前進と流れ弾
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「金吾。貴様はこの様な場で時を無駄にしてるのか」
「もっ、毛利様っ!!?」
「あら」
すると視界外から鋭く冷え切った声が聞こえてその発生主に刹那で気付いた小早川は表情を怯えへと一変させ逆に晴雅は全く変わらず平常だった。
「これはこれは茶道の名家として名だたる毛利元就さんじゃないですか」
「貴様の物知り顔は旧態依然のままだな」
「貴女もね」
現れたのは茶道会で名を知らぬ者が居たら無礼とも言える権貴な存在の毛利元就だった。
初対面ではないが親しい相手でもないので彼女は至って淡々と臆する事もなく対話する。
それが却って気に障ったのか刺し貫くかの如く見据えながら言い放ってくるので負けじと返した。
「私は貴方が刑部さんと神子ちゃん達にした事を忘れてない」
先程までに見せていた顔とはまるで違い人が変わった様な佇まいで睨み返しながら晴雅は毛利へ告げる。
「あの二人だけじゃない。三成にもまた危害を加える気が有るなら今度は私が引導を渡してあげるわ」
「月輪へ盲従しか出来ぬ貴様が我を下せるか」
「満月も三日月も魅力的なものよ。焼き尽くす事しか出来ない日輪に比べたらねぇ」
対峙する二人を小早川は交互に見ながらおろおろと静観するしかない。
「神子ちゃんに終わらされた事がまだ忘れられないの?」
「貴様も徳川へ厭悪 を燻らせているだろう」
「………!」
口振りや顔付きは穏やかそうに見えるが冷笑と同等な色を浮かべながら晴雅が言うと毛利も見逃さずにいた真誠を突かれ言葉が詰まる。
「…全く、嫌な所を暴いてくるじゃない。やっぱり苦手だわあなた」
「我からすれば佐伯の小娘と貴様は類同よ」
「あら神子ちゃんと一緒なら嬉しいから問題ないわよ」
正鵠 を得られた晴雅は苛立ちから頭を押さえるも懇意な存在を言及されれば多少ながら冷静さを取り戻せた。
「晴雅さん、も…毛利様…争うのはやめよう」
「金吾」
「もうあんな風に怖い思いをするのは僕だけじゃなくてみんなも嫌な筈だから…三成くんと晴雅さんも、刑部さんと神子さんもみんな一緒だよ…」
そのタイミングでとうとう小早川が二人の間へ割って入り気力と声を振り絞って出された言葉に晴雅は思わず見入った。
「金吾、貴様…我に反旗を上げる心肝か」
「ひぇぇ!違うんです逆らうつもりはないんですっ!!毛利様も同じだと思って…」
「……この我が貴様らと斉 しいだと?」
だがやはり相手だけに見下され問い詰められれば奮い立ったなけなしの胆力が消え失せかけるもどうにか言葉で表す。
だが毛利には忌諱にふれるものだったらしく今まで崩れなかった表情を変化させ眉を顰めつつ小早川へ詰め寄り出した。
「あらあら、やっと貴方の能面顔が外れそうになったわね」
「貴様…恰も良しに豊臣の子飼いで口を叩く」
「まあね。元から私の人生は豊臣家の為にある様なものだから」
だがすかさず庇い立てる様に晴雅が腕も広げながら間へ割入る。
邪魔立てを図る彼女へ焦燥の片鱗を表す毛利は後ろでビクつく小早川も一瞥すると纏う着物や踵を返して離れ去って行った。
「怖かったぁ…うぅ、晴雅さん…ありがとう」
「…お礼を言うべきなのは私の方かも知れないんだけども」
彼の姿が見えなくなるとその場で小早川がへたり込みつつ本日二度目の礼を言ってくるので晴雅が声量を縮めて呟く様に返した。
「私だけじゃあの能面顔を崩せなかった。それに関してお礼は言いたいわ、ありがとう」
「晴雅さんに言われた事がずっと頭にあったから、少しでも行動したかったんだ」
「昔に比べたら成長したわね。見直したわ金吾」
ほんの少しだけでも変わりつつある彼の様相へ微笑ましさも僅かに感じた。
「それじゃ私はいい加減帰らないと怒られ『晴雅ッ!!!』あっ」
「ひぇぇぇ三成くんがぁ!!」
気が付けば時がそれとなく過ぎてから自分の置かれた状況を思い出し鞄を肩に掛け直した刹那で聞き慣れた怒号が響いた。
周りの者達からぎょっとした顔で振り向かれながら三成が険しい顔付きで二人の元へと疾走しているではないか。
