春つ方
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時刻は約九時半頃。
「あれ、もうこんな時間?大谷さんまだお風呂入ってなかった様な…」
愛読している野鳥図鑑から目を離し、顔を上げて時計を見るともう、夜も深くなっていた。
「いつもは八時半辺りに三成くんが来るんだけどな…何かあったのかしら」
情けない自分に呆れている暇はなく、神子は急いで大谷を風呂に入れる準備をする。
「タオルと、包帯と…あ、風呂後のお薬も持ってこう」
せっせと準備をし、病院で必ず貰う大事な薬(ちなみに塗り薬)を手にして自室で読書にふける大谷を迎えに行く
『ガラッ』
「大谷さん。遅いですけどお風呂の時間になってますよ」
「!」
大谷の自室である障子を開き、神子は中の主に告げる。
部屋の主は神子の方へ背中を向けながら、読書をしていた様で多少、慌てた様子で振り向いた。
「気付くのに遅れて本当にごめんなさい。ついつい図鑑を見ていたせいで…」
「構わぬ。ぬしは寝床の用意でも済ますが良い。我は三成を呼ぶ」
「え?今から三成くんを呼ぶんですか」
思ってもいなかった大谷の言葉に、神子は驚愕した。
そんな神子を放置し、大谷は手元にあった携帯電話で三成を呼ぼうとしている。
「まっ、待って下さい!今、三成くんを呼んだら迷惑じゃありませんか!?今日はもしかしたら何か手が離せない事があったんじゃ…」
普段はのんびりな方である神子が珍しく大声をあげながら、大谷の持つ携帯を鷲掴みにした。
「そんなに私を信用出来ないんですか!?」
「それは有り得ぬ。契りを結んだぬしを、どうしたら信用出来なくなる?」
「でしたら…!何故、私が共に居てはならないのですか!!」
だんだんと声を荒がえ始める神子だがそれはかなりの理由があった
信じられない事だが大谷は今まで風呂に入る際、必ず三成を呼んでいた。
病故に安易に風呂へ入れない大谷の為、三成はどんな時でも屋敷に訪問した。
なのでは神子は現在まで一度も、大谷を風呂に入れる手伝いをした事がなかった。
ここまでくると、大谷が神子に手伝われたくない様に思えてしまう。
「私では…私、じゃ駄目なのですか…」
「………」
肩をがくりと落とし、神子の声はもはや嗚咽が混じっていた。
その中で、大谷はただ黙っているだけだった。
もちろん、神子の言葉を聞かぬふりをしている事は断じてない。
大谷もどこか葛藤している様子で、神子を視界に入れずまいと背を向けていた。
「すまなんだ…神子よ。これもぬしの為…」
「私には、大谷さんの病を直す術は持っていない」
「………」
「大谷さんを完全に支えてあげられる力もない…でも」
やがて意を決した大谷が言葉を発した瞬間、神子が語り出した
「それでも私は…!大谷さんの為、あなたの為に力になりたいのです…!!どんな些細な事でも、あなたが満足されなくても、私はあなたに寄り添っていたい!私はただあなたと…吉、継さんといたいだけ…」
透明な、澄んだ涙を目から流しながら神子は悲痛に話す。
そのまま神子は膝をついて崩れ落ちようとしていた。
それを大谷が抱き止めた。
「ぬしは…ぬしはやはりそう言うのだな…」
「おお、たにさ…ん」
「我が離れ様とすれば、ぬしは嫌と思う程近づいて来る」
「嫌…って。さりげなく、酷いですね」
「聞き流せ。して、我がどんなに避けようとしてもな…」
一度、神子を腕から開放し向き合う大谷。
「ぬしは我の事しか考えぬ。これ程厄介なものはない」
「…やっぱり私を遠ざけたいだけなんですか」
「聞け。我も神子しか考えておらぬ」
「………ぇ」
「我の言葉を信じられぬのか?ぬしの夫である我が」
「い…え、大谷さんの言葉なら…」
「そうであろ?なら信じよ。我はぬしを避けようと思わぬ、手放そうとも思わぬ」
「ならどうして…」
