今度は晴雅の脇腹を掴んで、引っ張っぱる三成。
それに晴雅は棒読みで悲鳴を上げたが。
半兵衛は楽しそうに笑って、二人を見ていた。
その後は秀吉が仕事から帰るまで、おのおの時間を潰し夕食を迎えた。
「それじゃあ、いただきます」
「「「いただきます」」」
半兵衛が音頭(?)を取って、夕食が始まる。
「どうした晴雅、食欲でもないのか」
「いえ、食欲は有るんですが…」
「ならどうしたんだい?今日は君の好きな豆腐ハンバーグにしたのだけど…」
夕食が始まった直後、秀吉が晴雅の様子に気づいて声を上げた。
それに続いて半兵衛までもが
「はっ…もしや風邪なのかい!?気付いてやれなくてごめんよ、晴雅!」
「違いますよ半兵衛様!」
「秀吉!早く医者を呼ぶんだ!!」
「分かった。待っていろ晴雅」
「違いますって!聞いてますか!?秀吉様」
なかなか言い出せない晴雅に、何故か半兵衛は早とちりして勝手に慌て始めた。
さらには秀吉までもが同じ状態に。
「私は風邪じゃありません!至って健康です!!」
「ならば何故食さない」
「それはその…」
今にでも晴雅を寝かせ医者を呼びそうになる半兵衛と秀吉に、晴雅は必死で叫ぶ。
必死な晴雅の声を聞いて、秀吉が聞き返す。
「三成が、さっきから口をきいてくれなくて…」
「「え?」」
晴雅の食欲を無くしているのは、黙々と食事する三成が原因だった。
思わず二人は似合わない、間の抜けた声を出す。
「三成が…?」
「そうです…帰って来て以来、さっきから全然、口をきいてくれないんですよー!!」
軽く(本当に軽く)涙目になりながら、晴雅は訴えるかの様に叫び出した。
「黙っていられないのか貴様は!?秀吉様と半兵衛様のお食事を、邪魔するんじゃない!!」
「別に邪魔した訳でもないし、邪魔するつもりもないよ!!」
「ならば黙って食っていろ!!」
食事を始めてから一切話さなかった三成が、ようやく話し出した。
…大声でだが。
「…分かった。黙って食べるよ」
「最初からそうしていれば良いのだ!」
しゅんとした晴雅に、三成は鼻を鳴らして食事を再開する。
「まぁ、落ち込まないで晴雅。僕のハンバーグを半分あげるから」
「え?良いんですか…?」
「我も半分やろう」
「わーい!秀吉様、半兵衛様ありがとうございます!!」
落ち込む晴雅を励まそうと、秀吉と半兵衛が豆腐ハンバーグを分けようとした。
しかし。
「…そんなに腹を満たしたいのなら、私のものを口にしてみろぉ!!!」
「ちょっ…三成!?」
晴雅の皿に半分のハンバーグを移そうとした、秀吉と半兵衛を遮って三成が己のハンバーグ(一個丸ごと)を叩き出した。
「貴様如きが秀吉様と半兵衛様の施しを受ける必要はない!!」
「分かってるよ…分かるよ三成。でも良いの?三成の分が無くなっちゃうよ」
「私の食事が減るよりも、秀吉様と半兵衛様のお食事を減らす方が罪だ!」
「いや、罪って…」
演説と思われるばりの声を上げて、三成は自室に突撃していったのであった。
「……色々とごめんなさい」
「大丈夫だよ。晴雅が元気になれば、なによりだ。それにしても三成くんは素直じゃないな。ねぇ?秀吉」
「全くだ」
晴雅と三成のやり取りを見て、和んでいた二人だった
「…刑部、失敗した」
『またか。これで三度目よ』
自室に突撃したとたん、三成は音速で携帯を取り、通話ボタンを押す。
先ほど出した大声から想像出来ない小ささで、三成は呟いた。
それに通話相手が、呆れた様な声で返す。
「決死のつもりで赴いたが…上手くいかん」
『ぬしも天の邪鬼よなァ。よく晴雅が疲れぬものだ』
「うるさい」
『大谷さーん!お薬の時間ですよー』
三成の性格を良く分かっている大谷が笑う。
その時、携帯に女性の声が混じる。
大谷の妻である神子の声であろう。
「貴様らは何故そこまで素直になれる」
『さぁ?何故であろうなァ』
