夜桜
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「ごほっごほっ…!」
「全くもう…読書家なのは良い事だけど、夜更かしし過ぎて風邪をひくなんて感心できないな」
朗らかな天候な日。
本来ならばのんびりと散歩が出来る良い天候だ。
しかし晴雅が自分の不注意のせいで季節はずれの風邪をひいてしまったのだった。
外との接触を遮断する障子の有る部屋で晴雅は布団に潜り込み、横になっていた。
咳き込む晴雅へ看病に来た半兵衛は呆れた表情で言った。
「また大谷くんが貸してくれた本を読んでたんだってね?」
「あれは罠です!刑部さんが私を陥れる為のわn『それを罠と分かりながら夜更かししたのは、誰だろうね』……ごめんなさい」
言い訳まがいな発言を遮って半兵衛は晴雅を見下ろす。
見下ろされた晴雅はもう発言する力も失せ、大人しく謝った。
「やれやれ…お願いだから体を大事にしておくれ。僕や秀吉だけじゃなくて三成くんも心配するんだから」
「すみませんでした…以後気を付けますので今日の花見に『駄目に決まってるだろう』ですよねー」
本日は秀吉の提案で豊臣邸屋敷の庭で花見を行うのだが、晴雅は風邪でダウンしているので参加は出来ない。
最初は晴雅が臥してしまったので半兵衛が花見の中止を申し入れたが、晴雅本人は自分に気にせず行ってくれと言い出した。
故に花見は行われる予定だ。
だがしかし晴雅はせきが出ているが意外に元気で見張りが居なければ一人で動き回りそうである。
自分抜きで花見をしてくれと言ったものの、本心は参加したくて堪らない様だ
「半兵衛様、庭の準備が整いました」
「分かった。僕もそろそろ料理の準備に入るよ」
そこに障子を開いて現れたのは三成で、花見の会場となる庭での準備が終わった事を報告しに来た。
それに答えた半兵衛は花見に出す料理を作る為、三成に晴雅の看病を交代して貰った。
「貴様は何様で秀吉様や半兵衛様に看て貰っている」
「えーと…俺様?」
「よしそこに直れ。一から貴様の立場を教えてやる」
「冗談だよ!三成は本当に信じちゃうんだから…」
半兵衛に代わって晴雅の看病をする三成が詰問に似た問い掛けをして、遊び半分で返せばしばかれそうになった。
「熱は…有るのか?」
「んー…それ程ないんだよね。ただせきが多ごほっ」
「分かったから喋るな」
病状を聞く三成へせき込みながら答えれば額に手を添えられる。
「三成…優しいね、風邪だから?」
「………。さあな」
「三成、居るのか」
晴雅の体温に比べれば冷えた三成の手は、とても心地好いものだった。
そんなタイミングで秀吉が部屋に現れる。
「あ、秀吉様」
「秀吉様!如何なさいましたか!?」
「いや何もない。ただ晴雅の様子見とお前に頼みたい事が有るのでな」
「私に!?何なりと申されて下さいませ!」
「秀吉様気にせず話して下さい」
「…ああ」
己へ頼み事と聞いて土下座をした三成の代わりに晴雅が秀吉の話を聞き出した。
珍しく戸惑いぎみな秀吉はその内容を話し出す。
「つまり刑部さんと神子さんも花見に御呼びすると…」
「そうだ。故に呼び出しを三成に任せようと来た訳だが…」
「お任せ下され!!」
「…ちゃんと聞いてたのね」
晴雅だけが秀吉の話を聞いていたと思ったが、三成もちゃんと聞いていたらしい。
秀吉は三成が聞き入れた事を確認し、晴雅の頭を撫でてから部屋を後にした。
「…な訳だからちゃんと刑部さんに電話『私が秀吉様の御言葉を聞き逃すと思っているのか!?』……」
今日はやけに遮られると感じた晴雅だった
「良いか決して立ち上がる兆しを見せるな。少しでも見せたら斬『滅ですね分かります。良いから早く電話してあげて』」
大谷への電話をしようと部屋の外へ足を踏み出した三成は晴雅に対して脅し染みた注意を始め、今度は晴雅が遮って三成に促した。
促された三成は少し不機嫌そうな顔をしたが障子をちゃんと閉めて去って行った。
「……あーあ、また神子さんと会えない」
部屋で一人きりになってようやく晴雅は本音を呟き始めた。