「ぬしにこの面を晒したくないだけよ」
包帯に覆われた己の顔に触れながら。
大谷の病は現段階で疑う余地もない程、良好なのである。
しかし病により病んだ皮膚は直ぐには戻らない。
それを知り神子に更なる疲労を負わせない為。
そして病んだ己の皮膚を神子に見せたくなかったのである
「そう、だったんですか。良かった…私、てっきり大谷さんの力になれなくて、嫌われてたのかと…」
「言ったであろ。ぬしを避けるつもりも、手放すつもりもないと」
「は、い…!」
「ほれ湯浴みの時なのだろう?急く必要はないのか?」
「はい!只今!!」
大谷の催促に神子は先程落ち込んでいたのが嘘の様に明るくなった。
「では行きましょう。でも、本当に支えきれなかったらどうしよう…」
「その時は…ヒッヒ」
「その時は!?」
企みを含む大谷の笑いに、神子は悪寒を感じた
悪寒を感じつつも、神子は大谷を支えながら浴室へ向かう。
「よいしょっと…あ、先に扉を開けときますね」
脱衣室に着くと神子は一旦、大谷を座らせると浴室への扉を先に開いた。
扉が開かれると同時に、湯気が脱衣室に流れ込む。
「お湯だけは温め忘れてなかったんだ。良かった」
少し浴室に入り、湯の確認をすると脱衣室に戻る。
「大谷さんお湯もちょうど良さそうなので、入りますか」
「あいわかった」
神子の言葉を聞いて大谷はスルスルと服を脱ぎ始める。
脱ぐと言っても、包帯で身を包んだ体の上に羽織を着ているだけだが。
「包帯はお湯につかる前に取りましょう。じゃあ滑らない様に気をつけて…」
「ぬしは脱がぬのか」
「はい?」
「着の身着のまま、入るつもりか?」
「私も脱ぐんですか!?」
「左様」
別段、神子は服が濡れてしまっても構わないのだが、大谷は納得出来ない様だ。
「わ…私が脱いでも何も得をしませんよ?」
「我得よ」
「えー…もしかして私が脱いで入らないと…」
「一生入らぬ」
「勘弁してください!!解りました!脱ぎますよ!!」
大谷の恐ろしい発言に神子は軽くやけに服を脱ぎ始めた
「はぁ…まさか夫婦で混浴なんて」
「ぬしが望んだのであろう?今頃やめる気か」
(混浴を望んだってより…)「いえ、ここまで来たら入りますよ…」
溜め息をついても状況は変わらないので神子は服を脱ぎ始めた。
念の為、脱ぐ際は大谷に背を向けて貰ったが。
「これで良いですか?」
「うむ、だがそのタオル は邪魔よな」
「流石にそれは駄目です!」
遠回しにタオルも取れと言われたがそろそろ神子も限界である。
「やれ我とぬしは契りを結んだ仲であろ。何を今頃」
「い、いくら大谷さんでも真正面からだと恥ずかしいんです」
軽く赤面しながら、神子は大谷から目を反らす。
「ヒヒヒッ…」
「なっ何を笑っているんですか!?それとそんなに見ないで下さい!早く入らないと御体が冷えますよ!!」
「まァ、そう急くな。ヒヒッ…」
それなりにゴタゴタがあったが、どうにか浴室へ入る。
ちなみに大谷宅の風呂は、露天風呂が浴室に設置されている様なものである。
洋式の浴槽では大谷へ負担がかかってしまいそうな故に。
こんな贅沢な風呂なのはこの屋敷ごと他の者に建てて貰ったからだ。
大谷が過去に世話になった豊臣秀吉と竹中半兵衛に。
秀吉と半兵衛の元で大谷は三成と出会った訳だがその話は別の機会で話す事にしよう。
湯気がゆらゆらと立ち登り水気が保たれている浴室にようやく入ると夫を支えながら湯船近くまで辿り着いた。
そこで大谷が纏う包帯を可能な限り神子はほどき取り去ると共に湯へと足を踏み入れてゆく。
「ふう…やっぱり風呂は落ち着けますね」
「そうよな」
「あの、大谷さん」
「如何した」
「私の気のせいでしょうか…何だかあなたとの距離が、やけに近いんですが」
「気のせいよ」
浴槽は先程通り、露天風呂の様に広いのだが大谷は神子に密着していると言っても良いぐらい、近かった。
