夏中
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夏の主役とも言える太陽がなりを潜めて雲に隠れているある日。
肩を並べお互いに歩幅を合わせながらある場所へと向かう大谷と神子の二人。
「今日は曇ったお天気ですね」
「己の足で歩むにはちょうどよい」
「そうですね。でも大谷さん、本当にタクシーをお呼びしなくて大丈夫だったんですか?」
「ここまで来て今更か」
杖を突きつつもしっかりと歩みを進める大谷を気遣い歩幅に加え速度にも気をつける神子は外出する刹那まで思考していた案を口に出す。
それは言うまでもなく己の為だと理解しているが過保護とも比喩出来る位にまで発展してしまいそうで呆れの溜め息が溢れてしまいそうだ。
それでも大谷は自らの足で本日の目的地へ向かいたいと言って聞かなかった。
『ガラッ』
「ただいまー」
「あら早かったわね!おかえりなさい神子」
途切れる事なく言葉を交わしながら進めばようやく目指していた場所に到着し神子は和風の引き戸を開き住人へと挨拶をする。
音と声による知らせで訪問を気付いた住人が垂れ下がった袂を揺らしながらも早足で現れた。
「久し振りお母さん」
「いらっしゃい待ってたわよ。吉継さんもおかえりなさい!」
「お邪魔させて頂く」
ニコニコと人の好さそうな笑みを浮かべて娘とその夫の大谷達へ歓迎の意を見せる神子の母親、佐伯ほのか。
笑い返す神子と丁寧に頭を下げる大谷の二人へ「遠慮しないで早くあがってあがって」と促してくるのでそそくさと屋敷内に上がり込む。
真っ先に大谷を座らせ必要な限りの手助けながら甲斐甲斐しく寄り添う娘の神子を見守りながら母親は「お父さんが見たら何て言うかしらね」と楽しげに笑っていた。
「お茶とお菓子を持って来るから先にゆっくりしてて」
「ありがとう。お父さんは?」
「たぶん居間だと思うわよ。二人の事を待ってみたいだから」
履き物を脱いで内玄関から上がるとほのかが台所へ向かいながらそう告げてくるので礼を言いつつ居間に進む。
気になる神子がそう問えば楽しそうに返されたので親子水入らずの会話を邪魔しまいと静観していた大谷を促し移動を始めた。
「……ーーー供養用の物資はこれでいいな。後は線香の量や種類を…ーーー」
日が差さぬ所為かひんやりとした空気漂う廊下を少し歩んで引き戸を動かし室内に入ればブツブツと一人呟きながら片手の紙と睨めっこしている男が一人。
「ただいまお父さん。何してるの?」
「!!おおっ神子か!?良く帰って来たなぁ!!」
「わわっ、ちょっと落ち着いてよお父さん!」
一度ばかり夫婦で顔を見合わせると神子が疑問の声をかけた。
すると声が聞こえた瞬間にガバッと顔を上げ発声主に気がつくと紙へ向けていた強面の表情を一変させ娘に駆け寄るなり抱擁した。
下手をしたら頬擦りまで始めてしまいそうな父親、佐伯霊魔の熱烈な歓迎と言う名の抱擁に流石の神子も若干引き気味である。
「もう子供じゃないんだから…大谷さんも居るのに」
「!ああ…お前もか当たり前か」
「遅ればせながら。お邪魔させて頂いた」
軽く父親の胸元を手で押して少しでも距離を作り目を逸らしながら神子が言うと我に返ったのかハッと意識を戻して名指しされた娘の夫である大谷を見る。
あからさま声色どころか顔つきまで変える霊魔に先程と変わりなく至って普通に頭を下げた。
「神子が来るとならば夫の吉継、くんも来るのは当然だったな」
「我をそう呼ぶ許可を出したのはぬしの父君だけよ」
「……ああ、そうだった。親父だけだったなそう呼んでいいのは」
