文よりも確信的なもの
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豪勢で立派な屋敷から富豪として有名な豊臣邸。
その中にある自室で月夜野晴雅は荷物の入れ替えを繰り返していた。
「う〜ん…泊まると言っても一日だけだしそんな大きい荷物は持ってけないしな〜」
「晴雅、荷詰めは済んだか」
「あっ三成!」
コレは必要コレはいいかなとぶつぶつ繰り返し呟きながら集めた物を選択し鞄へ詰める作業をして早三十分。
部屋の扉が開き入室して来たのは同居人で恋人の石田三成。
彼の登場に晴雅は顔を上げて笑顔になる。
「着替えは大体済んだんだけど、他の細かい物が多くて。三成は?」
「私はもう済んだ。後はお前だけだ」
「おぉふ…早い。ごめんねなるべく早く終わらせるから」
「お前にはお前で必携な物があるだろう、気にするな」
何気なく聞いた答えは彼女を急がせるには充分でわたわたと止めていた手を動かし作業を再開する。
焦る晴雅に三成は苛立った様子も声色も見せずむしろ「手伝うか?」とまで自ら進んで手助けをしてくれようとした。
「ん〜そうだねー…じゃあこのびげつちゃんを、」
「それはやめろっ!!!」
「二人共、荷物作りは終わったのかい?」
恋人の気遣いに喜びでニコニコと笑顔が溢れて止まらない晴雅が定位置に置かれていた三日月型の白い模様があるクマのぬいぐるみを抱き寄せようとするので三成は即反応し妨害した。
それは二人の友人である大谷吉継とその妻の神子達と出掛けた際に三成が見つけ晴雅へプレゼントとして贈ったツキノワグマだった(持ち主の彼女はびげつちゃんと名付けて呼んでいる)
ぬいぐるみを取り上げ「ふざけていないでさっさとしろ!!」と叫ぶ三成に「びげつちゃんを返して〜」と悠長に懇願する晴雅達に声を聞きつけた竹中半兵衛が現れる。
「お母さんとお父さんに三成がくれたって見せたかったのに」
「見せなくていい!!」
「晴雅、見せたい気持ちは分かるけど普通に荷物になるからね。ほら僕も手伝ってあげるから早くしなさい」
残念がる彼女へ再び叱責の如く叫び続ける三成へ助け船として半兵衛が諭しまともな荷作りが始まった。
「それじゃあ行ってきます秀吉様、半兵衛様」
「うむ、朔夜と白昼に宜しく頼むぞ」
「気を付けて行ってきてね。三成くんが居るから大丈夫だと思うけど不審そうな奴が近付いてきたら顔を引っ叩いてやりなさい。それから、」
「間に合わなくなりそうなんで手短にお願いします半兵衛様」
慌ただしい荷詰めもしっかりと手助けして貰った結果なんとか終わらせ屋敷の主人である豊臣秀吉へ挨拶をし出発の時を迎えた。
隣の三成と同時に頭を下げる晴雅の手には自分の荷物の他に紙袋が一つあった。
彼女の両親へと送るものなのだが最初は手土産にしては豪華過ぎる事と秀吉、半兵衛それぞれで用意しようとした為それを止めようと説得するのはなかなかに骨が折れた。
何故か二人の味方に回る三成へ溜め息を吐きながら「あんまり多いとお使いさん達が居ても食べきれなくて、お母さんも怒りますよ」と晴雅が抗議すれば秀吉は納得出来そうにないものの彼女のある言葉が効いたのか渋々ながら妥協した。
半兵衛も同様に折れてくれたが三成だけは「何故に秀吉様と半兵衛様の御好意を頂かない!?」と修羅の様な顔付きで詰め寄ってくるので「お二方のお土産はお土産じゃないんだよ褒美なんだよ三成」と疲労した様子で返すしかなかった。
「晴雅!貴様は半兵衛様の憂慮を全て拝聴しない処か遮るのか!」
「しょうがないでしょう。そうしないと乗る予定の電車に遅れるんだから」
結局は目の前にあるにも関わらず「ちゃんとお土産は忘れずに持ってるのかい」とまで言い出す半兵衛へ頭を抱えたくなるのを抑えて恋人の手を引きながら強制的に行ってきますと出発した。
屋敷内から出て数歩進めばすかさず三成が再び突っかかってくるので晴雅はいつも通りの対応で流した。
己は真面目に話しているのにあっさりと躱す彼女へ不平不満をぶつけようとしたが今日は大事な用事がある日なので仕方なく一時取りやめて歩みを進める。