「ごめん三成お買い物は直ぐに終わったんだけど色々あって、」
「貴様はやはり己の立場を理解していない様だな!?そこに直れェ!!!」
「いや本当に今回はごめん。でもコレには訳が…うわぉ!すっごい着信履歴!」
どこか凶々しい覇気で一直線に駆け寄ると晴雅の両肩を鷲掴んで叫び出す恋人へ少し汗を流しながら弁解を始める。
周りからの視線を受けて気まずく思いつつどこから説明すべきかと携帯を取り出して開けば画面には着信履歴の通知が浮かびそこには十件以上にも及ぶ数字が表されていた。
眼前の三成は言うまでもなく秀吉と半兵衛達からも着信があり(鬼電やん…)と珍しく彼女が絶句していた。
「み、三成くん晴雅さんは悪くなくて僕が、」
「金吾貴様ァ!!佐伯の件から露聊 かも性懲り無くッ…!!」
「落ち着いて三成。金吾は少しだけど頑張って成長出来たのよ」
「っ!?何故貴様が肩を持つ晴雅!」
「私には出来なかった事を自分から実行したの。だから今回はそんなに責めないであげて」
自覚がある小早川がビクつきながら説明をしようにも彼が発言するだけで有無を言わさぬ強面と声色で叫び続ける為、ついに怯えて晴雅の背後辺りへ身を隠した。
事情を語りたい彼女が咎めれば初めて見た言動に驚愕し一瞬だけ困惑の表情となっていた。
「帰りが遅いから心配して迎えに来てくれたんでしょう?早く行こう」
「待てまだ話は、」
「説教なら後でちゃんと聞くから。これ以上、秀吉様と半兵衛様を待たせちゃったらまた電話がきちゃう」
「………」
こんな事態になってしまったのは自分が要因だと身に染みて自覚した晴雅はまだ納得がいかない三成の手を掴んで引き歩き始める。
再び声が響きそうだったものの恋人の顔色と言葉で思い留まりまだ震えたままな小早川を睨み付け漸く踵を返した。
「今日みたいな調子で修行頑張りなさいよ。やれば出来るんだから」
「う、うんっ…!僕、頑張ってみるよ」
去り際、そう言い残しながら軽く振り向いて手を一振りする晴雅の言葉へ僅かでも気力が湧いたのか頷いて返す小早川へ三成は再度驚きに包まれていた。
「三成」
「………何だ」
とっぷりと完全に日もくれて頭上の空には点々とした星が幾つか浮かび始めている。
帰路の途中で購入した品物を詰め込んだ鞄を取られ引いていた筈の手はいつの間にか握り締められながら晴雅が三成に先導されている。
ポツリと呟く様に呼ばれた彼は振り返りもせず歩みも止めずぶっきらぼうな反応を示した。
見慣れたそれに口許が少しばかり緩むも言葉を続けられなかった。
声色を変えて「何だ」と確認の如く問われるも「ごめん、何でもない」と答える晴雅へ違和感を感じた三成は屋敷に到着しても直ぐに入らないで踏み止まった。
「私に隠し事はするなと嘘も許さないと約諾した筈だ」
「でも…愚痴みたいになりそうだから…」
「いいからさっさと話せ」
真正面から向き合って問えば目を逸らし言い淀む様からもどかしさが生まれつい催促が強まってしまうものの恋人である彼女を案じての故だった。
それを言葉や態度でなくとも理解し察している晴雅は先程の出来事で心中に残る感情を顕露しそうになった。
「晴雅……?」
「ごめん、いつか…いつか絶対言うから、今だけはこのままにさせて」
「………好きにしろ」
だがどうしても口にする自信が持てなくて隠す様に三成の胸元へ顔を埋 めてしまう。
不意打ちで己へと身を委ねてきた晴雅に目を見開くが恋人の様態から無言で腕を伸ばし包み込む様に抱擁する。
「好きにしろと言ったが、お二人の御言葉へは摯実に向き合え。御心労を掛けさせるな」
「…うん」
「全て己だけで一手に担うな。私の存在を忘れるな」
「………うん」
後頭部に右手を添え左腕は彼女の背中へ回しギュッと力を込めてから三成が言葉を紡ぎ始めた。
それを聞き入れる晴雅は彼の胸元で顔を埋めている所為故にくぐもってしまうが呼応の返事を繰り返す。
心緒が落ち着いたらしく離れた彼女がぐいぐいと目を擦る一方で彼は頭に手を乗せるとそのまま気が済むまで髪を撫でていた。
結局、迎えに出た三成も予想より遅れて連れ帰って来た事で晴雅は二人揃って半兵衛からお叱りを受けるのであった。
