春嵐
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新春を迎えた大谷宅の屋敷は、雨と共に吹き荒れる風に襲われていた。
雨は小雨の為に大した事ないものの、風がやけに強く雨戸を喧しく震わしていた。
『ガタガタガタッ』
「!」
再び雨戸が震え、その音に神子は覚醒した。
ガバッと飛び起きずに、目を見開いて。
これは何も神子が驚いて目覚めた訳ではない。
雨戸の音で目覚めたのは確かだが、目を見開いて覚醒するのは隣に眠る大谷を起こさない為。
布団を敷いて、蟻一匹も通れない程にぴったりと、並んでいるが故に大谷と神子の距離が近いのである。
いつもは神子が先に起床し、大谷を起こしているのだが昨夜は年を越す為に長く起きていたので、流石の神子も長く眠ってしまった
「朝…」
蛇の如く首をもたげて、雨戸の方向をみる。
風が強い事は雨戸の振動で良く分かり、さらに天気が余りよろしくない事も理解した。
曇りがちな天候だが、僅に外から中へ光が入る。
それを確認した神子は再び枕に頭を預ける。
何となく、すぐには起きる気分にならなかった。
目を閉じたが、ほんの一瞬だけで刹那に目蓋を上げる。
体を布団に横たえて、そのまま目を少しでも閉じれば、また深い眠りに落ちそうが故、神子は起床しようと目を動かした。
目線は無意識に真隣の大谷へ釘付けとなる。
普段仰向けで寝ようが、うつ伏せで寝ようが、どの向きで就寝しているが過敏に気にかけたりはしない。
しかし、そんな些細な事でも神子は少し嬉しかった。
大谷は横を向き神子の方向を見る様に眠っていた。
神子も目覚めた時は横…つまり大谷の方を、向いていた。
互いの存在を確認し合う様に、向き合ったまま。
「………」
(あ、起きそう)
数秒程、神子が大谷を見つめていると、モゾモゾと動き始めた。
そして。
「……何を見ておる」
「大谷さん」
神子にとっては答えらしい答えなのか、あっけらかんと言ってのける。
いつもならば、それに小言を放つ大谷だが今日は違った。
身を起こそうと前へ向き直ると、予測していたかの様に神子が起き上がり、大谷の肩に手を回して助け起こす。
「大谷さん」
「如何した神子よ」
「おはようございます」
何か用事でもあるのかと、耳を傾けた大谷だが神子はただ、挨拶をしただけ。
それでも、大谷は不快そうにせず一言、うむと頷いて返すのだった
今さら言うのも何だが、大谷宅の屋敷は完全に、純和風な建物であった。
元々、大谷が西洋式のものに関して興味がないこともあり、神子も和風が好みなのだ。
故にこの屋敷にはベッドなど、テーブルなどはない。
前述通りの布団や上等な畳部屋の座敷と座布団、そして漆塗りの机があるぐらい。
「大谷さん、味噌汁の具は何が良いですか」
「豆腐」
「ワカメは入れちゃ駄目ですか」
「好きにしやれ」
朝のまどろんだ雰囲気は消え、神子は台所にて朝食を作り、大谷はその台所を眺められる座敷にてテレビから流れる報道を聞きながら、新聞を読んでいた。
純和風の屋敷で西洋式のものは何もないと言ったが、流石にテレビはあった。
大谷曰く、とりあえず情報は直ぐに分かる様にしていたいから…だそうだ。
神子もテレビを置くのは反対ではなかった。
むしろ、野鳥などの鳥番組を視れるならば、大賛成だった。
「出来ましたよ、大谷さん」
出来立て朝食(白米と味噌汁、鮭)を台所から、大谷のいる座敷へと運ぶ。
それらを全て、机の上に麗に並べて置いてゆく。
この屋敷が純和風を好んでいる理由は、西洋式のものに興味がないだけではない。
病の自宅療養中の大谷が移動を容易く出来る為に、きちんと計算されて建てられたからだ。
余り歩行がままならない大谷の為、いつでも座り安い様にと座敷に座布団をひいたり、いちいち立って座る必要のない座敷で食事をとれる様に。
「今日は縁側で寛げませんね…」
「屋敷に籠るのも良かろう」
「籠るって…まぁ、たまにはレポートでも書くのがいいかな…」
「三日坊主にならぬと良いがな」
「なりません!!」
食事をしながら、今日の予定を立てる神子に助言(?)をする大谷。
二人が外の変化に気付くのに、後どれくらいかかるのか…
