文よりも確信的なもの
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その後もお茶やゼリーを楽しみながら談笑していると廊下からドタバタと物音が聞こえた。
「奥様っ!旦那様っ!」
「どうしたのそんなに慌てて」
「またお嬢様宛てに文が…」
「えっ?」
「!」
四人揃って何だろうと話して見れば居間の扉が開き屋敷の使用人の一人が両親を呼ぶ。
のんびりと尋ねた朔夜に慌てた様子で答えればその内容へ鳩が豆鉄砲を食った様な反応を見せる晴雅。
その隣の三成は顔付きが見るからに険しくなり余りの覇気に居合わせた使用人は後日、冷や汗が止まらなくなったと仲間に溢したと言う。
「またいつもの家門か?懲りない奴らだな」
「本当に懲りないわね。タイミングが良過ぎるから絶対、晴雅が帰って来たのを確認して送ってきたんでしょう」
「なにそれこわい」
「刀さえあれば斬滅してくるが」
「今の時代だと御法度だからやめよう!と言うかいつの時代でも駄目だよ!気持ちは嬉しいけど」
確認の為に使用人が持ってきた文の封筒を手にするなり夫へ目配せすれば白昼がどこからか取り出したちり取りへビリビリと朔夜は破り捨てた。
「晴雅にはもう三成くんが居るから横槍は断じて許さないわよ。秀吉も半兵衛もそう思ってるわ」
「俺達だけじゃなくて屋敷のみんなもそう思ってる。だから気にしなくていいし忘れていい」
乱雑な紙切れと成り果てたそれをちり取りごと使用人に渡し「捨ててくるか燃やしてきてちょうだい」と母親から頼まれ頷くなり早足でこの場から立ち去った。
少し腹の虫が治ったのか落ち着いた口振りで娘と恋人に言い切ると朔夜に続いて白昼も相槌を打ちながらそう言った。
「ごめんね三成、変な時に呼んじゃって」
「何故お前が謝る。罪があるのはあの身の程知らずだろう」
空になった湯呑みと皿を父親が片付け始めると同時で「今日はまだ少し占いのお客さんが来るの。だからしばらく席を外しちゃうんだけど二人共好きにゆっくりしちゃってね」と母親が立ち上がりつつ笑顔で説明を始めた。
両親に言われるがままかつて過ごしていた晴雅の自室へ向かい畳で腰を下ろし一息つく事にした。
何気なく誘った里帰りの同行時に起きた先程の文騒動を気にしてか晴雅が謝ると然りげ無く彼女に密着していた三成が間髪も空けず答えた。
名前も顔も知らない見ず知らずの相手が己のしかも婚約にまで契れた存在へ余計な真似を働く様を知らされ思わず自ら切り込みたくなった。
「ありがとう。まぁ私には三成が居るし絶対に守ってくれるから全然なんともないんだけどね」
だが嬉しそうに笑む晴雅が自分から彼の胸元へ身を寄せてくるので驚愕するも湧き上がっていた三成の焦燥が薄れてゆく。
「あっ、まだこの本あったんだー懐かしっ」
「『竹取物語』か?」
「それを元に分かりやすくしたやつだね」
しばし二人切りの時間とふれあいを過ごしていると棚に並べられていた中で一冊の本を手に取る。
幼い頃に読んだであろうその表紙からそれがどんな代物のものか察していた三成が言及すると晴雅は懐かしみながらペラペラとめくり相槌を打つ。
「ふわぁ〜…なんだかゆっくりしたら眠くなってきた」
「少し眠っていろ。何かあれば起こす」
「うん、そうする…三成は…?」
「私は必要ない。大方お前は気が高揚して夜明かししていただろう」
「うっ、鋭いね…」
不意にあくびが出て片目にも涙が貯める姿に提案するとコクリと頷きながら目を擦る。
もう寝ぼけ眼ながら聞いてみると迷いなく答えられ更には追及を受けてしまった。
「何度も半兵衛様からお聞きしている。心労を重ねている貴様も言える立場ではない」
「すみませんでした…以後気を付けます」
「……信じ難いが今はいい。さっさと眠れ」
心当たりがありまくりな彼女は目を泳がせ反省すると三成は(案ずる私の身にもなれ)と言葉を飲み込んで晴雅の頭に手を乗せて促した。
数分もしない内に小さな寝息を立て始めた恋人を気が済むまで抱きかかえていると起こさない様に丁寧に寝かせ己の上着を掛けてやる。
