月の雨
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「晴雅、様体はどうだ」
「秀吉様っ!!?」
「あれ、秀吉様…?もう帰って来たんですか」
程良い恋人の人肌から暖かさを享受していれば居候先の屋敷が見えてきた。
到着すると鞄は運転手の使用人が運んでくれ促されるがままに手洗いうがいを済ませ居室へ歩むとそこには屋敷の主である豊臣秀吉の姿が。
一番に驚愕の声を上げて表情も変える三成の隣で晴雅は驚きつつ疑問を口にした。
「使いの者からお前が帰参すると報知を受けた」
いつも団欒する中心部の円居にて腰を下ろしたまま腕も組んで理由を語り出す秀吉の話を要約するとこうだ。
屋敷の使用人が晴雅の迎えに出ると伝達され詳しく問えば体調も優れない様子だと三成経由で受けた為、本日の仕事を全て片付けると同時で退社してきたとの事。
無論、晴雅の事となると顔色が変貌する右腕兼親友の竹中半兵衛も直ぐ様に帰参しようと考えていたが後処理を引き受け一先ず秀吉を先に向かわせたとも。
「誠に申し訳ありません…!私が不見識な判断をしたばかりに、」
「構うな我に支障はない。お前には茶を汲んで貰いたい」
「…承知致しました」
己の膚浅が敬愛し崇拝する存在へ差し響いていた事実を知らされ三成が土下座をしかねない詫びと顔付きをするのでそれを制した秀吉から茶を淹れる様に下命され刹那で動き出した。
「すみません秀吉様。ご迷惑をお掛けした様で…」
「謝辞は求めていない。我よりも半兵衛に申し開きする気構えをしておけ」
「はい…」
脱兎如くこの場から姿を消した恋人の後ろ姿をチラッと見送くると残された晴雅は自分の所為で生まれた現状へ申し訳なさが募ってくる。
目線を落としながらも謝罪だけはどうにかしたい彼女が声と気力を振り絞って溢せば秀吉は間を空けずに即答えを返してきた。
更には未だ不在の半兵衛の名も出され諭されてしまうも素直に受け入れる。
「晴雅」
「はい秀吉様」
両者の口が閉ざされると沈黙が漂うものの再び秀吉が名を呼んでくるので晴雅は返事をして顔も上げた。
なんだろうとぼんやりする思考ながら前を見ると秀吉が腕を広げて何か待っている様な素振りが垣間見えた。
最初は躊躇してしまうが心底に深く沈んだ感情が大きくなって衝動も止まらなくなってゆく。
気が付けば体は勝手に動いて巨躯な体と胸元へ駆け寄って抱き付いていた。
「俺は生きている。今お前の目の前に居る」
「………」
「俺だけではない。半兵衛も息災に生きている」
「…はい」
ギュッと両手で己の胸元を握り顔も埋める晴雅へ秀吉は語り掛けながら剛腕で包み隠す様に優しく抱き締め返してやる。
「朔夜も白昼も、大谷も神子も居る。誰一人欠けてはいない。無論これからもだ」
「は、ぃ…」
「今この時世にお前が失うものは何一つない。例え脅威が現れ様とも俺が撃滅させる」
顔を埋めてしまっているが故に表情は読み取れない。
それでも涙声でなんとか返事は返ってくる。
「何よりお前には三成が居る。あいつならば一等でお前を守り切れる筈だ」
だが彼女がどんな心情を抱 き続け苛われていたのか悟っている秀吉は嗚咽を押し殺して身も震わす晴雅の背中を加減して叩いたり撫でてやっていた。
「秀吉様!!大変御待たせし、晴雅っ…!?」
すると漸く茶を汲んできた三成が光沢の走る漆塗りの丸盆に三つの湯呑みを載せて現れたが眼前で広がる情景へ驚愕する。
盆を直ぐさまテーブルへ置くと急ぎ崇拝する存在と恋人の傍に駆け付ける。
「秀吉様っ、晴雅は、」
「案ずるな。今は好きにさせてやってくれ」
「………承知致しました」
何があったのか事細かく知りたかったがその前に秀吉から諭され三成は彼の胸元から動かない晴雅を見つめたまま頷いた。
しばらく時が過ぎると秀吉自らが彼女を加減して引き離せば泣き疲れたのかそのまま寄りかかって大きな腕で抱えられる。
名を呼ばれる前に素早く近付けば躊躇なくこちらへ託され三成は恋人を抱きかかえた。
「晴雅の全てはお前に頼むぞ三成」