「花見に参加出来ないのも悔しいけど…神子さんと話せないのも口惜しいし…」
枕に頭を深く沈めて、ポツリポツリと呟いてゆく。
「………寂しいなぁ」
そう言い残して晴雅は布団を全身に被って眠りについた。
「晴雅が心配なんだろう」
「………」
誘い電話をして数十分後。
大谷は妻の神子を連れて屋敷にやって来た。
そして半兵衛の作った弁当を出して花見を開始した。
和気あいあいとした中で三成は一人静まっていた。
それに気付いた神子が三成の体調を聞くと勘強い半兵衛が土産として受け取っていた蜜柑を手渡した
「なら行っておいで。あの子ももしかしたら寂しがっているかも知れない」
「………はい、ありがとうございます半兵衛様。秀吉様、御付き合い出来ず、大変申し訳ありません」
「気にするでない。我も晴雅が心配だ。行ってやれ」
「ありがとうございます…」
秀吉と半兵衛に詫びの土下座をして、三成は早足で晴雅の元へ向かう。
晴雅から何度も自分は大丈夫だから気にせず花見をしてくれと言われたが、晴雅が居なければ三成は花見を心から楽しめなかった。
尊敬する秀吉と半兵衛、唯一の親友である大谷も居てこれ以上の不満はないのだが、やはり晴雅が欠けていると落ち着けなかった。
それに晴雅本人は大丈夫だと言うが、本当は花見に参加出来なくて悔しく思っているに違いないし一人で部屋で安静にし、寂しがっているに違いない。
それを誰よりも分かる三成は晴雅の事を考えれば考える程、ますます晴雅が心配になってきた。
早足は駆け足に変わって三成は屋敷の長い廊下を走り出した。
「晴雅!!」
「ん…三成…?」
バンッと障子を左右全開にしてしまい尚且つ、大声で晴雅を呼んでしまった事を後悔するがもう取り返しはつかない。
「どうしたの三成。そんなに慌てて、しかも息が切れてる」
晴雅は特に怒っている様子もなく逆に急いで来た三成の心配をしていた
「それより三成は花見良いの?」
「…お前が居なければ花見なんぞ意味がない。それと刑部の女がこれを」
「何?わあ蜜柑だ!」
元から風邪は重くなかった事もあり、晴雅は上半身を起こしていた。
首を傾げながら三成に質問してみれば代わりに神子から貰った蜜柑を差し出された。
余り食事をしていなかった晴雅は蜜柑を見て食欲を刺激された様だ。
「待っていろ」
「うん」
蜜柑の皮をむいてから晴雅に渡そうと三成は一つ手にとって丁寧にむき始めた。
それを楽しそうに見つめながら晴雅は頷く。
「食えるか」
「うん食べれるよ。なんだか風邪の時は果物が食べたくなるんだよね」
「そうか。まだ食えるな」
「もちろん。あ、そうだ三成も食べなよ」
「だがこれは晴雅にと…」
「良いの!そう生真面目に言葉を受け取らなくても。それに私宛てで貰ったんだから、私が好きにしても構わないでしょ」
「…分かった」
晴雅の土産として受け取った蜜柑故に己は口に出来ないと思っていたが、晴雅が食えと言うならば拒絶も出来ない。
「美味しいね」
「ああ…」
蜜柑を好きなだけ食べた晴雅はまた横になり、その隣に三成は畳へ座り込む。
「そう言えば、昔もこうやって三成が看病してくれたね」
「……そうだったか」
「うん。風邪が移ったりするかも知れないのに、三成はわざわざ部屋の中に入って来て手拭いを代えてくれたり、部屋の換気をしてくれたり…お粥も持って来てくれたっけ」
「………」
懐かしむ様に笑いながら語る晴雅に三成はフッと笑って返してくれた。
「…良かったらお願い、聞いてくれる?」
「内容次第だがな」
「もちろん外に出してとか言わないよ。ただね…桜が見たいの」
「桜…?」
「そう桜。庭のほうの障子をさ開けて欲しいの。それなら寝ながらも花見が出来るでしょう?」
別の何かが食べたいなどと頼まれると思ったが、予想していたのと違って拍子抜けをした。
駄目?と上目遣いな晴雅の言葉に三成は不意討ちで赤面しながらも、立ち上がって歩み部屋と庭の間に位置する障子を開けた。
仕切りがなくなって庭に咲く桜が現れ、晴雅は嬉しそうにありがとうと言ってくれた。
それを聞いて三成はやっと花見が楽しいと実感出来た