更にはしばらくの買い出し禁止令が出され「ですよねー」と大人しく受け入れるしかなかった。
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「もっ、毛利様っ!!?」
「あら」
すると視界外から鋭く冷え切った声が聞こえてその発生主に刹那で気付いた小早川は表情を怯えへと一変させ逆に晴雅は全く変わらず平常だった。
「これはこれは茶道の名家として名だたる毛利元就さんじゃないですか」
「貴様の物知り顔は旧態依然のままだな」
「貴女もね」
現れたのは茶道会で名を知らぬ者が居たら無礼とも言える権貴な存在の毛利元就だった。
初対面ではないが親しい相手でもないので彼女は至って淡々と臆する事もなく対話する。
それが却って気に障ったのか刺し貫くかの如く見据えながら言い放ってくるので負けじと返した。
「私は貴方が刑部さんと神子ちゃん達にした事を忘れてない」
先程までに見せていた顔とはまるで違い人が変わった様な佇まいで睨み返しながら晴雅は毛利へ告げる。
「あの二人だけじゃない。三成にもまた危害を加える気が有るなら今度は私が引導を渡してあげるわ」
「月輪へ盲従しか出来ぬ貴様が我を下せるか」
「満月も三日月も魅力的なものよ。焼き尽くす事しか出来ない日輪に比べたらねぇ」
対峙する二人を小早川は交互に見ながらおろおろと静観するしかない。
「神子ちゃんに終わらされた事がまだ忘れられないの?」
「貴様も徳川へ
「………!」
口振りや顔付きは穏やかそうに見えるが冷笑と同等な色を浮かべながら晴雅が言うと毛利も見逃さずにいた真誠を突かれ言葉が詰まる。
「…全く、嫌な所を暴いてくるじゃない。やっぱり苦手だわあなた」
「我からすれば佐伯の小娘と貴様は類同よ」
「あら神子ちゃんと一緒なら嬉しいから問題ないわよ」
「晴雅さん、も…毛利様…争うのはやめよう」
「金吾」
「もうあんな風に怖い思いをするのは僕だけじゃなくてみんなも嫌な筈だから…三成くんと晴雅さんも、刑部さんと神子さんもみんな一緒だよ…」
そのタイミングでとうとう小早川が二人の間へ割って入り気力と声を振り絞って出された言葉に晴雅は思わず見入った。
「金吾、貴様…我に反旗を上げる心肝か」
「ひぇぇ!違うんです逆らうつもりはないんですっ!!毛利様も同じだと思って…」
「……この我が貴様らと
だがやはり相手だけに見下され問い詰められれば奮い立ったなけなしの胆力が消え失せかけるもどうにか言葉で表す。
だが毛利には忌諱にふれるものだったらしく今まで崩れなかった表情を変化させ眉を顰めつつ小早川へ詰め寄り出した。
「あらあら、やっと貴方の能面顔が外れそうになったわね」
「貴様…恰も良しに豊臣の子飼いで口を叩く」
「まあね。元から私の人生は豊臣家の為にある様なものだから」
だがすかさず庇い立てる様に晴雅が腕も広げながら間へ割入る。
邪魔立てを図る彼女へ焦燥の片鱗を表す毛利は後ろでビクつく小早川も一瞥すると纏う着物や踵を返して離れ去って行った。
「怖かったぁ…うぅ、晴雅さん…ありがとう」
「…お礼を言うべきなのは私の方かも知れないんだけども」
彼の姿が見えなくなるとその場で小早川がへたり込みつつ本日二度目の礼を言ってくるので晴雅が声量を縮めて呟く様に返した。
「私だけじゃあの能面顔を崩せなかった。それに関してお礼は言いたいわ、ありがとう」
「晴雅さんに言われた事がずっと頭にあったから、少しでも行動したかったんだ」
「昔に比べたら成長したわね。見直したわ金吾」
ほんの少しだけでも変わりつつある彼の様相へ微笑ましさも僅かに感じた。
「それじゃ私はいい加減帰らないと怒られ『晴雅ッ!!!』あっ」
「ひぇぇぇ三成くんがぁ!!」
気が付けば時がそれとなく過ぎてから自分の置かれた状況を思い出し鞄を肩に掛け直した刹那で聞き慣れた怒号が響いた。
周りの者達からぎょっとした顔で振り向かれながら三成が険しい顔付きで二人の元へと疾走しているではないか。
「ごめん三成お買い物は直ぐに終わったんだけど色々あって、」
「貴様はやはり己の立場を理解していない様だな!?そこに直れェ!!!」
