夏座敷
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「よいしょっと」
『ガタンッ』
夏の暑さがどんどん増してゆくある日。
神子は屋敷中の襖と障子をとり払って、それら全てを簾に変えた。
こうして通気性を良くし、より一層涼めやすい様に図るのだ。
『バサッ』
襖を完璧に外して室内の畳部屋を置くと代わりの簾を設置した。
「これでよしっと。ふぅ~…疲れた」
朝から襖から簾に取り替える作業に精を出してはや一時間半。
時計の針は十一の数字を指していた。
「もう十一過ぎ…お昼作った方が良いかな」
「そう急くな神子よ」
「あ、大谷さん」
一息ついて呟きを溢すとそれに現れた大谷が反応を返す。
「まだお腹は空いていないんですか?」
「左様。まだ腹は減らぬ」
少し驚愕気味に言う神子に大谷は抱えている桶を縁側の下、庭に置いた。
中身はなんだろうと大谷の横に座った神子は桶を覗く。
すると上から覗いた瞬間に太陽の光が反射し、思わず目が眩んでしまった。
「水ですか?中に入っているのは」
「いかにも。不意に触れば気も引き締まるであろうな」
大谷が答えながら頷くと唐突に神子の腕を掴んで桶内の水へと突っ込んだ
「ひやぁぁ!?」
言葉通り不意討ちで冷水に手首までを突っ込まれた神子は可笑しな声を上げた。
「引き締まる所か気が抜けるな」
「誰のせいですか!!」
「そう怒るな、ぬしも涼めて嬉しかろ」
「嬉しくありません…!」
暑さを消して涼めてくれる水が、今の神子にとっては怒りの原因にしかならない。
不意討ちで大谷によって桶へ手を突っ込む羽目になったからである。
想像と一致した神子の反応を見て大谷は愉快に笑い声を上げた。
「ヒッヒッヒッ…」
「もう!大谷さんは!こうなったら」
弄ばれている事に納得出来ない神子は何か思い付いた。
「大谷さん、手を出して下さい。両方」
「はて、不意にどうした神子よ」
「良いから出して下さい。汗で包帯が駄目になっているかも知れないでしょう?代えます」
「あからさま過ぎて察するのも難ではないぞ」
「………」
大谷の手を包む包帯を取って桶に突っ込んでやろうと思っていた神子だが、もろバレだった様だ。
もう機嫌を完全に損ねた神子は大谷から顔を背けてしまった。
「そう拗ねるな」
「……大谷さんの事なんて知りません」
「ほう?我の事はもう知らぬと?」
己を見ない神子の頭にぽんっと手を置きながら大谷は問い掛けた
「我の身を四六時中監視するぬしが言える言葉か」
「監視なんてしていません!私は大谷さんが心配で…」
「そうか、ソウカ。然程に我が心配か」
「………!」
やられた。
大谷の口車に乗せられて本音が出てしまった。
「我は神子を捨てようと思わぬ。ぬしもそうであろ?」
「そうです…」
大谷は飄々と話しているが対する神子はどこか照れて俯いていた。
「…して、ぬしは涼しみたいであろう?」
「それは、まぁそうです。この屋敷全部の襖を外してもうくたくたですし、暑いです」
「そうよな。故に我は褒美にとコレを拵えた」
中庭の地面に置かれた桶を指差しながら大谷は神子に説明する。
「え?褒美…?しかも大谷さんが…」
「毎度茹だる程の熱気の中御苦労と思った故」
屋敷の中で少しでも涼みやすくする為、暑さにも負けず体を動かした神子を大谷は労ってやりたかったのであろう。
そう気付いた神子は先程の様に顔が暑くなる気がした。
「ほれ涼みたいのであらば足でも突っ込めば良かろ」
「そうしますけど…勝手に足を掴んで桶に入れないで下さいね」
「………」
(図星ですか)
言葉に甘えて涼しもうとしたが何となく、隣の大谷が企んでいないか頭に突っかかって仕方がない。
念の為に確認してみたら沈黙が返ってきた。
口には出さないが神子はそう頭で呟き、氷で冷えた水に両足を入れた。
「でも涼しくて気持ち良いかも。ありがとうございます大谷さん」
「ぬしが良ければそれで良い」
笑って感謝をすれば大谷は少し照れくさそうに顔を背けた