明らかな溜め息を吐きながらそう話す義理の父親へ大谷は僅かに声の音を下げて返した。
それに気付いている霊魔は頭に手を添えやれやれと目を伏せながら「悪かったな」と本人なりの謝罪をする。
「お父さんたら…一緒に来る度に大谷さんへむくれるのやめて欲しいのに」
「いやだな神子、お父さんはお前が心配で、」
「あなたはいつも吉継さんが来る日はそうなるでしょう。少しでも改善させる気はないんですか」
完全に父親から離れて大谷の傍ら処か背後へまで回りふくれる神子。
娘に拒絶された霊魔はギョッと強面の顔を崩して急ぎ弁解するもお茶とお菓子を持ってきた妻にでさえ咎められてしまった。
「いつもいつも夫がごめんなさいね、後で私がこっぴどく叱っておくから」
「慣れた上、暗の相手をするようで小気味良い故構わぬ」
(暗って確か黒田さんの事だったような…)
妻子から揃って駄目出しを受けた霊魔は見るからに落ち込み魂が抜けてしまったかのように意気消沈としていた。
そんな夫を放置して謝罪しながらほのかが用意してきたお茶とお菓子を机に置き大谷と神子の前へ差し出す。
父親と比べ和気藹々としたやり取りをする大谷と母親の会話を聞いていた神子はとある人物を思い浮かべる。
「体の調子はどうかしら?」
「近頃は頗 る良好よ」
「良かった! 神子が最近は吉継さんが元気で凄く嬉しいって教えてくれてたの」
用意された和菓子は魚の形をした物(求肥を鮎の形付いたカステラで包んだ若鮎)と三角の形をした物(ういろうを氷に見立てその上に穢れや罪払いの意味を持つ赤色の小豆が乗せられた無病息災を願う水無月)でどちらも食欲をそそる。
神子が若鮎を頭からもくもくと食べ大谷は黒文字を使い水無月を切り分け器用に口へ運んでいた。
それぞれ菓子を楽しむ二人を和みながら見つめていたほのかが湯呑みのお茶を一口啜ってから尋ねてくる。
しっかりと口内で咀嚼し飲み下してから大谷が答えればより一層ニコニコと笑みを深めて喜ぶ義理の母親の言葉でチラッと傍らの神子を横目で見た。
当の妻と言うとお茶を飲んでからもう一匹の若鮎を食べ始めて夢中な様で隣からの視線にも気付いていなかった。
「あなたもそろそろ機嫌を直して、二人に渡す物があるのではありませんか」
「………はっ! 神子は!? 神子はどこだ!?」
「私の事だけじゃなくて大谷さんも認識して」
「相も変わらずよなァ」
まだ意気が落ちている夫を見兼ねほのかが、背中をぱしぱし叩き覚醒させ促す。
刺激を受け再度意識を戻すなり自分を呼ぶ父親へ神子は溜め息混じりの言葉を溢し慣れている大谷は湯呑みを傾けて茶を味わう。
「全国中をアレコレ調べてようやく見つけた結果だ。最後の一粒 まで使い切れよ」
やっといつもの勢いを戻した霊魔は纏う黒い袈裟の袖から一つの巾着袋を取り出し大谷の方へと突き付ける。
「お父さんこれって?」
「親父から教えられてたり、残されてた情報を元に取り寄せた材料を調合して拵えた薬湯だ。風呂へ入る時にでも使うといい」
包帯に包まれた手でそれを受け取ると神子が疑問そうに聞き父親は柔らかくさせた顔で説明を始めた。
霊魔の父親、神子から見て祖父に当たる人物の時から利用していた薬湯の粉が詰められた物で心当たりのあるらしい大谷は素直に礼を言ってそれを懐にしまう。
興味がありげに見つめていた神子は視線に気付いていた大谷が顔を向けてきたのでしっかりと目を合わせてしまい慌てて真正面を向く。
「如何した神子よ、コレが気になるのか?」
「な、何でもないです!気にしないで下さいっ」