『大谷さーん?』
また神子の声がし、大谷がそれに反応した。
『わかった、ワカッタ。今往く。ではな三成』
通話が切れた音が数秒流れ、携帯の待受画面が表示される。
画面に写るのは、無表情だが何処か照れて目線を下に向けている三成と、嬉しそうに笑う晴雅が写っていた。
晴雅の笑顔を見て胸が暖かくなる様な気がして、三成は素直になれない己に溜め息をついた
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桜もそれは見事に咲き誇って、あちこちで花見が行われているであろう。
「…ま、秀吉様がやろうって言えばするだろうけど。どうかな」
一目で裕福だと分かる立派な屋敷で、一人の少女が一人ごちけた。
「慶次くんが宴…ってか祭りが好きだしね、やるかな秀吉様」
屋敷の主である豊臣秀吉の事を考えながら、少女―名は月夜野晴雅―は縁側の庭を箒で掃いた。
箒を振るう度に、散った桜も舞う。
「あれ、三成おかえり」
その時、屋敷の門外から同居人兼ね…彼氏の石田三成が入って来た。
「刑部さんの所に行ってたんだっけ?」
「…ああ」
「でも早くない?しかも、やけにふらついてるけど?」
「実は…」
三成は午後の始まり頃から、幼なじみ兼ね親友の大谷吉継宅に訪問したらしい。
そこで軽食(詳しく言えばお菓子で、三色団子)を、ごちそうになったそうだが、三成は喉を詰まらせたそうな。
「何で詰まらせたの?」
「……刑部の女に晴雅の事を聞かれた」
「ああー神子さんに?」
大谷の妻である神子は、三成と晴雅の仲を良く知っている。
さらに晴雅は神子と仲が良いので、お互いに夫と彼氏の話をしたりする。
「けど、それがふらつく原因にでもなる?」
「刑部に会いに往くのを、止められそうになった…」
(そりゃあショックだ)
三成にとって、大谷は心から大事な親友である。
それでしばらく会いに来るなと言われれば、ショックも受けてフラフラになる筈だ。
「刑部さんに何かしたの?三成にしては、有り得なさそうだけど」
「先も言っただろう。貴様の事を聞かれたからだ」
首を傾げながら晴雅が聞くと、三成は唸る様に答えた。
「私?どうして三成。私の事を聞かれて団子を詰まらせた訳?」
「……そうだと言ったら?」
「彼女の私がいる事が、そんなに恥ずかしい?」
「………っ!」
不意討ちで三成の顔に近づけば、真っ赤な頬が見えた。
「ふふっ…三成、顔真っ赤っか」
「う、うるさい!黙れ晴雅!!」
まじまじと真っ赤な三成を見て、晴雅は満足そうに笑って庭掃きを再開した。
「晴雅!貴様はそもそも私を、」
「はいはい、文句は後で聞くから。外から帰って来たら手洗いうがいね。刑部さんも良く言ってたでしょう?」
憤怒した表情の三成が晴雅に詰め寄って来るが、赤に染まった頬のせいで怖さは皆無だった
「おや、三成くん。帰って来たのかい」
三成が晴雅の肩を引っ付かんでいる所で、二人が世話になっているもう一人の屋敷の主、竹中半兵衛が縁側の廊下を歩いて現れた。
「半兵衛様!」
「そうですよ半兵衛様、まだ手洗いもうがいも済んでないですけど」
「晴雅!!」
「うわーっ(棒読み)」
半兵衛の言葉に反応した三成だが、晴雅の余計な発言でまた怒鳴った。
「やれやれ。相変わらず仲の良い事だ」
今度は晴雅の脇腹を掴んで、引っ張っぱる三成。
それに晴雅は棒読みで悲鳴を上げたが。
半兵衛は楽しそうに笑って、二人を見ていた。
その後は秀吉が仕事から帰るまで、おのおの時間を潰し夕食を迎えた。
「それじゃあ、いただきます」
「「「いただきます」」」
半兵衛が音頭(?)を取って、夕食が始まる。
「どうした晴雅、食欲でもないのか」
「いえ、食欲は有るんですが…」
「ならどうしたんだい?今日は君の好きな豆腐ハンバーグにしたのだけど…」