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『ガタンッ』
夏の暑さがどんどん増してゆくある日。
神子は屋敷中の襖と障子をとり払って、それら全てを簾に変えた。
こうして通気性を良くし、より一層涼めやすい様に図るのだ。
『バサッ』
襖を完璧に外して室内の畳部屋を置くと代わりの簾を設置した。
「これでよしっと。ふぅ~…疲れた」
朝から襖から簾に取り替える作業に精を出してはや一時間半。
時計の針は十一の数字を指していた。
「もう十一過ぎ…お昼作った方が良いかな」
「そう急くな神子よ」
「あ、大谷さん」
一息ついて呟きを溢すとそれに現れた大谷が反応を返す。
「まだお腹は空いていないんですか?」
「左様。まだ腹は減らぬ」
少し驚愕気味に言う神子に大谷は抱えている桶を縁側の下、庭に置いた。
中身はなんだろうと大谷の横に座った神子は桶を覗く。
すると上から覗いた瞬間に太陽の光が反射し、思わず目が眩んでしまった。
「水ですか?中に入っているのは」
「いかにも。不意に触れば気も引き締まるであろうな」
大谷が答えながら頷くと唐突に神子の腕を掴んで桶内の水へと突っ込んだ
「ひやぁぁ!?」
言葉通り不意討ちで冷水に手首までを突っ込まれた神子は可笑しな声を上げた。
「引き締まる所か気が抜けるな」
「誰のせいですか!!」
「そう怒るな、ぬしも涼めて嬉しかろ」
「嬉しくありません…!」
暑さを消して涼めてくれる水が、今の神子にとっては怒りの原因にしかならない。
不意討ちで大谷によって桶へ手を突っ込む羽目になったからである。
想像と一致した神子の反応を見て大谷は愉快に笑い声を上げた。
「ヒッヒッヒッ…」
「もう!大谷さんは!こうなったら」
弄ばれている事に納得出来ない神子は何か思い付いた。
「大谷さん、手を出して下さい。両方」
「はて、不意にどうした神子よ」
「良いから出して下さい。汗で包帯が駄目になっているかも知れないでしょう?代えます」
「あからさま過ぎて察するのも難ではないぞ」
「………」
大谷の手を包む包帯を取って桶に突っ込んでやろうと思っていた神子だが、もろバレだった様だ。
もう機嫌を完全に損ねた神子は大谷から顔を背けてしまった。
「そう拗ねるな」
「……大谷さんの事なんて知りません」
「ほう?我の事はもう知らぬと?」
己を見ない神子の頭にぽんっと手を置きながら大谷は問い掛けた
「我の身を四六時中監視するぬしが言える言葉か」
「監視なんてしていません!私は大谷さんが心配で…」
「そうか、ソウカ。然程に我が心配か」
「………!」
やられた。
大谷の口車に乗せられて本音が出てしまった。
「我は神子を捨てようと思わぬ。ぬしもそうであろ?」
「そうです…」
大谷は飄々と話しているが対する神子はどこか照れて俯いていた。
「…して、ぬしは涼しみたいであろう?」
「それは、まぁそうです。この屋敷全部の襖を外してもうくたくたですし、暑いです」
「そうよな。故に我は褒美にとコレを拵えた」
中庭の地面に置かれた桶を指差しながら大谷は神子に説明する。
「え?褒美…?しかも大谷さんが…」
「毎度茹だる程の熱気の中御苦労と思った故」
屋敷の中で少しでも涼みやすくする為、暑さにも負けず体を動かした神子を大谷は労ってやりたかったのであろう。
そう気付いた神子は先程の様に顔が暑くなる気がした。
「ほれ涼みたいのであらば足でも突っ込めば良かろ」
「そうしますけど…勝手に足を掴んで桶に入れないで下さいね」
「………」
(図星ですか)
言葉に甘えて涼しもうとしたが何となく、隣の大谷が企んでいないか頭に突っかかって仕方がない。
念の為に確認してみたら沈黙が返ってきた。
口には出さないが神子はそう頭で呟き、氷で冷えた水に両足を入れた。
「でも涼しくて気持ち良いかも。ありがとうございます大谷さん」
「ぬしが良ければそれで良い」
笑って感謝をすれば大谷は少し照れくさそうに顔を背けた
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