「もう私の気のせいで良いですから、体洗いましょう」
「あいわかった」
本日二度目の神子の溜め息に、大谷は笑うだけであった
「そこに座って下さい。じゃあ洗いますから腕を出して頂けますか」
神子がそう言うと大谷は腕を出した。
湯船に身を沈める前にほどかれ包帯下で隠されていた皮膚を改めて見据えた。
病んだ皮膚を見つめ神子は何も言わず腕に触れる。
皮膚が痛まないよう優しく。
「痛くないですか…?」
「平気よ。むしろこそばゆい」
「すみません、なるべく痛まない様にするのが精一杯で」
丁寧にする余りゆっくりと神子は大谷の体を洗うがそれでも真剣そのものであった。
「はい出来ました。念の為にもう一度お湯につかって、体を暖めて下さい」
「ぬしも洗え」
「はい?体ですか?」
「それ以外、何がある」
「はぁ、洗いますけど。大谷さんがのぼせないか心配なんですが」
「そう安易に我が倒れると思うか」
先に大谷を浴槽にまで導いてから神子はなるべく早く体を洗う。
大谷の視線が少し羞恥心を生み出すが、今はそれで恥ずかしがっている場合ではない。
そそくさと体を洗い終え、またタオルを体に巻くと浴槽に向かう。
「もう終いか?残念、ザンネンよ」
「大谷さんがずっと見てくるせいですよ!…また近いし!!」
名残惜しそうに見える大谷に、神子は完全に顔を赤くしながら叫んだ。
更には再び大谷と密着するはめに。
「…やっぱり三成くんに頼む方が良かったのかな…」
「なに?ぬしから泣きついて来たくせに、まさか今後もやらぬと?」
「う…嘘ですってば」
たたでさえ密着しているのに、大谷はもっと顔を近づけてくる。
ぐったりした様子で、神子はもうどうにでもなれ、と言った感じである。
「…神子よ」
「何ですか…」
「ちと我は昂『自重して貰えますか』ちっ…」
「…舌打ちしないで下さいよ」
何か良い雰囲気がした神子だが、大谷の言葉に幻滅した
,
「あれ、もうこんな時間?大谷さんまだお風呂入ってなかった様な…」
愛読している野鳥図鑑から目を離し、顔を上げて時計を見るともう、夜も深くなっていた。
「いつもは八時半辺りに三成くんが来るんだけどな…何かあったのかしら」
情けない自分に呆れている暇はなく、神子は急いで大谷を風呂に入れる準備をする。
「タオルと、包帯と…あ、風呂後のお薬も持ってこう」
せっせと準備をし、病院で必ず貰う大事な薬(ちなみに塗り薬)を手にして自室で読書にふける大谷を迎えに行く
『ガラッ』
「大谷さん。遅いですけどお風呂の時間になってますよ」
「!」
大谷の自室である障子を開き、神子は中の主に告げる。
部屋の主は神子の方へ背中を向けながら、読書をしていた様で多少、慌てた様子で振り向いた。
「気付くのに遅れて本当にごめんなさい。ついつい図鑑を見ていたせいで…」
「構わぬ。ぬしは寝床の用意でも済ますが良い。我は三成を呼ぶ」
「え?今から三成くんを呼ぶんですか」
思ってもいなかった大谷の言葉に、神子は驚愕した。
そんな神子を放置し、大谷は手元にあった携帯電話で三成を呼ぼうとしている。
「まっ、待って下さい!今、三成くんを呼んだら迷惑じゃありませんか!?今日はもしかしたら何か手が離せない事があったんじゃ…」
普段はのんびりな方である神子が珍しく大声をあげながら、大谷の持つ携帯を鷲掴みにした。
「そんなに私を信用出来ないんですか!?」
「それは有り得ぬ。契りを結んだぬしを、どうしたら信用出来なくなる?」
「でしたら…!何故、私が共に居てはならないのですか!!」
だんだんと声を荒がえ始める神子だがそれはかなりの理由があった
信じられない事だが大谷は今まで風呂に入る際、必ず三成を呼んでいた。
病故に安易に風呂へ入れない大谷の為、三成はどんな時でも屋敷に訪問した。