「そうは見えぬがな。まァどちらにせよぬしで試してみる価値もありそうだ」
「大谷さんの大事な薬になるんですから私なんかで無駄遣いしないで下さいよ!!」
コレと口にして己の懐をぽんぽんと叩き意地悪げで楽しげで笑いながら問い詰められ必死な形相で取り繕うも軽くに流してはならない発言をする為、神子は羞恥心が有りつつも大谷へ抗議する。
ヒヒッと控えめながら笑い声を上げ娘をからかう義息に思わず霊魔が鬼の顔で立ちあがろうとしたがほのかに静止されていた(耳を引っ張って)
「じゃあ今日のお風呂はそのお薬を入れましょうかね〜」
「えっいいのお母さん」
「全然大丈夫よ。だって今夜は泊まってくれるんだから」
「はっ?泊まる?神子は無論いいが聞いてないぞ」
「言いましたよ。神子が吉継さんと帰って来るから二人して泊まるって」
夫を沈めた母親は行動から想像出来ないほのぼのとした笑顔で大谷と神子を見守っていたが突如思いついたと言い提案を出す。
親子故に似た表情で聞き返されたがそれぞれ違う反応と回答で返した。
納得がいかない霊魔が唖然とした顔で呟くもバッサリとほのかが言い切る。
「お父さんと夕ご飯の準備は私がなんとかするから二人共、ゆっくり好きにしててちょうだい」
「夕ご飯なら私も手伝うよ」
「ありがとう、でも今日はうちに帰って来たんだからたまには肩の力を抜きなさい。吉継さんと一緒に居てあげて」
自信ありげでやる気充分に語る母親へ神子が進んで手伝いを申し出るもほのかは首を振りやんわりと断る。
隣の夫と同じ様に少しばかりふてくされ気味の娘へ微笑みながら「お線香をあげてらっしゃい」と告げられ先に動き出した大谷に小突かれてようやく神子は座布団から立ち上がった。
「痛いです!小突かないで下さい大谷さん!」
「ぬしが石の如く固まってるのが悪いのよ」
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肩を並べお互いに歩幅を合わせながらある場所へと向かう大谷と神子の二人。
「今日は曇ったお天気ですね」
「己の足で歩むにはちょうどよい」
「そうですね。でも大谷さん、本当にタクシーをお呼びしなくて大丈夫だったんですか?」
「ここまで来て今更か」
杖を突きつつもしっかりと歩みを進める大谷を気遣い歩幅に加え速度にも気をつける神子は外出する刹那まで思考していた案を口に出す。
それは言うまでもなく己の為だと理解しているが過保護とも比喩出来る位にまで発展してしまいそうで呆れの溜め息が溢れてしまいそうだ。
それでも大谷は自らの足で本日の目的地へ向かいたいと言って聞かなかった。
『ガラッ』
「ただいまー」
「あら早かったわね!おかえりなさい神子」
途切れる事なく言葉を交わしながら進めばようやく目指していた場所に到着し神子は和風の引き戸を開き住人へと挨拶をする。
音と声による知らせで訪問を気付いた住人が垂れ下がった袂を揺らしながらも早足で現れた。
「久し振りお母さん」
「いらっしゃい待ってたわよ。吉継さんもおかえりなさい!」
「お邪魔させて頂く」
ニコニコと人の好さそうな笑みを浮かべて娘とその夫の大谷達へ歓迎の意を見せる神子の母親、佐伯ほのか。
笑い返す神子と丁寧に頭を下げる大谷の二人へ「遠慮しないで早くあがってあがって」と促してくるのでそそくさと屋敷内に上がり込む。
真っ先に大谷を座らせ必要な限りの手助けながら甲斐甲斐しく寄り添う娘の神子を見守りながら母親は「お父さんが見たら何て言うかしらね」と楽しげに笑っていた。
「お茶とお菓子を持って来るから先にゆっくりしてて」
「ありがとう。お父さんは?」