窓や縁側に続く戸を少し開いて風を招き清涼を保っているが一定の時も経てば体を冷やしてしまうだろう。
せめてもと自らの上着を掛けたが確実とは言えない為に三成は掛布を探そうと部屋から静かに出た。
「おや三成くん。どうかしたかい?そろそろ追加のお茶を持って行こうと思ったんだけど」
この屋敷へ来てから一番で入室した居間へ向かっていれば忙しく働く使用人達に混じり切り回す白昼と出くわす。
明るく尋ねてくる恋人の父親に晴雅が眠りに就いたので寝冷えしない様、掛け布はないか聞き返したら。
「ああそれならちょうどの物が居間の箪笥に、」
「旦那様、占いの御依頼者様がいらっしゃいました」
「分かった対応しよう。すまないが三成くん、掛け布を持ってくるからそれを晴雅に掛けてやってくれないか?」
「…助力が必要ならば貸すが」
最初は自分で持って来ようとしたが早足で現れた使用人がそう言うので彼に受け取って貰おうと考えた。
すると三成の方から手伝いの有無を聞かれ驚いた白昼が「気遣ってくれてありがとう。でも今日の君達はお客さんでもあるんだから手伝わせる訳にいかないんだ」と礼も言いつつ答える。
しかし彼は頑なに動かず少々困り顔ながらひとまず居間まで戻り掛け布を持って来ると手渡すなり目にも見えない速さと動きで娘の自室へ向かったと思いきや気が付けば目の前へ戻って来ていた。
目を見開いて驚く白昼は彼の動きに苦笑いしつつ「じゃあお言葉に甘えてお茶を淹れて貰おうかな」と根気負けし三成に手伝いを頼んだのだった。
「いやあ助かったよ。おかげでお客さん全員のお持てなしがしっかりと出来た」
「…大した事はしていない」
「そんな事はない。どんなに小さい事でも必要なら助けになってありがたいんだ」
お茶淹れから始まり茶菓子の用意や座布団の準備などじっとする暇も無い程の仕事を繰り返していれば一段落したのか額を腕で拭いながら白昼が声をかけてくる。
俯いて謙遜する三成に言葉通り感謝を伝え続けて繋げた。
「秀吉くんも半兵衛くんも三成くんみたいな人が居るから心強いんだろうなぁ」
「!!」
「だから晴雅の旦那さんとして選んでくれたんだと俺は思う」
妻と自分の旧友である秀吉と半兵衛の名を口にして感嘆の声を受ければ三成はバッと顔を上げて表情を一変させる。
「これからも晴雅の事をよろしくな三成くん」
「………無論だ」
将来には娘の夫となり義息となる彼へ少ししんみりとした様子ながら笑う白昼に三成は声に力を込めて義理の父親となりうる相手へ頷いた。
「ん…?三成、どうしたの…何かあった?」
「いや何もない。お前の父君から茶を受け取っただけだ」
昼寝から目を覚ました晴雅が開眼すると自分の髪を撫でる三成と至近距離で目が合った。
まだ身を横にしたまま問い掛けると即答で短く返されたのだった。
ーーー時が経ち数刻後。
「お風呂が沸いたみたいだから三成くん一番風呂どうぞ!」
「私は最後でいい」
「えーたまには一番で入りなよー。三成いつも最後じゃない」
「尚更だ。私よりも優先すべき者が居る」
久し振りに夫婦で拵えたと朔夜が上機嫌で語りまくり照れながらやんわりと静止する白昼やらで夕餉を済ませ、そのままの勢いで入浴を勧めてきた。
ところが勧められた当の本人は迷わず断りを入れるのですかさず晴雅が不満げに加わった。
しかし三成はやはりと言うべきか頑なに首を縦に振らず「三成の意地っ張り!」とポカポカ殴り出す娘を父親が止める。
「もう本当に頑固だね…仕方ないや。お父さんが一番風呂ね」
「えっ、俺が?」
「たぶんお父さんが一番に働いてるのを見てるから気を遣ってるんだと思う。そうでしょ三成?」
「………」
わざとらしく深い溜め息を吐いた晴雅が名指しとも言える呼び上げをし困惑する白昼を置いて聞いてみるが強面の顔色で沈黙したままだった。
「晴雅ーお風呂出たわよー。三成くんが遅くならない様に早く入っちゃいなさーい」
「はぁーい」
風呂の順番で軽い揉め事が起こりかけたがどうにか収まり朔夜も入浴を終えた様だ。
