夜の秋
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「まあ奥 さんが安穏でヨカじゃ。ほれ預 かっしたもん」
「あっ、さっき買った本。ありがとうございます。コレは私が持ちますね」
「ぬしのソレはどうする」
「私のは全部鞄に仕舞えるので大丈夫です」
なお本日の島津はと言うとこの催物にて剣道の体験イベントとやらで呼ばれたらしく休憩へ入って歩き回っていたら一人妻を待つ大谷を見掛けて話し掛けたのだと説明された。
ある程度は会話を交わしていたのだが予想よりも神子が遅いので探しにゆこうと立ちあがればここへ到着して最初で購買した二冊の書を代わりに携行して捜索の手伝いを申し出てきた。
故に島津が二人の元へ駆け付けた時には書が入れられた袋を持っていたのだ。
「若いもんに相手 しとるのもよかが、子供 も活気の塊 でたのしんのよ」と言葉通り至極楽しげに笑い話す。
そんな彼の姿も生き生きとしていて古老ながらまだまだ現役を貫けてしまえそうでなんだか元気が貰えた神子も笑んで「今度お酒を送らせて頂きますね」と相槌を打ち「そやもたのしんね!」と上がった豪快な笑い声は催事場全てへ響き渡りそうだった。
「……あの、大谷さん」
「………如何した」
(やっぱり怒ってる…)
杖を着きつつ歩む大谷とそれに付き添って同じ足取りを意識する神子達が滞りなく帰路へ向かえる様、島津が出入り口まで先導し案内してくれた。
雑踏の中を円滑に進み別れ際でまた挨拶をしてその場から離れる。
まだまだ隆盛な催事場からある程度距離を置いた処で不意に右手を掴まれグイッと引かれれば包帯を巻いた左手に包まれてそのまま握り締められている事へ気付いた。
夫がこの様に何の脈絡も無くふれ合ってくるのはもう慣れているがいつも夫婦関係を契る前の恋人同士であった心緒を思い出し頬や耳が熱くなりそうだった。
只、自分の手を引く大谷の纏う雰囲気が他出時よりも異なっており困惑するも心当たりがありまくりな神子はおずおずと名を呼んでみれば明らかに声色が違った。
「すみませんでした…長々とお待たせさせてしまって…」
「……待ち惚けは慣れておるがぬしの人の好さにほとほと呆れるわ」
「返す言葉もないです…」
目線も落として俯き気味で詫びる妻に視線は帰路の先へ固定したままどこか拗ねた様な口振りで返してくる。
その言葉で改めて自分がやらかした出来事とそれを起こさない様に心掛ける事を条件で本日の他出へ同行してくれたのに大谷を落胆させてしまった罪悪感がじわじわと大きくなる。
今まさに現在地の閑静な住宅街を表すかの如く沈黙し屋敷に帰宅するまでそのままだった。
「神子」
「はい…」
私宅に到着して他出からの身支度を整えると購買してきた代物を観覧する事もなく「お茶をお持ちします」と台所へ向かおうとするのですかさず呼び止めた。
返事をしながら振り向く神子を居間の畳で座り込む大谷が手招きをしているので疑問から少し考え込むも素直に従い歩み寄った。
目の前へ座れとも告げられたので正座ながら座り込む。
「衷心はぬしに解すまで説論したい所だがソレは後回しとする」
赤い羽織りの袖口から白く映える包帯に包まれた両腕を組みながら大谷が語り出すので神子は黙って聞き入っている。
しばしお互いの口が閉じられたので沈黙が流れるものの夫の溢された嘆息に破られた。
もう何度も聞いた事があるそれは自分の所為で起こる故に益々心苦しくなる。
しかしそんな心境の最中 、徐に大谷が己の懐を探り始めた。
すっと神子の眼前に差し出された物は手の平で収まる程の大きさをした紙袋。
おずおずと目線を上げてそれを捉えた彼女にはどこか見覚えがあった。