「たぶん居間だと思うわよ。二人の事を待ってみたいだから」
履き物を脱いで内玄関から上がるとほのかが台所へ向かいながらそう告げてくるので礼を言いつつ居間に進む。
気になる神子がそう問えば楽しそうに返されたので親子水入らずの会話を邪魔しまいと静観していた大谷を促し移動を始めた。
「……ーーー供養用の物資はこれでいいな。後は線香の量や種類を…ーーー」
日が差さぬ所為かひんやりとした空気漂う廊下を少し歩んで引き戸を動かし室内に入ればブツブツと一人呟きながら片手の紙と睨めっこしている男が一人。
「ただいまお父さん。何してるの?」
「!!おおっ神子か!?良く帰って来たなぁ!!」
「わわっ、ちょっと落ち着いてよお父さん!」
一度ばかり夫婦で顔を見合わせると神子が疑問の声をかけた。
すると声が聞こえた瞬間にガバッと顔を上げ発声主に気がつくと紙へ向けていた強面の表情を一変させ娘に駆け寄るなり抱擁した。
下手をしたら頬擦りまで始めてしまいそうな父親、佐伯霊魔の熱烈な歓迎と言う名の抱擁に流石の神子も若干引き気味である。
「もう子供じゃないんだから…大谷さんも居るのに」
「!ああ…お前もか当たり前か」
「遅ればせながら。お邪魔させて頂いた」
軽く父親の胸元を手で押して少しでも距離を作り目を逸らしながら神子が言うと我に返ったのかハッと意識を戻して名指しされた娘の夫である大谷を見る。
あからさま声色どころか顔つきまで変える霊魔に先程と変わりなく至って普通に頭を下げた。
「神子が来るとならば夫の吉継、くんも来るのは当然だったな」
「我をそう呼ぶ許可を出したのはぬしの父君だけよ」
「……ああ、そうだった。親父だけだったなそう呼んでいいのは」
明らかな溜め息を吐きながらそう話す義理の父親へ大谷は僅かに声の音を下げて返した。
それに気付いている霊魔は頭に手を添えやれやれと目を伏せながら「悪かったな」と本人なりの謝罪をする。
「お父さんたら…一緒に来る度に大谷さんへむくれるのやめて欲しいのに」
「いやだな神子、お父さんはお前が心配で、」
「あなたはいつも吉継さんが来る日はそうなるでしょう。少しでも改善させる気はないんですか」
完全に父親から離れて大谷の傍ら処か背後へまで回りふくれる神子。
娘に拒絶された霊魔はギョッと強面の顔を崩して急ぎ弁解するもお茶とお菓子を持ってきた妻にでさえ咎められてしまった。
「いつもいつも夫がごめんなさいね、後で私がこっぴどく叱っておくから」
「慣れた上、暗の相手をするようで小気味良い故構わぬ」
(暗って確か黒田さんの事だったような…)
妻子から揃って駄目出しを受けた霊魔は見るからに落ち込み魂が抜けてしまったかのように意気消沈としていた。
そんな夫を放置して謝罪しながらほのかが用意してきたお茶とお菓子を机に置き大谷と神子の前へ差し出す。
父親と比べ和気藹々としたやり取りをする大谷と母親の会話を聞いていた神子はとある人物を思い浮かべる。
「体の調子はどうかしら?」
「近頃は
「良かった! 神子が最近は吉継さんが元気で凄く嬉しいって教えてくれてたの」
用意された和菓子は魚の形をした物(求肥を鮎の形付いたカステラで包んだ若鮎)と三角の形をした物(ういろうを氷に見立てその上に穢れや罪払いの意味を持つ赤色の小豆が乗せられた無病息災を願う水無月)でどちらも食欲をそそる。
神子が若鮎を頭からもくもくと食べ大谷は黒文字を使い水無月を切り分け器用に口へ運んでいた。
それぞれ菓子を楽しむ二人を和みながら見つめていたほのかが湯呑みのお茶を一口啜ってから尋ねてくる。