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「全くもう…読書家なのは良い事だけど、夜更かしし過ぎて風邪をひくなんて感心できないな」
朗らかな天候な日。
本来ならばのんびりと散歩が出来る良い天候だ。
しかし晴雅が自分の不注意のせいで季節はずれの風邪をひいてしまったのだった。
外との接触を遮断する障子の有る部屋で晴雅は布団に潜り込み、横になっていた。
咳き込む晴雅へ看病に来た半兵衛は呆れた表情で言った。
「また大谷くんが貸してくれた本を読んでたんだってね?」
「あれは罠です!刑部さんが私を陥れる為のわn『それを罠と分かりながら夜更かししたのは、誰だろうね』……ごめんなさい」
言い訳まがいな発言を遮って半兵衛は晴雅を見下ろす。
見下ろされた晴雅はもう発言する力も失せ、大人しく謝った。
「やれやれ…お願いだから体を大事にしておくれ。僕や秀吉だけじゃなくて三成くんも心配するんだから」
「すみませんでした…以後気を付けますので今日の花見に『駄目に決まってるだろう』ですよねー」
本日は秀吉の提案で豊臣邸屋敷の庭で花見を行うのだが、晴雅は風邪でダウンしているので参加は出来ない。
最初は晴雅が臥してしまったので半兵衛が花見の中止を申し入れたが、晴雅本人は自分に気にせず行ってくれと言い出した。
故に花見は行われる予定だ。
だがしかし晴雅はせきが出ているが意外に元気で見張りが居なければ一人で動き回りそうである。
自分抜きで花見をしてくれと言ったものの、本心は参加したくて堪らない様だ
「半兵衛様、庭の準備が整いました」
「分かった。僕もそろそろ料理の準備に入るよ」
そこに障子を開いて現れたのは三成で、花見の会場となる庭での準備が終わった事を報告しに来た。
それに答えた半兵衛は花見に出す料理を作る為、三成に晴雅の看病を交代して貰った。
「貴様は何様で秀吉様や半兵衛様に看て貰っている」
「えーと…俺様?」
「よしそこに直れ。一から貴様の立場を教えてやる」
「冗談だよ!三成は本当に信じちゃうんだから…」
半兵衛に代わって晴雅の看病をする三成が詰問に似た問い掛けをして、遊び半分で返せばしばかれそうになった。
「熱は…有るのか?」
「んー…それ程ないんだよね。ただせきが多ごほっ」
「分かったから喋るな」
病状を聞く三成へせき込みながら答えれば額に手を添えられる。
「三成…優しいね、風邪だから?」
「………。さあな」
「三成、居るのか」
晴雅の体温に比べれば冷えた三成の手は、とても心地好いものだった。
そんなタイミングで秀吉が部屋に現れる。
「あ、秀吉様」
「秀吉様!如何なさいましたか!?」
「いや何もない。ただ晴雅の様子見とお前に頼みたい事が有るのでな」
「私に!?何なりと申されて下さいませ!」
「秀吉様気にせず話して下さい」
「…ああ」
己へ頼み事と聞いて土下座をした三成の代わりに晴雅が秀吉の話を聞き出した。
珍しく戸惑いぎみな秀吉はその内容を話し出す。
「つまり刑部さんと神子さんも花見に御呼びすると…」
「そうだ。故に呼び出しを三成に任せようと来た訳だが…」
「お任せ下され!!」
「…ちゃんと聞いてたのね」
晴雅だけが秀吉の話を聞いていたと思ったが、三成もちゃんと聞いていたらしい。
秀吉は三成が聞き入れた事を確認し、晴雅の頭を撫でてから部屋を後にした。
「…な訳だからちゃんと刑部さんに電話『私が秀吉様の御言葉を聞き逃すと思っているのか!?』……」
今日はやけに遮られると感じた晴雅だった
「良いか決して立ち上がる兆しを見せるな。少しでも見せたら斬『滅ですね分かります。良いから早く電話してあげて』」
大谷への電話をしようと部屋の外へ足を踏み出した三成は晴雅に対して脅し染みた注意を始め、今度は晴雅が遮って三成に促した。
促された三成は少し不機嫌そうな顔をしたが障子をちゃんと閉めて去って行った。
「……あーあ、また神子さんと会えない」
部屋で一人きりになってようやく晴雅は本音を呟き始めた。
「花見に参加出来ないのも悔しいけど…神子さんと話せないのも口惜しいし…」