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雨は小雨の為に大した事ないものの、風がやけに強く雨戸を喧しく震わしていた。
『ガタガタガタッ』
「!」
再び雨戸が震え、その音に神子は覚醒した。
ガバッと飛び起きずに、目を見開いて。
これは何も神子が驚いて目覚めた訳ではない。
雨戸の音で目覚めたのは確かだが、目を見開いて覚醒するのは隣に眠る大谷を起こさない為。
布団を敷いて、蟻一匹も通れない程にぴったりと、並んでいるが故に大谷と神子の距離が近いのである。
いつもは神子が先に起床し、大谷を起こしているのだが昨夜は年を越す為に長く起きていたので、流石の神子も長く眠ってしまった
「朝…」
蛇の如く首をもたげて、雨戸の方向をみる。
風が強い事は雨戸の振動で良く分かり、さらに天気が余りよろしくない事も理解した。
曇りがちな天候だが、僅に外から中へ光が入る。
それを確認した神子は再び枕に頭を預ける。
何となく、すぐには起きる気分にならなかった。
目を閉じたが、ほんの一瞬だけで刹那に目蓋を上げる。
体を布団に横たえて、そのまま目を少しでも閉じれば、また深い眠りに落ちそうが故、神子は起床しようと目を動かした。
目線は無意識に真隣の大谷へ釘付けとなる。
普段仰向けで寝ようが、うつ伏せで寝ようが、どの向きで就寝しているが過敏に気にかけたりはしない。
しかし、そんな些細な事でも神子は少し嬉しかった。
大谷は横を向き神子の方向を見る様に眠っていた。
神子も目覚めた時は横…つまり大谷の方を、向いていた。
互いの存在を確認し合う様に、向き合ったまま。
「………」
(あ、起きそう)
数秒程、神子が大谷を見つめていると、モゾモゾと動き始めた。
そして。
「……何を見ておる」
「大谷さん」
神子にとっては答えらしい答えなのか、あっけらかんと言ってのける。
いつもならば、それに小言を放つ大谷だが今日は違った。
身を起こそうと前へ向き直ると、予測していたかの様に神子が起き上がり、大谷の肩に手を回して助け起こす。
「大谷さん」
「如何した神子よ」
「おはようございます」
何か用事でもあるのかと、耳を傾けた大谷だが神子はただ、挨拶をしただけ。
それでも、大谷は不快そうにせず一言、うむと頷いて返すのだった
今さら言うのも何だが、大谷宅の屋敷は完全に、純和風な建物であった。
元々、大谷が西洋式のものに関して興味がないこともあり、神子も和風が好みなのだ。
故にこの屋敷にはベッドなど、テーブルなどはない。
前述通りの布団や上等な畳部屋の座敷と座布団、そして漆塗りの机があるぐらい。
「大谷さん、味噌汁の具は何が良いですか」
「豆腐」
「ワカメは入れちゃ駄目ですか」
「好きにしやれ」
朝のまどろんだ雰囲気は消え、神子は台所にて朝食を作り、大谷はその台所を眺められる座敷にてテレビから流れる報道を聞きながら、新聞を読んでいた。
純和風の屋敷で西洋式のものは何もないと言ったが、流石にテレビはあった。
大谷曰く、とりあえず情報は直ぐに分かる様にしていたいから…だそうだ。
神子もテレビを置くのは反対ではなかった。
むしろ、野鳥などの鳥番組を視れるならば、大賛成だった。
「出来ましたよ、大谷さん」
出来立て朝食(白米と味噌汁、鮭)を台所から、大谷のいる座敷へと運ぶ。
それらを全て、机の上に麗に並べて置いてゆく。
この屋敷が純和風を好んでいる理由は、西洋式のものに興味がないだけではない。
病の自宅療養中の大谷が移動を容易く出来る為に、きちんと計算されて建てられたからだ。
余り歩行がままならない大谷の為、いつでも座り安い様にと座敷に座布団をひいたり、いちいち立って座る必要のない座敷で食事をとれる様に。
「今日は縁側で寛げませんね…」
「屋敷に籠るのも良かろう」
「籠るって…まぁ、たまにはレポートでも書くのがいいかな…」
「三日坊主にならぬと良いがな」
「なりません!!」
食事をしながら、今日の予定を立てる神子に助言(?)をする大谷。
二人が外の変化に気付くのに、後どれくらいかかるのか…
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