「大谷さんコレって…」
「開けてみよ」
詳細が求められる前に夫から開封の催促をされたのでゆっくりと開いてみる。
「あっ…!燕の人形!!」
袋から姿を現したのは藍黒色の背に赤い額と喉、白い腹で特徴的な深い二又の尾した鳥。
神子が野鳥の中で一番に好んでいる燕の人形だった。
「そう言えばあの時に燕があるか聞いてた所だった…声を掛けられて忘れちゃってたんだ」
「ぬしならばやらかしかねんと踏んでおったが推断通りよなァ」
「私の事は大谷さんには全部筒抜けなんですね…」
一体いつあの小店へ足を運んでいたか問えばお互い別行動を始めてからある程度の間や距離を空けて保ちながら妻の後を着いていたらしい。
「尾行してたって事ですか!?」
「人聞きの悪い言い方を申すな」
自分の跡を付けられ行動も見られていた事実に気付き唖然とする神子に眉を顰めて大谷が反論してきた。
真っ直ぐに目当ての店へ向かうなら引きかえして大人しく待つつもりであったが途中で他へ興味を示して動かなかった為、そのまま後ろ姿を横目で眺めながら素通りしたとの事。
偶然立ち寄った小店のブレスレットへ意識が固定されてしまい人も多かったとは言え夫の気配を全く勘付けなかった神子は頭を抱えたくなった。
後は一足先に店へ着くなり例の人形を探し見当たらないので店主に聞けば直ぐ様対応してくれたそうだ。
「そうだったんですか。全く気が付けませんでした」
「ぬしに勘付かれる危惧はなかったが陰乍 らでなければ身動ぎすら不許可されそうだった故」
「流石にそこまでは…でも、心配ですから思わずそうしてしまいそうですね」
自分に気付かれない様、気配を消して行動していた大谷の隠密さに圧倒されかけるがもしも見破っていた場合は動かないで貰う工夫をするだろうと一人納得していれば頬を小突かれた。
「我なりに綿密な訓戒をしたのだが、まさかそれでも自ら首を締めるとは思わなんだ」
「耳が痛いです…」
「……まァ此度は足を運んだ意味もあった」
共に出歩く条件としてお人好しな行動は出来るだけ控えるのだと告げられていた筈なのに相変わらずな繰り返しで一番に求めていただろう物を取り損ねる所だった。
軽はずみな動きばかりをしてしまう自分が情けなくて恥ずかしくて折角上がった気持ちが下がりかけてしまうものの繋げられた夫の言葉で中断される。
「のべつ幕なしに繰り出すのは好まぬがぬしと暇潰しになれば悪くない」
「!本当ですかっ」
顎に指を添えて目を逸らしながらも好意的な発言が返されて妻の表情はパッと変わる。
「でしたらまたの機会がありましたらご一緒にお出掛けしましょう!」
「……気が向いたらの話よ」
「それでもいいんです!大谷さんと出られれば私は嬉しいですから!」
声色が一気に晴れ晴れとして語り出す姿へ視線は戻さず答えても言葉通り歓喜の様相を示していた。
「私の為にわざわざありがとうございます大谷さん。本当に心から嬉しくてとっても幸せです」
己ですらつい意識が外れていた所為で神子に抱き付かれてから漸く現状へ気付いた。
羽織りを纏う背中へ両腕を回してギュッと力も込めてくる神子の抱擁に呆れが生まれるが拒絶する気も考えも浮かばない大谷はされるがままとなっていた。
ーーー『しっかりと伝わっていますよ。貴方様の暖かみも鼓動も。私と一緒です、同じ人です』ーーー
妻の抱擁で感じる腕の加減された力や程良い体温に包まれていれば脳裏で甦る情景や声と言葉。
思わず懐かしさから目を細めると大谷は無言で神子へ包帯で巻かれた腕を回し返す。
誰にも邪魔されない場所の事もあり夫婦二人の抱擁はそう簡単に終わらなかった。