夕餉を終えて自室へ戻り翌日には迎えに来る秀吉と半兵衛達との約束の時間に備えて話し合いをしているさなか声が掛かった。
「じゃあ入ってくるねー」
「私の事は考えずに入ってこい」
「折角だし一緒に入る?」
「っ!!晴雅っ…!!!」
母親に言われた通り恋人の入浴が遅れない様、考えながら部屋から出かけるとその思考を読み取ったかの如く背中へ告げられた。
負けじとからかい気味に聞いてみれば赤面し言葉を詰める。
満足な反応で「冗談だよ冗談」と晴雅が笑い対する三成は「さっさと行け!!」と叫び返した。
「ふぃ〜さっぱりした〜。秀吉様のとこも広くて豪華なお風呂だけどうちもなかなかよねぇ」
数十分後、久々の実家での風呂を満喫し三成を呼びに行き交代で自室へ戻って来た。
「あっ神子さんからメールきてる。幸ちゃんの写真だかわいい!」
使用人達が夕餉中に敷いてくれていた二組の布団の内、一つに座ると携帯を手に取る。
畳んでたそれをパチリと開けば知り合いの神子からメールが届いており文章の他にも写真が付属されていた。
大谷宅で飼われている桜ブンチョウ・幸の写真を新たに送ってきてくれた様で晴雅は一人はしゃいでいた。
「へぇ夏野菜で天ぷら作ったんだ。いいなぁ刑部さん、神子さんお手製天ぷら食べ放題かぁ〜」
更には作りたてであろう野菜の天ぷらの写真まで載せられており羨ましさから何とも言えない気持ちになる。
するとそんなタイミングでちょうど新たなメールが届く。
「ん?噂をすれば刑部さんからもメールが。なになに…えぇ〜そんな時に金吾が来たの…」
いつか三成と一緒にお邪魔させて貰い食べてみたいと思考しながら確認すると…。
「これは相当怒ってるな…ここまで愚痴ってくるなんて珍しい」
どうやらとある人物が神子との夕餉中に来訪尚且つ、彼女手作りの天ぷらを分け与える羽目になったらしく大谷は不平不満の愚痴を長々と文章で示してきていた。
旧友の状態に物珍しさをかんじながら(今度会ったら分からせなきゃ…)と使命感を抱いた晴雅だった
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「奥様っ!旦那様っ!」
「どうしたのそんなに慌てて」
「またお嬢様宛てに文が…」
「えっ?」
「!」
四人揃って何だろうと話して見れば居間の扉が開き屋敷の使用人の一人が両親を呼ぶ。
のんびりと尋ねた朔夜に慌てた様子で答えればその内容へ鳩が豆鉄砲を食った様な反応を見せる晴雅。
その隣の三成は顔付きが見るからに険しくなり余りの覇気に居合わせた使用人は後日、冷や汗が止まらなくなったと仲間に溢したと言う。
「またいつもの家門か?懲りない奴らだな」
「本当に懲りないわね。タイミングが良過ぎるから絶対、晴雅が帰って来たのを確認して送ってきたんでしょう」
「なにそれこわい」
「刀さえあれば斬滅してくるが」
「今の時代だと御法度だからやめよう!と言うかいつの時代でも駄目だよ!気持ちは嬉しいけど」
確認の為に使用人が持ってきた文の封筒を手にするなり夫へ目配せすれば白昼がどこからか取り出したちり取りへビリビリと朔夜は破り捨てた。
「晴雅にはもう三成くんが居るから横槍は断じて許さないわよ。秀吉も半兵衛もそう思ってるわ」
「俺達だけじゃなくて屋敷のみんなもそう思ってる。だから気にしなくていいし忘れていい」
乱雑な紙切れと成り果てたそれをちり取りごと使用人に渡し「捨ててくるか燃やしてきてちょうだい」と母親から頼まれ頷くなり早足でこの場から立ち去った。
少し腹の虫が治ったのか落ち着いた口振りで娘と恋人に言い切ると朔夜に続いて白昼も相槌を打ちながらそう言った。
「ごめんね三成、変な時に呼んじゃって」
「何故お前が謝る。罪があるのはあの身の程知らずだろう」
空になった湯呑みと皿を父親が片付け始めると同時で「今日はまだ少し占いのお客さんが来るの。だからしばらく席を外しちゃうんだけど二人共好きにゆっくりしちゃってね」と母親が立ち上がりつつ笑顔で説明を始めた。