「三成?持ってくれるの」
「秀吉様と半兵衛様からお預かりした進物を取り落としたら話にならんからな」
「ふふっ…ありがとう」
「………フンッ」
ところが片手で持ち歩いていた土産入りの紙袋を三成が素早く掠め取り目をパチクリさせた。
思わず問い掛ければいつもの様に二人の名を出す彼へ素直じゃないなぁと内心で呟きつつ口許を緩ませながら礼を伝える。
晴雅から笑顔と共に受けた礼をぶっきらぼうなか顔を背ける三成だったがほんの僅かに白い頬が赤くなっていた。
「三成の荷物は少なく纏まってていいなー」
「先も言っただろう私とお前では必携に差があると。半兵衛様のご指導もあるが」
「半兵衛様の荷拵え技術、さまさまだものね」
話を振れば口数は少ないがちゃんと相槌を打ってくれる三成と共に晴雅は最寄り駅で電車へ乗車した。
乗り込む瞬間から空いていた席に並んで座るまで三成が滞る事なく誘導してくれた。
隙間無くお互いの体が密着しつつも座り直して距離を作る気も起きずそのまま会話を続行する。
荷作りをしているさなかで思っていた事を呟けば同じ内容ながら拾い答えて貰え晴雅はうんうんと頷いてなんだかんだ半兵衛へ感謝を口にした。
男女の差もあり量に違いが出るのは仕方ないのだが実際に半兵衛の手腕のおかげで二人の手荷物は最低限のもので済んでいた。
元々から私物が極端に少ない三成はむしろ何が入っているのか疑問になってしまいそうな程の大きさで、対する晴雅はそれこそ一般人が旅行で一泊するのに持ち得る平均的なものだった。
そこに晴雅の両親宛てで持たされた土産。
今現在で利用する移動手段には最適な形であった。
晴雅の両親が住む屋敷へは車を出して貰えばあっという間な距離に所在しているが、今回は突如として里帰りを思い付いた事と秀吉と半兵衛達の仕事に支障を来したくなかったので移動距離時間も大差ない電車を利用する事にしたのだ。
ただそれでも彼女が心配な二人(特に半兵衛)が泊まった翌日の帰還日はこちらから車を出して迎えに行くと頑なに譲らなかったので根気負けして了承した。
居候として世話になっている身としては何も言える立場ではないが少し過保護気味な秀吉と半兵衛についつい溜め息が出てしまいそうになる。
ふと前方から控えめな声が聞こえて顔を上げれば向かい側の席に座る女子学生と思わしき三人がこちらをチラチラと見ながら互いに囁き合っている。
何でだろうと考えかけるも一瞬でそれが消えた。
答えである自分の隣で座る三成へ目線を向ける。
自分達が通う婆娑羅大学でも容姿端麗・文部両道の三成は憧れと羨望の眼差しを向けられていた。
周りがライバルと称している同級生兼ねクラスメイトの徳川家康といい勝負が出来る位に。
やはり学外でもそうなるかと分かり切ってはいるが恋人の身として考えると誇らしい半面、少し不安が過ぎる。
三成の性格から彼との付き合いの長さから大丈夫だと確信はあるのだがやはりどうしても浮かんでしまう考え。
悩みの原因とも言える当人は一人考え込む晴雅の隣でいつもの生真面目で強面気味な顔付きを一切崩さず視線もずらさず一点だけを集中して目を向けていた。
「遅れなかったし人も程々で良かった」
「そうだな」
その後、電車に揺られて数十分。
席から立ち上がり出入り口へ向かう時でも降車する瞬間まで傍に着いて先導してくれる三成といつも通りに礼を言いながら後にした。
目的地の最寄駅に到着し降車して改札を通り駅から出ると太陽の日差しを受ける。
加えてその眩しさから手を使い目を庇いながら空を仰げば青空にポツポツと白い雲が浮かんでいた。
歩幅を合わせ並び歩き話をし道を進んでゆけば見慣れた屋敷が二人の前に現れた。
「みんなー早いけどまた帰って来たよ〜」
「お、お嬢様!」
「晴雅お嬢様!?おかえりなさいませ!!」
屋敷の入り口でしばし佇む三成を促して晴雅が声を張り上げながら帰宅を教えれば中庭で忙しそうに動きまわる使用人達が一斉に彼女を見る。