屋敷の明かりが消し去られて暗闇に包まれた一室。
夜半が故に午刻の活気づいた情緒とは逆しまの中で唯一聞こえる規則的な寝息。
普段の外出に比べ動き回った事や心跳な事象を過ごしたのもあり寝伏が為、布団へ身を横にするなり就寝してしまった妻。
同じ様に並列させた布団で就床していた大谷だったが伏せていた瞼を上げ隣へ目だけ向ける。
しばらくそのまま胸を上下させて寝息が繰り返し立てられる様を傍観していたものの音も出さずに起き上がれば妻の元へ近付いた。
決して覚醒させぬが為細心の注意を払い覆い被さる様に向き合い見下ろした。
少しばかり安らかな顔で寝入っている神子の頬を撫でると胸元辺りの服をはだけさせる。
隠されていた前胸部が露わになるも意識はそちらでなく首に浮かぶ赤みがかった点へ注がれていた。
包帯を巻く人差し指の先でふれ数度ばかり撫でてみたがふつふつと湧き上がってくる感情。
不意打ちで受けた妻からの抱擁の際で気付いたが彼女の首には虫が食った痕があったのだ。
どんな虫なのか推測しようも興味が一切湧かずただ神子へ己以外の存在が痕を残した事実が現実が許せなかった。
力加減はしながらも歯を立てて食らい付き型を重ねて上書きする。
加減しながらも刺激が生じたのか僅かに声を漏らして身動ぎするも目は覚まさなかった。
落ち着いた動きや心中で顔を離せば己の歯型で最初にあった点がかき消されていた。
ーーー『印め印め、見るたび我を思い出せ』ーーー
声で形成されなくとも口が勝手に動き己から漏れ出そうになる言葉。
無意識で神子の天突へ手が置かれており力を込めそうになっていたが瞬時に引いて己を制する。
今の現状へソレは必携でないと言い聞かせはだけさせた胸元を元に戻すと大谷は神子の唇へ己のものを重ねてからやっと寝入った。
翌朝、身を起こそうにも動けない神子が自分へ身を寄せて腕も回し拘束したまま目を閉じている大谷の姿に驚愕するしかなかった
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「あっ、さっき買った本。ありがとうございます。コレは私が持ちますね」
「ぬしのソレはどうする」
「私のは全部鞄に仕舞えるので大丈夫です」
なお本日の島津はと言うとこの催物にて剣道の体験イベントとやらで呼ばれたらしく休憩へ入って歩き回っていたら一人妻を待つ大谷を見掛けて話し掛けたのだと説明された。
ある程度は会話を交わしていたのだが予想よりも神子が遅いので探しにゆこうと立ちあがればここへ到着して最初で購買した二冊の書を代わりに携行して捜索の手伝いを申し出てきた。
故に島津が二人の元へ駆け付けた時には書が入れられた袋を持っていたのだ。
「若いもんに
そんな彼の姿も生き生きとしていて古老ながらまだまだ現役を貫けてしまえそうでなんだか元気が貰えた神子も笑んで「今度お酒を送らせて頂きますね」と相槌を打ち「そやもたのしんね!」と上がった豪快な笑い声は催事場全てへ響き渡りそうだった。
「……あの、大谷さん」
「………如何した」
(やっぱり怒ってる…)
杖を着きつつ歩む大谷とそれに付き添って同じ足取りを意識する神子達が滞りなく帰路へ向かえる様、島津が出入り口まで先導し案内してくれた。
雑踏の中を円滑に進み別れ際でまた挨拶をしてその場から離れる。
まだまだ隆盛な催事場からある程度距離を置いた処で不意に右手を掴まれグイッと引かれれば包帯を巻いた左手に包まれてそのまま握り締められている事へ気付いた。
夫がこの様に何の脈絡も無くふれ合ってくるのはもう慣れているがいつも夫婦関係を契る前の恋人同士であった心緒を思い出し頬や耳が熱くなりそうだった。