「御意」
頭上から告げられる言葉は最早天命と過言でなく心から魂から深く深く誓約する。
「………ぁ、三、成…?」
「………目が覚めたか」
眠りへと落ちていた意識が覚醒して瞼を上げれば視界は恋人の寝顔で埋め尽くされていた。
驚きは勿論あるのだがそれよりも先で口から漏れる名前。
それが耳へ届くと緩慢ながらうっすらと同じ様に目を開いた。
第一声から気分はどうだと問われ数時間前に所在していた大学の時と同じ受け答えをする。
その途中で何故に現在の部屋(晴雅の自室)へ居るのか尋ねてみると彼は秀吉から休ませる様、頼まれてここに連れてきたらしい。
身を横にしていた布団は使用人が敷いてくれていたとの事。
「ありがとう三成」
「私よりも秀吉様や半兵衛様へ謝意を示せ」
「うん。でも三成だって私の為に助けてくれたから」
現状への説明を聞いてまず浮かぶ感謝を伝えれば恋人は目を伏せて顔も逸らしながらぶっきらぼうに言い放った。
いつもと変わらない三成の様子でも自分の為に添い寝してくれていた事実で自然と口許が緩み心持ちが少し軽くなってゆく。
「三成」
「何だ」
ポツリと名を呼ばれた彼は逸らした顔をこちらに向き直して言葉の続きを待った。
「私ね今すっごく幸せなの」
唐突に語り出す晴雅へ一瞬ばかり不審感を抱くも彼女の表情は今日一番で明るく見えて気のせいかと思い口を挟まなかった。
「お母さんとお父さんが居てくれて、秀吉様も生きてくれてて半兵衛様も元気で、かすがちゃんみたいなお友達が出来て、刑部さんと神子さんにも会えて、また三成と一緒に成れたから」
今現在の利運について滞る事なく話し続ける彼女の顔は言葉通り満ち足りていた。
しかし「でもね」と繋がれた声色は普段と変わらないものの何か違和感を感じた。
「もしも『あの時』みたいにみんながいきなり居なくなったりしないか怖くて堪らない」
恋人の口から溢れた『あの時』と強調される言葉を聞き三成の顔と体が強張る。
「秀吉様も半兵衛様も刑部さんも神子ちゃんも、もう居なくなって欲しくない…」
ボロボロと涙が溢れ出して声も震えてちゃんと言葉を紡げなくなってしまう。
「お願い三成。私を一人にしないで置いて逝かないで」
己の胸元へ縋り付いて幼い子供の様に泣き続ける晴雅の頭部と背中へ三成は沈黙しながらも応えるが如く手や腕を回した。
「貴様を置いて逝くものか。それ以前に私を一人にしないと言い出したのは晴雅だろう」
ーーー『私は何があっても三成の味方だよ。例えこの世の全てが敵になっても。最後の最期まで三成を絶対に一人にさせない。約束する』ーーー
口振りも声も聞き慣れたもので「あの約束を亡失したとは言わせない」とも繋げられた恋人の言葉を耳にして脳裏で過 ぎる自分が遠い昔口にしたあのやり取り。
「私が死ぬ時は晴雅も共に死ぬ時だ。無論、貴様が死ぬならば私も死ぬ。『あの時』と変わらん類同だ」
頭部と背中に添われていた左右の両手が自分の頬を包むなり顔も上へと向かされれば三成は晴雅を逸らさず真っ直ぐに見据える。
未だ絶えない涙で濡れ様とも全く意に介さない。
己の胸中を全て言い切ると答えも待たずに顔が近付き口を塞がれた。
「んっ…み、つな、り…」
お互いの唇が重なり合った刹那から三成の舌が滑り込んできて晴雅の舌に絡まり合ってくる。
最初は気遣いを表しながらもやがて音が聞こえる程に唇も口内も吸われ舌は結び付いていると錯覚してしまいそうな位まで纏わり付く。
「ふ、はっ…は、みつなり」
「晴雅」
どちらかまたは両方かの唾液が彼女の口端から垂れて流れ落ち始める頃、やっと解放された。
呼吸を許された晴雅が肩で息をしながらも構わず三成は恋人を抱擁した。
「お前を害する存在が沸き出ても私が全て残らず残滅する。晴雅は私と共に在ればそれでいい。お前と廻 り合った時から私はその因縁尽 を宿して晴雅と生きてきた。今も昔も」
グッと加減なく力が込められてゆく腕から痛みも伴い始めるがそれを拒む事はなくその必要も存在しない。