親しげに笑い「先月振り〜」と手を上げながら歩き始めた晴雅の後を三成が静かに着いてゆく。
彼の姿にも気付いた使用人達は彼女への挨拶と同様に作業中の手を止めてわざわざ頭を下げてきた。
「い、石田様もおかえりなさいませ!」
「今回はお嬢様とご一緒でしたのですね」
「……私に辞儀は必要無い。勤めに集中していろ」
「はっ、はい!失礼致しました…!」
自分に慌ただしく挨拶をする使用人に一目だけ視線を送り素っ気なく返すと詰まらせながらもしっかりと返答されたのでそれ以上は何も言わず晴雅に付き添って行った。
「俺、石田様とお会いしたのこれでやっと二回目だな…」
「まぁご婚約のご報告で晴雅お嬢様といらっしゃった時以来、来られてないからだけどまぁ…お元気そうで良かった」
二人が足並みを揃えて歩む後ろ姿を遠くから見守りながら会話を始める使用人達であった。
「あっ、お父さん」
「おっ晴雅じゃないか良く帰って来たな!!」
屋敷の玄関に辿り着き横開きの和風戸を開こうとしたらパチパチと何か音がするので二人揃って顔を向ければ縁側の庭で大きな松の木の葉を園芸鋏片手に剪定する男の背中があった。
誰だかそれだけでも察すると晴雅は挨拶よりも先に駆け寄って呼べば男が振り向き朗らかな笑顔で彼女を迎えた。
「刑部さんが奥さんの神子さん家へ里帰りしたって聞いてまた帰って来たくなっちゃった!」
「そうかそうか!お父さんとお母さんはいつでも大歓迎だぞ!」
勢いよく抱擁されてから持ち上げられはしゃぎながら語る晴雅に父親の月夜野白昼は豪胆に笑い更に更に娘を高く掲げた。
「おや、三成くんも来てくれたのか!いらっしゃい」
「………失礼させて頂く」
「もう三成ったらそんな緊張しなくていいのに」
そのまま何度か持ち上げながら回り出し親子揃って賑やかな声を放つ光景を三成が静観していると彼の存在に気付いた白昼は晴雅を抱えたまま笑顔で歓迎を示した。
間を空けてから視線も下に落ちかけていたが挨拶の言葉は欠かさず発言する。
ようやく父親の腕から下ろされながら晴雅は身振り手振りも混じえてやれやれと頭を振った
,
その中にある自室で月夜野晴雅は荷物の入れ替えを繰り返していた。
「う〜ん…泊まると言っても一日だけだしそんな大きい荷物は持ってけないしな〜」
「晴雅、荷詰めは済んだか」
「あっ三成!」
コレは必要コレはいいかなとぶつぶつ繰り返し呟きながら集めた物を選択し鞄へ詰める作業をして早三十分。
部屋の扉が開き入室して来たのは同居人で恋人の石田三成。
彼の登場に晴雅は顔を上げて笑顔になる。
「着替えは大体済んだんだけど、他の細かい物が多くて。三成は?」
「私はもう済んだ。後はお前だけだ」
「おぉふ…早い。ごめんねなるべく早く終わらせるから」
「お前にはお前で必携な物があるだろう、気にするな」
何気なく聞いた答えは彼女を急がせるには充分でわたわたと止めていた手を動かし作業を再開する。
焦る晴雅に三成は苛立った様子も声色も見せずむしろ「手伝うか?」とまで自ら進んで手助けをしてくれようとした。
「ん〜そうだねー…じゃあこのびげつちゃんを、」
「それはやめろっ!!!」
「二人共、荷物作りは終わったのかい?」
恋人の気遣いに喜びでニコニコと笑顔が溢れて止まらない晴雅が定位置に置かれていた三日月型の白い模様があるクマのぬいぐるみを抱き寄せようとするので三成は即反応し妨害した。
それは二人の友人である大谷吉継とその妻の神子達と出掛けた際に三成が見つけ晴雅へプレゼントとして贈ったツキノワグマだった(持ち主の彼女はびげつちゃんと名付けて呼んでいる)
ぬいぐるみを取り上げ「ふざけていないでさっさとしろ!!」と叫ぶ三成に「びげつちゃんを返して〜」と悠長に懇願する晴雅達に声を聞きつけた竹中半兵衛が現れる。
「お母さんとお父さんに三成がくれたって見せたかったのに」
「見せなくていい!!」
「晴雅、見せたい気持ちは分かるけど普通に荷物になるからね。ほら僕も手伝ってあげるから早くしなさい」
残念がる彼女へ再び叱責の如く叫び続ける三成へ助け船として半兵衛が諭しまともな荷作りが始まった。