只、自分の手を引く大谷の纏う雰囲気が他出時よりも異なっており困惑するも心当たりがありまくりな神子はおずおずと名を呼んでみれば明らかに声色が違った。
「すみませんでした…長々とお待たせさせてしまって…」
「……待ち惚けは慣れておるがぬしの人の好さにほとほと呆れるわ」
「返す言葉もないです…」
目線も落として俯き気味で詫びる妻に視線は帰路の先へ固定したままどこか拗ねた様な口振りで返してくる。
その言葉で改めて自分がやらかした出来事とそれを起こさない様に心掛ける事を条件で本日の他出へ同行してくれたのに大谷を落胆させてしまった罪悪感がじわじわと大きくなる。
今まさに現在地の閑静な住宅街を表すかの如く沈黙し屋敷に帰宅するまでそのままだった。
「神子」
「はい…」
私宅に到着して他出からの身支度を整えると購買してきた代物を観覧する事もなく「お茶をお持ちします」と台所へ向かおうとするのですかさず呼び止めた。
返事をしながら振り向く神子を居間の畳で座り込む大谷が手招きをしているので疑問から少し考え込むも素直に従い歩み寄った。
目の前へ座れとも告げられたので正座ながら座り込む。
「衷心はぬしに解すまで説論したい所だがソレは後回しとする」
赤い羽織りの袖口から白く映える包帯に包まれた両腕を組みながら大谷が語り出すので神子は黙って聞き入っている。
しばしお互いの口が閉じられたので沈黙が流れるものの夫の溢された嘆息に破られた。
もう何度も聞いた事があるそれは自分の所為で起こる故に益々心苦しくなる。
しかしそんな心境の
すっと神子の眼前に差し出された物は手の平で収まる程の大きさをした紙袋。
おずおずと目線を上げてそれを捉えた彼女にはどこか見覚えがあった。
「大谷さんコレって…」
「開けてみよ」
詳細が求められる前に夫から開封の催促をされたのでゆっくりと開いてみる。
「あっ…!燕の人形!!」
袋から姿を現したのは藍黒色の背に赤い額と喉、白い腹で特徴的な深い二又の尾した鳥。
神子が野鳥の中で一番に好んでいる燕の人形だった。
「そう言えばあの時に燕があるか聞いてた所だった…声を掛けられて忘れちゃってたんだ」
「ぬしならばやらかしかねんと踏んでおったが推断通りよなァ」
「私の事は大谷さんには全部筒抜けなんですね…」
一体いつあの小店へ足を運んでいたか問えばお互い別行動を始めてからある程度の間や距離を空けて保ちながら妻の後を着いていたらしい。
「尾行してたって事ですか!?」
「人聞きの悪い言い方を申すな」
自分の跡を付けられ行動も見られていた事実に気付き唖然とする神子に眉を顰めて大谷が反論してきた。
真っ直ぐに目当ての店へ向かうなら引きかえして大人しく待つつもりであったが途中で他へ興味を示して動かなかった為、そのまま後ろ姿を横目で眺めながら素通りしたとの事。
偶然立ち寄った小店のブレスレットへ意識が固定されてしまい人も多かったとは言え夫の気配を全く勘付けなかった神子は頭を抱えたくなった。
後は一足先に店へ着くなり例の人形を探し見当たらないので店主に聞けば直ぐ様対応してくれたそうだ。
「そうだったんですか。全く気が付けませんでした」
「ぬしに勘付かれる危惧はなかったが
「流石にそこまでは…でも、心配ですから思わずそうしてしまいそうですね」
自分に気付かれない様、気配を消して行動していた大谷の隠密さに圧倒されかけるがもしも見破っていた場合は動かないで貰う工夫をするだろうと一人納得していれば頬を小突かれた。
「我なりに綿密な訓戒をしたのだが、まさかそれでも自ら首を締めるとは思わなんだ」
「耳が痛いです…」
「……まァ此度は足を運んだ意味もあった」