恋人から伝わるぬくもりが暖かくて再び涙が滲み出すもどうにか「ありが、とう…三成、ありがとう」と礼を口にし続ける晴雅を三成は離さなかった。
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「秀吉様っ!!?」
「あれ、秀吉様…?もう帰って来たんですか」
程良い恋人の人肌から暖かさを享受していれば居候先の屋敷が見えてきた。
到着すると鞄は運転手の使用人が運んでくれ促されるがままに手洗いうがいを済ませ居室へ歩むとそこには屋敷の主である豊臣秀吉の姿が。
一番に驚愕の声を上げて表情も変える三成の隣で晴雅は驚きつつ疑問を口にした。
「使いの者からお前が帰参すると報知を受けた」
いつも団欒する中心部の円居にて腰を下ろしたまま腕も組んで理由を語り出す秀吉の話を要約するとこうだ。
屋敷の使用人が晴雅の迎えに出ると伝達され詳しく問えば体調も優れない様子だと三成経由で受けた為、本日の仕事を全て片付けると同時で退社してきたとの事。
無論、晴雅の事となると顔色が変貌する右腕兼親友の竹中半兵衛も直ぐ様に帰参しようと考えていたが後処理を引き受け一先ず秀吉を先に向かわせたとも。
「誠に申し訳ありません…!私が不見識な判断をしたばかりに、」
「構うな我に支障はない。お前には茶を汲んで貰いたい」
「…承知致しました」
己の膚浅が敬愛し崇拝する存在へ差し響いていた事実を知らされ三成が土下座をしかねない詫びと顔付きをするのでそれを制した秀吉から茶を淹れる様に下命され刹那で動き出した。
「すみません秀吉様。ご迷惑をお掛けした様で…」
「謝辞は求めていない。我よりも半兵衛に申し開きする気構えをしておけ」
「はい…」
脱兎如くこの場から姿を消した恋人の後ろ姿をチラッと見送くると残された晴雅は自分の所為で生まれた現状へ申し訳なさが募ってくる。
目線を落としながらも謝罪だけはどうにかしたい彼女が声と気力を振り絞って溢せば秀吉は間を空けずに即答えを返してきた。
更には未だ不在の半兵衛の名も出され諭されてしまうも素直に受け入れる。
「晴雅」
「はい秀吉様」
両者の口が閉ざされると沈黙が漂うものの再び秀吉が名を呼んでくるので晴雅は返事をして顔も上げた。
なんだろうとぼんやりする思考ながら前を見ると秀吉が腕を広げて何か待っている様な素振りが垣間見えた。
最初は躊躇してしまうが心底に深く沈んだ感情が大きくなって衝動も止まらなくなってゆく。
気が付けば体は勝手に動いて巨躯な体と胸元へ駆け寄って抱き付いていた。
「俺は生きている。今お前の目の前に居る」
「………」
「俺だけではない。半兵衛も息災に生きている」
「…はい」
ギュッと両手で己の胸元を握り顔も埋める晴雅へ秀吉は語り掛けながら剛腕で包み隠す様に優しく抱き締め返してやる。
「朔夜も白昼も、大谷も神子も居る。誰一人欠けてはいない。無論これからもだ」
「は、ぃ…」
「今この時世にお前が失うものは何一つない。例え脅威が現れ様とも俺が撃滅させる」
顔を埋めてしまっているが故に表情は読み取れない。
それでも涙声でなんとか返事は返ってくる。
「何よりお前には三成が居る。あいつならば一等でお前を守り切れる筈だ」
だが彼女がどんな心情を
「秀吉様!!大変御待たせし、晴雅っ…!?」
すると漸く茶を汲んできた三成が光沢の走る漆塗りの丸盆に三つの湯呑みを載せて現れたが眼前で広がる情景へ驚愕する。
盆を直ぐさまテーブルへ置くと急ぎ崇拝する存在と恋人の傍に駆け付ける。
「秀吉様っ、晴雅は、」
「案ずるな。今は好きにさせてやってくれ」
「………承知致しました」
何があったのか事細かく知りたかったがその前に秀吉から諭され三成は彼の胸元から動かない晴雅を見つめたまま頷いた。
しばらく時が過ぎると秀吉自らが彼女を加減して引き離せば泣き疲れたのかそのまま寄りかかって大きな腕で抱えられる。
名を呼ばれる前に素早く近付けば躊躇なくこちらへ託され三成は恋人を抱きかかえた。
「晴雅の全てはお前に頼むぞ三成」
「御意」
頭上から告げられる言葉は最早天命と過言でなく心から魂から深く深く誓約する。