両親に言われるがままかつて過ごしていた晴雅の自室へ向かい畳で腰を下ろし一息つく事にした。
何気なく誘った里帰りの同行時に起きた先程の文騒動を気にしてか晴雅が謝ると然りげ無く彼女に密着していた三成が間髪も空けず答えた。
名前も顔も知らない見ず知らずの相手が己のしかも婚約にまで契れた存在へ余計な真似を働く様を知らされ思わず自ら切り込みたくなった。
「ありがとう。まぁ私には三成が居るし絶対に守ってくれるから全然なんともないんだけどね」
だが嬉しそうに笑む晴雅が自分から彼の胸元へ身を寄せてくるので驚愕するも湧き上がっていた三成の焦燥が薄れてゆく。
「あっ、まだこの本あったんだー懐かしっ」
「『竹取物語』か?」
「それを元に分かりやすくしたやつだね」
しばし二人切りの時間とふれあいを過ごしていると棚に並べられていた中で一冊の本を手に取る。
幼い頃に読んだであろうその表紙からそれがどんな代物のものか察していた三成が言及すると晴雅は懐かしみながらペラペラとめくり相槌を打つ。
「ふわぁ〜…なんだかゆっくりしたら眠くなってきた」
「少し眠っていろ。何かあれば起こす」
「うん、そうする…三成は…?」
「私は必要ない。大方お前は気が高揚して夜明かししていただろう」
「うっ、鋭いね…」
不意にあくびが出て片目にも涙が貯める姿に提案するとコクリと頷きながら目を擦る。
もう寝ぼけ眼ながら聞いてみると迷いなく答えられ更には追及を受けてしまった。
「何度も半兵衛様からお聞きしている。心労を重ねている貴様も言える立場ではない」
「すみませんでした…以後気を付けます」
「……信じ難いが今はいい。さっさと眠れ」
心当たりがありまくりな彼女は目を泳がせ反省すると三成は(案ずる私の身にもなれ)と言葉を飲み込んで晴雅の頭に手を乗せて促した。
数分もしない内に小さな寝息を立て始めた恋人を気が済むまで抱きかかえていると起こさない様に丁寧に寝かせ己の上着を掛けてやる。
窓や縁側に続く戸を少し開いて風を招き清涼を保っているが一定の時も経てば体を冷やしてしまうだろう。
せめてもと自らの上着を掛けたが確実とは言えない為に三成は掛布を探そうと部屋から静かに出た。
「おや三成くん。どうかしたかい?そろそろ追加のお茶を持って行こうと思ったんだけど」
この屋敷へ来てから一番で入室した居間へ向かっていれば忙しく働く使用人達に混じり切り回す白昼と出くわす。
明るく尋ねてくる恋人の父親に晴雅が眠りに就いたので寝冷えしない様、掛け布はないか聞き返したら。
「ああそれならちょうどの物が居間の箪笥に、」
「旦那様、占いの御依頼者様がいらっしゃいました」
「分かった対応しよう。すまないが三成くん、掛け布を持ってくるからそれを晴雅に掛けてやってくれないか?」
「…助力が必要ならば貸すが」
最初は自分で持って来ようとしたが早足で現れた使用人がそう言うので彼に受け取って貰おうと考えた。
すると三成の方から手伝いの有無を聞かれ驚いた白昼が「気遣ってくれてありがとう。でも今日の君達はお客さんでもあるんだから手伝わせる訳にいかないんだ」と礼も言いつつ答える。
しかし彼は頑なに動かず少々困り顔ながらひとまず居間まで戻り掛け布を持って来ると手渡すなり目にも見えない速さと動きで娘の自室へ向かったと思いきや気が付けば目の前へ戻って来ていた。
目を見開いて驚く白昼は彼の動きに苦笑いしつつ「じゃあお言葉に甘えてお茶を淹れて貰おうかな」と根気負けし三成に手伝いを頼んだのだった。
「いやあ助かったよ。おかげでお客さん全員のお持てなしがしっかりと出来た」
「…大した事はしていない」
「そんな事はない。どんなに小さい事でも必要なら助けになってありがたいんだ」
お茶淹れから始まり茶菓子の用意や座布団の準備などじっとする暇も無い程の仕事を繰り返していれば一段落したのか額を腕で拭いながら白昼が声をかけてくる。
俯いて謙遜する三成に言葉通り感謝を伝え続けて繋げた。
「秀吉くんも半兵衛くんも三成くんみたいな人が居るから心強いんだろうなぁ」
「!!」