「それじゃあ行ってきます秀吉様、半兵衛様」
「うむ、朔夜と白昼に宜しく頼むぞ」
「気を付けて行ってきてね。三成くんが居るから大丈夫だと思うけど不審そうな奴が近付いてきたら顔を引っ叩いてやりなさい。それから、」
「間に合わなくなりそうなんで手短にお願いします半兵衛様」
慌ただしい荷詰めもしっかりと手助けして貰った結果なんとか終わらせ屋敷の主人である豊臣秀吉へ挨拶をし出発の時を迎えた。
隣の三成と同時に頭を下げる晴雅の手には自分の荷物の他に紙袋が一つあった。
彼女の両親へと送るものなのだが最初は手土産にしては豪華過ぎる事と秀吉、半兵衛それぞれで用意しようとした為それを止めようと説得するのはなかなかに骨が折れた。
何故か二人の味方に回る三成へ溜め息を吐きながら「あんまり多いとお使いさん達が居ても食べきれなくて、お母さんも怒りますよ」と晴雅が抗議すれば秀吉は納得出来そうにないものの彼女のある言葉が効いたのか渋々ながら妥協した。
半兵衛も同様に折れてくれたが三成だけは「何故に秀吉様と半兵衛様の御好意を頂かない!?」と修羅の様な顔付きで詰め寄ってくるので「お二方のお土産はお土産じゃないんだよ褒美なんだよ三成」と疲労した様子で返すしかなかった。
「晴雅!貴様は半兵衛様の憂慮を全て拝聴しない処か遮るのか!」
「しょうがないでしょう。そうしないと乗る予定の電車に遅れるんだから」
結局は目の前にあるにも関わらず「ちゃんとお土産は忘れずに持ってるのかい」とまで言い出す半兵衛へ頭を抱えたくなるのを抑えて恋人の手を引きながら強制的に行ってきますと出発した。
屋敷内から出て数歩進めばすかさず三成が再び突っかかってくるので晴雅はいつも通りの対応で流した。
己は真面目に話しているのにあっさりと躱す彼女へ不平不満をぶつけようとしたが今日は大事な用事がある日なので仕方なく一時取りやめて歩みを進める。
「三成?持ってくれるの」
「秀吉様と半兵衛様からお預かりした進物を取り落としたら話にならんからな」
「ふふっ…ありがとう」
「………フンッ」
ところが片手で持ち歩いていた土産入りの紙袋を三成が素早く掠め取り目をパチクリさせた。
思わず問い掛ければいつもの様に二人の名を出す彼へ素直じゃないなぁと内心で呟きつつ口許を緩ませながら礼を伝える。
晴雅から笑顔と共に受けた礼をぶっきらぼうなか顔を背ける三成だったがほんの僅かに白い頬が赤くなっていた。
「三成の荷物は少なく纏まってていいなー」
「先も言っただろう私とお前では必携に差があると。半兵衛様のご指導もあるが」
「半兵衛様の荷拵え技術、さまさまだものね」
話を振れば口数は少ないがちゃんと相槌を打ってくれる三成と共に晴雅は最寄り駅で電車へ乗車した。
乗り込む瞬間から空いていた席に並んで座るまで三成が滞る事なく誘導してくれた。
隙間無くお互いの体が密着しつつも座り直して距離を作る気も起きずそのまま会話を続行する。
荷作りをしているさなかで思っていた事を呟けば同じ内容ながら拾い答えて貰え晴雅はうんうんと頷いてなんだかんだ半兵衛へ感謝を口にした。
男女の差もあり量に違いが出るのは仕方ないのだが実際に半兵衛の手腕のおかげで二人の手荷物は最低限のもので済んでいた。
元々から私物が極端に少ない三成はむしろ何が入っているのか疑問になってしまいそうな程の大きさで、対する晴雅はそれこそ一般人が旅行で一泊するのに持ち得る平均的なものだった。
そこに晴雅の両親宛てで持たされた土産。
今現在で利用する移動手段には最適な形であった。
晴雅の両親が住む屋敷へは車を出して貰えばあっという間な距離に所在しているが、今回は突如として里帰りを思い付いた事と秀吉と半兵衛達の仕事に支障を来したくなかったので移動距離時間も大差ない電車を利用する事にしたのだ。
ただそれでも彼女が心配な二人(特に半兵衛)が泊まった翌日の帰還日はこちらから車を出して迎えに行くと頑なに譲らなかったので根気負けして了承した。