「………ぁ、三、成…?」
「………目が覚めたか」
眠りへと落ちていた意識が覚醒して瞼を上げれば視界は恋人の寝顔で埋め尽くされていた。
驚きは勿論あるのだがそれよりも先で口から漏れる名前。
それが耳へ届くと緩慢ながらうっすらと同じ様に目を開いた。
第一声から気分はどうだと問われ数時間前に所在していた大学の時と同じ受け答えをする。
その途中で何故に現在の部屋(晴雅の自室)へ居るのか尋ねてみると彼は秀吉から休ませる様、頼まれてここに連れてきたらしい。
身を横にしていた布団は使用人が敷いてくれていたとの事。
「ありがとう三成」
「私よりも秀吉様や半兵衛様へ謝意を示せ」
「うん。でも三成だって私の為に助けてくれたから」
現状への説明を聞いてまず浮かぶ感謝を伝えれば恋人は目を伏せて顔も逸らしながらぶっきらぼうに言い放った。
いつもと変わらない三成の様子でも自分の為に添い寝してくれていた事実で自然と口許が緩み心持ちが少し軽くなってゆく。
「三成」
「何だ」
ポツリと名を呼ばれた彼は逸らした顔をこちらに向き直して言葉の続きを待った。
「私ね今すっごく幸せなの」
唐突に語り出す晴雅へ一瞬ばかり不審感を抱くも彼女の表情は今日一番で明るく見えて気のせいかと思い口を挟まなかった。
「お母さんとお父さんが居てくれて、秀吉様も生きてくれてて半兵衛様も元気で、かすがちゃんみたいなお友達が出来て、刑部さんと神子さんにも会えて、また三成と一緒に成れたから」
今現在の利運について滞る事なく話し続ける彼女の顔は言葉通り満ち足りていた。
しかし「でもね」と繋がれた声色は普段と変わらないものの何か違和感を感じた。
「もしも『あの時』みたいにみんながいきなり居なくなったりしないか怖くて堪らない」
恋人の口から溢れた『あの時』と強調される言葉を聞き三成の顔と体が強張る。
「秀吉様も半兵衛様も刑部さんも神子ちゃんも、もう居なくなって欲しくない…」
ボロボロと涙が溢れ出して声も震えてちゃんと言葉を紡げなくなってしまう。
「お願い三成。私を一人にしないで置いて逝かないで」
己の胸元へ縋り付いて幼い子供の様に泣き続ける晴雅の頭部と背中へ三成は沈黙しながらも応えるが如く手や腕を回した。
「貴様を置いて逝くものか。それ以前に私を一人にしないと言い出したのは晴雅だろう」
ーーー『私は何があっても三成の味方だよ。例えこの世の全てが敵になっても。最後の最期まで三成を絶対に一人にさせない。約束する』ーーー
口振りも声も聞き慣れたもので「あの約束を亡失したとは言わせない」とも繋げられた恋人の言葉を耳にして脳裏で
「私が死ぬ時は晴雅も共に死ぬ時だ。無論、貴様が死ぬならば私も死ぬ。『あの時』と変わらん類同だ」
頭部と背中に添われていた左右の両手が自分の頬を包むなり顔も上へと向かされれば三成は晴雅を逸らさず真っ直ぐに見据える。
未だ絶えない涙で濡れ様とも全く意に介さない。
己の胸中を全て言い切ると答えも待たずに顔が近付き口を塞がれた。
「んっ…み、つな、り…」
お互いの唇が重なり合った刹那から三成の舌が滑り込んできて晴雅の舌に絡まり合ってくる。
最初は気遣いを表しながらもやがて音が聞こえる程に唇も口内も吸われ舌は結び付いていると錯覚してしまいそうな位まで纏わり付く。
「ふ、はっ…は、みつなり」
「晴雅」
どちらかまたは両方かの唾液が彼女の口端から垂れて流れ落ち始める頃、やっと解放された。
呼吸を許された晴雅が肩で息をしながらも構わず三成は恋人を抱擁した。
「お前を害する存在が沸き出ても私が全て残らず残滅する。晴雅は私と共に在ればそれでいい。お前と
グッと加減なく力が込められてゆく腕から痛みも伴い始めるがそれを拒む事はなくその必要も存在しない。
恋人から伝わるぬくもりが暖かくて再び涙が滲み出すもどうにか「ありが、とう…三成、ありがとう」と礼を口にし続ける晴雅を三成は離さなかった。
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