「だから晴雅の旦那さんとして選んでくれたんだと俺は思う」
妻と自分の旧友である秀吉と半兵衛の名を口にして感嘆の声を受ければ三成はバッと顔を上げて表情を一変させる。
「これからも晴雅の事をよろしくな三成くん」
「………無論だ」
将来には娘の夫となり義息となる彼へ少ししんみりとした様子ながら笑う白昼に三成は声に力を込めて義理の父親となりうる相手へ頷いた。
「ん…?三成、どうしたの…何かあった?」
「いや何もない。お前の父君から茶を受け取っただけだ」
昼寝から目を覚ました晴雅が開眼すると自分の髪を撫でる三成と至近距離で目が合った。
まだ身を横にしたまま問い掛けると即答で短く返されたのだった。
ーーー時が経ち数刻後。
「お風呂が沸いたみたいだから三成くん一番風呂どうぞ!」
「私は最後でいい」
「えーたまには一番で入りなよー。三成いつも最後じゃない」
「尚更だ。私よりも優先すべき者が居る」
久し振りに夫婦で拵えたと朔夜が上機嫌で語りまくり照れながらやんわりと静止する白昼やらで夕餉を済ませ、そのままの勢いで入浴を勧めてきた。
ところが勧められた当の本人は迷わず断りを入れるのですかさず晴雅が不満げに加わった。
しかし三成はやはりと言うべきか頑なに首を縦に振らず「三成の意地っ張り!」とポカポカ殴り出す娘を父親が止める。
「もう本当に頑固だね…仕方ないや。お父さんが一番風呂ね」
「えっ、俺が?」
「たぶんお父さんが一番に働いてるのを見てるから気を遣ってるんだと思う。そうでしょ三成?」
「………」
わざとらしく深い溜め息を吐いた晴雅が名指しとも言える呼び上げをし困惑する白昼を置いて聞いてみるが強面の顔色で沈黙したままだった。
「晴雅ーお風呂出たわよー。三成くんが遅くならない様に早く入っちゃいなさーい」
「はぁーい」
風呂の順番で軽い揉め事が起こりかけたがどうにか収まり朔夜も入浴を終えた様だ。
夕餉を終えて自室へ戻り翌日には迎えに来る秀吉と半兵衛達との約束の時間に備えて話し合いをしているさなか声が掛かった。
「じゃあ入ってくるねー」
「私の事は考えずに入ってこい」
「折角だし一緒に入る?」
「っ!!晴雅っ…!!!」
母親に言われた通り恋人の入浴が遅れない様、考えながら部屋から出かけるとその思考を読み取ったかの如く背中へ告げられた。
負けじとからかい気味に聞いてみれば赤面し言葉を詰める。
満足な反応で「冗談だよ冗談」と晴雅が笑い対する三成は「さっさと行け!!」と叫び返した。
「ふぃ〜さっぱりした〜。秀吉様のとこも広くて豪華なお風呂だけどうちもなかなかよねぇ」
数十分後、久々の実家での風呂を満喫し三成を呼びに行き交代で自室へ戻って来た。
「あっ神子さんからメールきてる。幸ちゃんの写真だかわいい!」
使用人達が夕餉中に敷いてくれていた二組の布団の内、一つに座ると携帯を手に取る。
畳んでたそれをパチリと開けば知り合いの神子からメールが届いており文章の他にも写真が付属されていた。
大谷宅で飼われている桜ブンチョウ・幸の写真を新たに送ってきてくれた様で晴雅は一人はしゃいでいた。
「へぇ夏野菜で天ぷら作ったんだ。いいなぁ刑部さん、神子さんお手製天ぷら食べ放題かぁ〜」
更には作りたてであろう野菜の天ぷらの写真まで載せられており羨ましさから何とも言えない気持ちになる。
するとそんなタイミングでちょうど新たなメールが届く。
「ん?噂をすれば刑部さんからもメールが。なになに…えぇ〜そんな時に金吾が来たの…」
いつか三成と一緒にお邪魔させて貰い食べてみたいと思考しながら確認すると…。
「これは相当怒ってるな…ここまで愚痴ってくるなんて珍しい」
どうやらとある人物が神子との夕餉中に来訪尚且つ、彼女手作りの天ぷらを分け与える羽目になったらしく大谷は不平不満の愚痴を長々と文章で示してきていた。
旧友の状態に物珍しさをかんじながら(今度会ったら分からせなきゃ…)と使命感を抱いた晴雅だった
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