夕食が始まった直後、秀吉が晴雅の様子に気づいて声を上げた。
それに続いて半兵衛までもが
「はっ…もしや風邪なのかい!?気付いてやれなくてごめんよ、晴雅!」
「違いますよ半兵衛様!」
「秀吉!早く医者を呼ぶんだ!!」
「分かった。待っていろ晴雅」
「違いますって!聞いてますか!?秀吉様」
なかなか言い出せない晴雅に、何故か半兵衛は早とちりして勝手に慌て始めた。
さらには秀吉までもが同じ状態に。
「私は風邪じゃありません!至って健康です!!」
「ならば何故食さない」
「それはその…」
今にでも晴雅を寝かせ医者を呼びそうになる半兵衛と秀吉に、晴雅は必死で叫ぶ。
必死な晴雅の声を聞いて、秀吉が聞き返す。
「三成が、さっきから口をきいてくれなくて…」
「「え?」」
晴雅の食欲を無くしているのは、黙々と食事する三成が原因だった。
思わず二人は似合わない、間の抜けた声を出す。
「三成が…?」
「そうです…帰って来て以来、さっきから全然、口をきいてくれないんですよー!!」
軽く(本当に軽く)涙目になりながら、晴雅は訴えるかの様に叫び出した。
「黙っていられないのか貴様は!?秀吉様と半兵衛様のお食事を、邪魔するんじゃない!!」
「別に邪魔した訳でもないし、邪魔するつもりもないよ!!」
「ならば黙って食っていろ!!」
食事を始めてから一切話さなかった三成が、ようやく話し出した。
…大声でだが。
「…分かった。黙って食べるよ」
「最初からそうしていれば良いのだ!」
しゅんとした晴雅に、三成は鼻を鳴らして食事を再開する。
「まぁ、落ち込まないで晴雅。僕のハンバーグを半分あげるから」
「え?良いんですか…?」
「我も半分やろう」
「わーい!秀吉様、半兵衛様ありがとうございます!!」
落ち込む晴雅を励まそうと、秀吉と半兵衛が豆腐ハンバーグを分けようとした。
しかし。
「…そんなに腹を満たしたいのなら、私のものを口にしてみろぉ!!!」
「ちょっ…三成!?」
晴雅の皿に半分のハンバーグを移そうとした、秀吉と半兵衛を遮って三成が己のハンバーグ(一個丸ごと)を叩き出した。
「貴様如きが秀吉様と半兵衛様の施しを受ける必要はない!!」
「分かってるよ…分かるよ三成。でも良いの?三成の分が無くなっちゃうよ」
「私の食事が減るよりも、秀吉様と半兵衛様のお食事を減らす方が罪だ!」
「いや、罪って…」
演説と思われるばりの声を上げて、三成は自室に突撃していったのであった。
「……色々とごめんなさい」
「大丈夫だよ。晴雅が元気になれば、なによりだ。それにしても三成くんは素直じゃないな。ねぇ?秀吉」
「全くだ」
晴雅と三成のやり取りを見て、和んでいた二人だった
「…刑部、失敗した」
『またか。これで三度目よ』
自室に突撃したとたん、三成は音速で携帯を取り、通話ボタンを押す。
先ほど出した大声から想像出来ない小ささで、三成は呟いた。
それに通話相手が、呆れた様な声で返す。
「決死のつもりで赴いたが…上手くいかん」
『ぬしも天の邪鬼よなァ。よく晴雅が疲れぬものだ』
「うるさい」
『大谷さーん!お薬の時間ですよー』
三成の性格を良く分かっている大谷が笑う。
その時、携帯に女性の声が混じる。
大谷の妻である神子の声であろう。
「貴様らは何故そこまで素直になれる」
『さぁ?何故であろうなァ』
『大谷さーん?』
また神子の声がし、大谷がそれに反応した。
『わかった、ワカッタ。今往く。ではな三成』
通話が切れた音が数秒流れ、携帯の待受画面が表示される。
画面に写るのは、無表情だが何処か照れて目線を下に向けている三成と、嬉しそうに笑う晴雅が写っていた。
晴雅の笑顔を見て胸が暖かくなる様な気がして、三成は素直になれない己に溜め息をついた
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