枕に頭を深く沈めて、ポツリポツリと呟いてゆく。
「………寂しいなぁ」
そう言い残して晴雅は布団を全身に被って眠りについた。
「晴雅が心配なんだろう」
「………」
誘い電話をして数十分後。
大谷は妻の神子を連れて屋敷にやって来た。
そして半兵衛の作った弁当を出して花見を開始した。
和気あいあいとした中で三成は一人静まっていた。
それに気付いた神子が三成の体調を聞くと勘強い半兵衛が土産として受け取っていた蜜柑を手渡した
「なら行っておいで。あの子ももしかしたら寂しがっているかも知れない」
「………はい、ありがとうございます半兵衛様。秀吉様、御付き合い出来ず、大変申し訳ありません」
「気にするでない。我も晴雅が心配だ。行ってやれ」
「ありがとうございます…」
秀吉と半兵衛に詫びの土下座をして、三成は早足で晴雅の元へ向かう。
晴雅から何度も自分は大丈夫だから気にせず花見をしてくれと言われたが、晴雅が居なければ三成は花見を心から楽しめなかった。
尊敬する秀吉と半兵衛、唯一の親友である大谷も居てこれ以上の不満はないのだが、やはり晴雅が欠けていると落ち着けなかった。
それに晴雅本人は大丈夫だと言うが、本当は花見に参加出来なくて悔しく思っているに違いないし一人で部屋で安静にし、寂しがっているに違いない。
それを誰よりも分かる三成は晴雅の事を考えれば考える程、ますます晴雅が心配になってきた。
早足は駆け足に変わって三成は屋敷の長い廊下を走り出した。
「晴雅!!」
「ん…三成…?」
バンッと障子を左右全開にしてしまい尚且つ、大声で晴雅を呼んでしまった事を後悔するがもう取り返しはつかない。
「どうしたの三成。そんなに慌てて、しかも息が切れてる」
晴雅は特に怒っている様子もなく逆に急いで来た三成の心配をしていた
「それより三成は花見良いの?」
「…お前が居なければ花見なんぞ意味がない。それと刑部の女がこれを」
「何?わあ蜜柑だ!」
元から風邪は重くなかった事もあり、晴雅は上半身を起こしていた。
首を傾げながら三成に質問してみれば代わりに神子から貰った蜜柑を差し出された。
余り食事をしていなかった晴雅は蜜柑を見て食欲を刺激された様だ。
「待っていろ」
「うん」
蜜柑の皮をむいてから晴雅に渡そうと三成は一つ手にとって丁寧にむき始めた。
それを楽しそうに見つめながら晴雅は頷く。
「食えるか」
「うん食べれるよ。なんだか風邪の時は果物が食べたくなるんだよね」
「そうか。まだ食えるな」
「もちろん。あ、そうだ三成も食べなよ」
「だがこれは晴雅にと…」
「良いの!そう生真面目に言葉を受け取らなくても。それに私宛てで貰ったんだから、私が好きにしても構わないでしょ」
「…分かった」
晴雅の土産として受け取った蜜柑故に己は口に出来ないと思っていたが、晴雅が食えと言うならば拒絶も出来ない。
「美味しいね」
「ああ…」
蜜柑を好きなだけ食べた晴雅はまた横になり、その隣に三成は畳へ座り込む。
「そう言えば、昔もこうやって三成が看病してくれたね」
「……そうだったか」
「うん。風邪が移ったりするかも知れないのに、三成はわざわざ部屋の中に入って来て手拭いを代えてくれたり、部屋の換気をしてくれたり…お粥も持って来てくれたっけ」
「………」
懐かしむ様に笑いながら語る晴雅に三成はフッと笑って返してくれた。
「…良かったらお願い、聞いてくれる?」
「内容次第だがな」
「もちろん外に出してとか言わないよ。ただね…桜が見たいの」
「桜…?」
「そう桜。庭のほうの障子をさ開けて欲しいの。それなら寝ながらも花見が出来るでしょう?」
別の何かが食べたいなどと頼まれると思ったが、予想していたのと違って拍子抜けをした。
駄目?と上目遣いな晴雅の言葉に三成は不意討ちで赤面しながらも、立ち上がって歩み部屋と庭の間に位置する障子を開けた。
仕切りがなくなって庭に咲く桜が現れ、晴雅は嬉しそうにありがとうと言ってくれた。
それを聞いて三成はやっと花見が楽しいと実感出来た
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