なのでは神子は現在まで一度も、大谷を風呂に入れる手伝いをした事がなかった。
ここまでくると、大谷が神子に手伝われたくない様に思えてしまう。
「私では…私、じゃ駄目なのですか…」
「………」
肩をがくりと落とし、神子の声はもはや嗚咽が混じっていた。
その中で、大谷はただ黙っているだけだった。
もちろん、神子の言葉を聞かぬふりをしている事は断じてない。
大谷もどこか葛藤している様子で、神子を視界に入れずまいと背を向けていた。
「すまなんだ…神子よ。これもぬしの為…」
「私には、大谷さんの病を直す術は持っていない」
「………」
「大谷さんを完全に支えてあげられる力もない…でも」
やがて意を決した大谷が言葉を発した瞬間、神子が語り出した
「それでも私は…!大谷さんの為、あなたの為に力になりたいのです…!!どんな些細な事でも、あなたが満足されなくても、私はあなたに寄り添っていたい!私はただあなたと…吉、継さんといたいだけ…」
透明な、澄んだ涙を目から流しながら神子は悲痛に話す。
そのまま神子は膝をついて崩れ落ちようとしていた。
それを大谷が抱き止めた。
「ぬしは…ぬしはやはりそう言うのだな…」
「おお、たにさ…ん」
「我が離れ様とすれば、ぬしは嫌と思う程近づいて来る」
「嫌…って。さりげなく、酷いですね」
「聞き流せ。して、我がどんなに避けようとしてもな…」
一度、神子を腕から開放し向き合う大谷。
「ぬしは我の事しか考えぬ。これ程厄介なものはない」
「…やっぱり私を遠ざけたいだけなんですか」
「聞け。我も神子しか考えておらぬ」
「………ぇ」
「我の言葉を信じられぬのか?ぬしの夫である我が」
「い…え、大谷さんの言葉なら…」
「そうであろ?なら信じよ。我はぬしを避けようと思わぬ、手放そうとも思わぬ」
「ならどうして…」
「ぬしにこの面を晒したくないだけよ」
包帯に覆われた己の顔に触れながら。
大谷の病は現段階で疑う余地もない程、良好なのである。
しかし病により病んだ皮膚は直ぐには戻らない。
それを知り神子に更なる疲労を負わせない為。
そして病んだ己の皮膚を神子に見せたくなかったのである
「そう、だったんですか。良かった…私、てっきり大谷さんの力になれなくて、嫌われてたのかと…」
「言ったであろ。ぬしを避けるつもりも、手放すつもりもないと」
「は、い…!」
「ほれ湯浴みの時なのだろう?急く必要はないのか?」
「はい!只今!!」
大谷の催促に神子は先程落ち込んでいたのが嘘の様に明るくなった。
「では行きましょう。でも、本当に支えきれなかったらどうしよう…」
「その時は…ヒッヒ」
「その時は!?」
企みを含む大谷の笑いに、神子は悪寒を感じた
悪寒を感じつつも、神子は大谷を支えながら浴室へ向かう。
「よいしょっと…あ、先に扉を開けときますね」
脱衣室に着くと神子は一旦、大谷を座らせると浴室への扉を先に開いた。
扉が開かれると同時に、湯気が脱衣室に流れ込む。
「お湯だけは温め忘れてなかったんだ。良かった」
少し浴室に入り、湯の確認をすると脱衣室に戻る。
「大谷さんお湯もちょうど良さそうなので、入りますか」
「あいわかった」
神子の言葉を聞いて大谷はスルスルと服を脱ぎ始める。
脱ぐと言っても、包帯で身を包んだ体の上に羽織を着ているだけだが。
「包帯はお湯につかる前に取りましょう。じゃあ滑らない様に気をつけて…」
「ぬしは脱がぬのか」
「はい?」
「着の身着のまま、入るつもりか?」
「私も脱ぐんですか!?」
「左様」
別段、神子は服が濡れてしまっても構わないのだが、大谷は納得出来ない様だ。
「わ…私が脱いでも何も得をしませんよ?」
「我得よ」
「えー…もしかして私が脱いで入らないと…」
「一生入らぬ」
「勘弁してください!!解りました!脱ぎますよ!!」
大谷の恐ろしい発言に神子は軽くやけに服を脱ぎ始めた