しっかりと口内で咀嚼し飲み下してから大谷が答えればより一層ニコニコと笑みを深めて喜ぶ義理の母親の言葉でチラッと傍らの神子を横目で見た。
当の妻と言うとお茶を飲んでからもう一匹の若鮎を食べ始めて夢中な様で隣からの視線にも気付いていなかった。
「あなたもそろそろ機嫌を直して、二人に渡す物があるのではありませんか」
「………はっ! 神子は!? 神子はどこだ!?」
「私の事だけじゃなくて大谷さんも認識して」
「相も変わらずよなァ」
まだ意気が落ちている夫を見兼ねほのかが、背中をぱしぱし叩き覚醒させ促す。
刺激を受け再度意識を戻すなり自分を呼ぶ父親へ神子は溜め息混じりの言葉を溢し慣れている大谷は湯呑みを傾けて茶を味わう。
「全国中をアレコレ調べてようやく見つけた結果だ。最後の
やっといつもの勢いを戻した霊魔は纏う黒い袈裟の袖から一つの巾着袋を取り出し大谷の方へと突き付ける。
「お父さんこれって?」
「親父から教えられてたり、残されてた情報を元に取り寄せた材料を調合して拵えた薬湯だ。風呂へ入る時にでも使うといい」
包帯に包まれた手でそれを受け取ると神子が疑問そうに聞き父親は柔らかくさせた顔で説明を始めた。
霊魔の父親、神子から見て祖父に当たる人物の時から利用していた薬湯の粉が詰められた物で心当たりのあるらしい大谷は素直に礼を言ってそれを懐にしまう。
興味がありげに見つめていた神子は視線に気付いていた大谷が顔を向けてきたのでしっかりと目を合わせてしまい慌てて真正面を向く。
「如何した神子よ、コレが気になるのか?」
「な、何でもないです!気にしないで下さいっ」
「そうは見えぬがな。まァどちらにせよぬしで試してみる価値もありそうだ」
「大谷さんの大事な薬になるんですから私なんかで無駄遣いしないで下さいよ!!」
コレと口にして己の懐をぽんぽんと叩き意地悪げで楽しげで笑いながら問い詰められ必死な形相で取り繕うも軽くに流してはならない発言をする為、神子は羞恥心が有りつつも大谷へ抗議する。
ヒヒッと控えめながら笑い声を上げ娘をからかう義息に思わず霊魔が鬼の顔で立ちあがろうとしたがほのかに静止されていた(耳を引っ張って)
「じゃあ今日のお風呂はそのお薬を入れましょうかね〜」
「えっいいのお母さん」
「全然大丈夫よ。だって今夜は泊まってくれるんだから」
「はっ?泊まる?神子は無論いいが聞いてないぞ」
「言いましたよ。神子が吉継さんと帰って来るから二人して泊まるって」
夫を沈めた母親は行動から想像出来ないほのぼのとした笑顔で大谷と神子を見守っていたが突如思いついたと言い提案を出す。
親子故に似た表情で聞き返されたがそれぞれ違う反応と回答で返した。
納得がいかない霊魔が唖然とした顔で呟くもバッサリとほのかが言い切る。
「お父さんと夕ご飯の準備は私がなんとかするから二人共、ゆっくり好きにしててちょうだい」
「夕ご飯なら私も手伝うよ」
「ありがとう、でも今日はうちに帰って来たんだからたまには肩の力を抜きなさい。吉継さんと一緒に居てあげて」
自信ありげでやる気充分に語る母親へ神子が進んで手伝いを申し出るもほのかは首を振りやんわりと断る。
隣の夫と同じ様に少しばかりふてくされ気味の娘へ微笑みながら「お線香をあげてらっしゃい」と告げられ先に動き出した大谷に小突かれてようやく神子は座布団から立ち上がった。
「痛いです!小突かないで下さい大谷さん!」
「ぬしが石の如く固まってるのが悪いのよ」
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