居候として世話になっている身としては何も言える立場ではないが少し過保護気味な秀吉と半兵衛についつい溜め息が出てしまいそうになる。
ふと前方から控えめな声が聞こえて顔を上げれば向かい側の席に座る女子学生と思わしき三人がこちらをチラチラと見ながら互いに囁き合っている。
何でだろうと考えかけるも一瞬でそれが消えた。
答えである自分の隣で座る三成へ目線を向ける。
自分達が通う婆娑羅大学でも容姿端麗・文部両道の三成は憧れと羨望の眼差しを向けられていた。
周りがライバルと称している同級生兼ねクラスメイトの徳川家康といい勝負が出来る位に。
やはり学外でもそうなるかと分かり切ってはいるが恋人の身として考えると誇らしい半面、少し不安が過ぎる。
三成の性格から彼との付き合いの長さから大丈夫だと確信はあるのだがやはりどうしても浮かんでしまう考え。
悩みの原因とも言える当人は一人考え込む晴雅の隣でいつもの生真面目で強面気味な顔付きを一切崩さず視線もずらさず一点だけを集中して目を向けていた。
「遅れなかったし人も程々で良かった」
「そうだな」
その後、電車に揺られて数十分。
席から立ち上がり出入り口へ向かう時でも降車する瞬間まで傍に着いて先導してくれる三成といつも通りに礼を言いながら後にした。
目的地の最寄駅に到着し降車して改札を通り駅から出ると太陽の日差しを受ける。
加えてその眩しさから手を使い目を庇いながら空を仰げば青空にポツポツと白い雲が浮かんでいた。
歩幅を合わせ並び歩き話をし道を進んでゆけば見慣れた屋敷が二人の前に現れた。
「みんなー早いけどまた帰って来たよ〜」
「お、お嬢様!」
「晴雅お嬢様!?おかえりなさいませ!!」
屋敷の入り口でしばし佇む三成を促して晴雅が声を張り上げながら帰宅を教えれば中庭で忙しそうに動きまわる使用人達が一斉に彼女を見る。
親しげに笑い「先月振り〜」と手を上げながら歩き始めた晴雅の後を三成が静かに着いてゆく。
彼の姿にも気付いた使用人達は彼女への挨拶と同様に作業中の手を止めてわざわざ頭を下げてきた。
「い、石田様もおかえりなさいませ!」
「今回はお嬢様とご一緒でしたのですね」
「……私に辞儀は必要無い。勤めに集中していろ」
「はっ、はい!失礼致しました…!」
自分に慌ただしく挨拶をする使用人に一目だけ視線を送り素っ気なく返すと詰まらせながらもしっかりと返答されたのでそれ以上は何も言わず晴雅に付き添って行った。
「俺、石田様とお会いしたのこれでやっと二回目だな…」
「まぁご婚約のご報告で晴雅お嬢様といらっしゃった時以来、来られてないからだけどまぁ…お元気そうで良かった」
二人が足並みを揃えて歩む後ろ姿を遠くから見守りながら会話を始める使用人達であった。
「あっ、お父さん」
「おっ晴雅じゃないか良く帰って来たな!!」
屋敷の玄関に辿り着き横開きの和風戸を開こうとしたらパチパチと何か音がするので二人揃って顔を向ければ縁側の庭で大きな松の木の葉を園芸鋏片手に剪定する男の背中があった。
誰だかそれだけでも察すると晴雅は挨拶よりも先に駆け寄って呼べば男が振り向き朗らかな笑顔で彼女を迎えた。
「刑部さんが奥さんの神子さん家へ里帰りしたって聞いてまた帰って来たくなっちゃった!」
「そうかそうか!お父さんとお母さんはいつでも大歓迎だぞ!」
勢いよく抱擁されてから持ち上げられはしゃぎながら語る晴雅に父親の月夜野白昼は豪胆に笑い更に更に娘を高く掲げた。
「おや、三成くんも来てくれたのか!いらっしゃい」
「………失礼させて頂く」
「もう三成ったらそんな緊張しなくていいのに」
そのまま何度か持ち上げながら回り出し親子揃って賑やかな声を放つ光景を三成が静観していると彼の存在に気付いた白昼は晴雅を抱えたまま笑顔で歓迎を示した。
間を空けてから視線も下に落ちかけていたが挨拶の言葉は欠かさず発言する。
ようやく父親の腕から下ろされながら晴雅は身振り手振りも混じえてやれやれと頭を振った
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