「いや本当に今回はごめん。でもコレには訳が…うわぉ!すっごい着信履歴!」
どこか凶々しい覇気で一直線に駆け寄ると晴雅の両肩を鷲掴んで叫び出す恋人へ少し汗を流しながら弁解を始める。
周りからの視線を受けて気まずく思いつつどこから説明すべきかと携帯を取り出して開けば画面には着信履歴の通知が浮かびそこには十件以上にも及ぶ数字が表されていた。
眼前の三成は言うまでもなく秀吉と半兵衛達からも着信があり(鬼電やん…)と珍しく彼女が絶句していた。
「み、三成くん晴雅さんは悪くなくて僕が、」
「金吾貴様ァ!!佐伯の件から
「落ち着いて三成。金吾は少しだけど頑張って成長出来たのよ」
「っ!?何故貴様が肩を持つ晴雅!」
「私には出来なかった事を自分から実行したの。だから今回はそんなに責めないであげて」
自覚がある小早川がビクつきながら説明をしようにも彼が発言するだけで有無を言わさぬ強面と声色で叫び続ける為、ついに怯えて晴雅の背後辺りへ身を隠した。
事情を語りたい彼女が咎めれば初めて見た言動に驚愕し一瞬だけ困惑の表情となっていた。
「帰りが遅いから心配して迎えに来てくれたんでしょう?早く行こう」
「待てまだ話は、」
「説教なら後でちゃんと聞くから。これ以上、秀吉様と半兵衛様を待たせちゃったらまた電話がきちゃう」
「………」
こんな事態になってしまったのは自分が要因だと身に染みて自覚した晴雅はまだ納得がいかない三成の手を掴んで引き歩き始める。
再び声が響きそうだったものの恋人の顔色と言葉で思い留まりまだ震えたままな小早川を睨み付け漸く踵を返した。
「今日みたいな調子で修行頑張りなさいよ。やれば出来るんだから」
「う、うんっ…!僕、頑張ってみるよ」
去り際、そう言い残しながら軽く振り向いて手を一振りする晴雅の言葉へ僅かでも気力が湧いたのか頷いて返す小早川へ三成は再度驚きに包まれていた。
「三成」
「………何だ」
とっぷりと完全に日もくれて頭上の空には点々とした星が幾つか浮かび始めている。
帰路の途中で購入した品物を詰め込んだ鞄を取られ引いていた筈の手はいつの間にか握り締められながら晴雅が三成に先導されている。
ポツリと呟く様に呼ばれた彼は振り返りもせず歩みも止めずぶっきらぼうな反応を示した。
見慣れたそれに口許が少しばかり緩むも言葉を続けられなかった。
声色を変えて「何だ」と確認の如く問われるも「ごめん、何でもない」と答える晴雅へ違和感を感じた三成は屋敷に到着しても直ぐに入らないで踏み止まった。
「私に隠し事はするなと嘘も許さないと約諾した筈だ」
「でも…愚痴みたいになりそうだから…」
「いいからさっさと話せ」
真正面から向き合って問えば目を逸らし言い淀む様からもどかしさが生まれつい催促が強まってしまうものの恋人である彼女を案じての故だった。
それを言葉や態度でなくとも理解し察している晴雅は先程の出来事で心中に残る感情を顕露しそうになった。
「晴雅……?」
「ごめん、いつか…いつか絶対言うから、今だけはこのままにさせて」
「………好きにしろ」
だがどうしても口にする自信が持てなくて隠す様に三成の胸元へ顔を
不意打ちで己へと身を委ねてきた晴雅に目を見開くが恋人の様態から無言で腕を伸ばし包み込む様に抱擁する。
「好きにしろと言ったが、お二人の御言葉へは摯実に向き合え。御心労を掛けさせるな」
「…うん」
「全て己だけで一手に担うな。私の存在を忘れるな」
「………うん」
後頭部に右手を添え左腕は彼女の背中へ回しギュッと力を込めてから三成が言葉を紡ぎ始めた。
それを聞き入れる晴雅は彼の胸元で顔を埋めている所為故にくぐもってしまうが呼応の返事を繰り返す。
心緒が落ち着いたらしく離れた彼女がぐいぐいと目を擦る一方で彼は頭に手を乗せるとそのまま気が済むまで髪を撫でていた。
結局、迎えに出た三成も予想より遅れて連れ帰って来た事で晴雅は二人揃って半兵衛からお叱りを受けるのであった。
更にはしばらくの買い出し禁止令が出され「ですよねー」と大人しく受け入れるしかなかった。
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