「はぁ…まさか夫婦で混浴なんて」
「ぬしが望んだのであろう?今頃やめる気か」
(混浴を望んだってより…)「いえ、ここまで来たら入りますよ…」
溜め息をついても状況は変わらないので神子は服を脱ぎ始めた。
念の為、脱ぐ際は大谷に背を向けて貰ったが。
「これで良いですか?」
「うむ、だがその
「流石にそれは駄目です!」
遠回しにタオルも取れと言われたがそろそろ神子も限界である。
「やれ我とぬしは契りを結んだ仲であろ。何を今頃」
「い、いくら大谷さんでも真正面からだと恥ずかしいんです」
軽く赤面しながら、神子は大谷から目を反らす。
「ヒヒヒッ…」
「なっ何を笑っているんですか!?それとそんなに見ないで下さい!早く入らないと御体が冷えますよ!!」
「まァ、そう急くな。ヒヒッ…」
それなりにゴタゴタがあったが、どうにか浴室へ入る。
ちなみに大谷宅の風呂は、露天風呂が浴室に設置されている様なものである。
洋式の浴槽では大谷へ負担がかかってしまいそうな故に。
こんな贅沢な風呂なのはこの屋敷ごと他の者に建てて貰ったからだ。
大谷が過去に世話になった豊臣秀吉と竹中半兵衛に。
秀吉と半兵衛の元で大谷は三成と出会った訳だがその話は別の機会で話す事にしよう。
湯気がゆらゆらと立ち登り水気が保たれている浴室にようやく入ると夫を支えながら湯船近くまで辿り着いた。
そこで大谷が纏う包帯を可能な限り神子はほどき取り去ると共に湯へと足を踏み入れてゆく。
「ふう…やっぱり風呂は落ち着けますね」
「そうよな」
「あの、大谷さん」
「如何した」
「私の気のせいでしょうか…何だかあなたとの距離が、やけに近いんですが」
「気のせいよ」
浴槽は先程通り、露天風呂の様に広いのだが大谷は神子に密着していると言っても良いぐらい、近かった。
「もう私の気のせいで良いですから、体洗いましょう」
「あいわかった」
本日二度目の神子の溜め息に、大谷は笑うだけであった
「そこに座って下さい。じゃあ洗いますから腕を出して頂けますか」
神子がそう言うと大谷は腕を出した。
湯船に身を沈める前にほどかれ包帯下で隠されていた皮膚を改めて見据えた。
病んだ皮膚を見つめ神子は何も言わず腕に触れる。
皮膚が痛まないよう優しく。
「痛くないですか…?」
「平気よ。むしろこそばゆい」
「すみません、なるべく痛まない様にするのが精一杯で」
丁寧にする余りゆっくりと神子は大谷の体を洗うがそれでも真剣そのものであった。
「はい出来ました。念の為にもう一度お湯につかって、体を暖めて下さい」
「ぬしも洗え」
「はい?体ですか?」
「それ以外、何がある」
「はぁ、洗いますけど。大谷さんがのぼせないか心配なんですが」
「そう安易に我が倒れると思うか」
先に大谷を浴槽にまで導いてから神子はなるべく早く体を洗う。
大谷の視線が少し羞恥心を生み出すが、今はそれで恥ずかしがっている場合ではない。
そそくさと体を洗い終え、またタオルを体に巻くと浴槽に向かう。
「もう終いか?残念、ザンネンよ」
「大谷さんがずっと見てくるせいですよ!…また近いし!!」
名残惜しそうに見える大谷に、神子は完全に顔を赤くしながら叫んだ。
更には再び大谷と密着するはめに。
「…やっぱり三成くんに頼む方が良かったのかな…」
「なに?ぬしから泣きついて来たくせに、まさか今後もやらぬと?」
「う…嘘ですってば」
たたでさえ密着しているのに、大谷はもっと顔を近づけてくる。
ぐったりした様子で、神子はもうどうにでもなれ、と言った感じである。
「…神子よ」
「何ですか…」
「ちと我は昂『自重して貰えますか』ちっ…」
「…舌打ちしないで下さいよ」
何か良い雰囲気がした神子だが、大谷の言葉に幻滅した
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