共に出歩く条件としてお人好しな行動は出来るだけ控えるのだと告げられていた筈なのに相変わらずな繰り返しで一番に求めていただろう物を取り損ねる所だった。
軽はずみな動きばかりをしてしまう自分が情けなくて恥ずかしくて折角上がった気持ちが下がりかけてしまうものの繋げられた夫の言葉で中断される。
「のべつ幕なしに繰り出すのは好まぬがぬしと暇潰しになれば悪くない」
「!本当ですかっ」
顎に指を添えて目を逸らしながらも好意的な発言が返されて妻の表情はパッと変わる。
「でしたらまたの機会がありましたらご一緒にお出掛けしましょう!」
「……気が向いたらの話よ」
「それでもいいんです!大谷さんと出られれば私は嬉しいですから!」
声色が一気に晴れ晴れとして語り出す姿へ視線は戻さず答えても言葉通り歓喜の様相を示していた。
「私の為にわざわざありがとうございます大谷さん。本当に心から嬉しくてとっても幸せです」
己ですらつい意識が外れていた所為で神子に抱き付かれてから漸く現状へ気付いた。
羽織りを纏う背中へ両腕を回してギュッと力も込めてくる神子の抱擁に呆れが生まれるが拒絶する気も考えも浮かばない大谷はされるがままとなっていた。
ーーー『しっかりと伝わっていますよ。貴方様の暖かみも鼓動も。私と一緒です、同じ人です』ーーー
妻の抱擁で感じる腕の加減された力や程良い体温に包まれていれば脳裏で甦る情景や声と言葉。
思わず懐かしさから目を細めると大谷は無言で神子へ包帯で巻かれた腕を回し返す。
誰にも邪魔されない場所の事もあり夫婦二人の抱擁はそう簡単に終わらなかった。
屋敷の明かりが消し去られて暗闇に包まれた一室。
夜半が故に午刻の活気づいた情緒とは逆しまの中で唯一聞こえる規則的な寝息。
普段の外出に比べ動き回った事や心跳な事象を過ごしたのもあり寝伏が為、布団へ身を横にするなり就寝してしまった妻。
同じ様に並列させた布団で就床していた大谷だったが伏せていた瞼を上げ隣へ目だけ向ける。
しばらくそのまま胸を上下させて寝息が繰り返し立てられる様を傍観していたものの音も出さずに起き上がれば妻の元へ近付いた。
決して覚醒させぬが為細心の注意を払い覆い被さる様に向き合い見下ろした。
少しばかり安らかな顔で寝入っている神子の頬を撫でると胸元辺りの服をはだけさせる。
隠されていた前胸部が露わになるも意識はそちらでなく首に浮かぶ赤みがかった点へ注がれていた。
包帯を巻く人差し指の先でふれ数度ばかり撫でてみたがふつふつと湧き上がってくる感情。
不意打ちで受けた妻からの抱擁の際で気付いたが彼女の首には虫が食った痕があったのだ。
どんな虫なのか推測しようも興味が一切湧かずただ神子へ己以外の存在が痕を残した事実が現実が許せなかった。
力加減はしながらも歯を立てて食らい付き型を重ねて上書きする。
加減しながらも刺激が生じたのか僅かに声を漏らして身動ぎするも目は覚まさなかった。
落ち着いた動きや心中で顔を離せば己の歯型で最初にあった点がかき消されていた。
ーーー『印め印め、見るたび我を思い出せ』ーーー
声で形成されなくとも口が勝手に動き己から漏れ出そうになる言葉。
無意識で神子の天突へ手が置かれており力を込めそうになっていたが瞬時に引いて己を制する。
今の現状へソレは必携でないと言い聞かせはだけさせた胸元を元に戻すと大谷は神子の唇へ己のものを重ねてからやっと寝入った。
翌朝、身を起こそうにも動けない神子が自分へ身を寄せて腕も回し拘束したまま目を閉じている大谷の姿に驚愕するしかなかった
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